記事提供:サイゾーウーマン

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『さよなら、カルト村。思春期から村を出るまで』(文藝春秋)

先日、女優の清水富美加が突然芸能界を引退。その理由が宗教団体・幸福の科学に出家をするということで、世間を騒がせた。

コミックエッセイ『カルト村で生まれました。』『さよなら、カルト村。思春期から村を出るまで』(文藝春秋)の著者・高田かやさんは、「所有のない社会」を目指す「カルト村」で生まれ、19歳のとき自分の意志で村を出るまで、両親と離され、労働、空腹、体罰が当たり前の暮らしを送った体験を淡々と描いている。

今回の騒動から改めて見えてきた、現代における宗教や信仰、社会の偏見について高田さんに伺った。

■カルト村にいることに、疑問を持ったことはなかった

――清水富美加の出家騒動が大きく報道されましたが、高田さんは今回の騒動について、どう思われますか?

高田かやさん(以下、高田) 清水さんは知り合いでもなんでもないので、特に何も思いません。夫の“ふさおさん”が、テレビに出ている人に対して、まるで知り合いのように語ることがよくありますが、「知らない人のことなのに、よくそんなに盛り上がれるな」と、むしろ感心します(笑)。

――高田さんは生まれたときからカルトが生活の一部だったと思いますが、小さい頃に「自分は、なぜカルト村で生活をしているのだろう?」と疑問に思ったことはありませんでしたか?

高田 なぜ自分が両親の子どもなのかを考えたことがなかったように、親がいる場所が自分のいる場所だと思っていたので、疑問に思ったことはありませんでしたね。

――親がいる場所が自分のいる場所…言われてみればそうですよね。村の外部の人が「村の子」と呼ぶ存在であることで、小学校や中学校の頃に、いじめの対象になった経験はありますか?

高田 どの時代にも私を毛嫌いする子はいましたし、「村の子」だとわかった上で、何も問題なく仲良くしている子もいました。

ただ、私を嫌っている子が、私が「村の子」だから嫌っているのか、それとも村は関係なく、個人的に嫌いだったのかは、私にはわかりません。

――「村の子」たちは朝ご飯を食べられなかったり、ほとんどの部活動が禁止されていたり、何かと「一般の子」と違う部分があったようですね。

高田 私の通った学校では、大部分の学校の子たちには「なんとなく少し変わった暮らしをしているところの子どもたち」くらいに受け取られている雰囲気で、別段特別視はされていなかったように思います。

■マインドコントロールは行われていた

――勝手なイメージで大変申し訳ないのですが、カルトにハマっている人たちは周りの意見を聞かず、自分が良いと信じているものに突進していっているように思えます。

やはり、カルト村で生活をしていた人たちも、自分が良いと信じたものは疑わないような人たちだったのでしょうか?


高田 私は子どもだったので大人のことは全然わからないのですが、村の理念に共感して集まった人たちで、きっと村の考えが良いと信じている部分はあったのだと思います。

村人の中にも村の考えにどっぷりで「村は良い!」と声高に言う人もあれば、ただ穏やかに村で暮らしているだけの村人もいたので、同じところで生活していても実際にはいろんな人がいて、各個人でみんなそれぞれ思っていることは違ったのではないかと思います。

――著書の中では、マインドコントロールされているという意識はなかったように読み取れましたが、カルト村での生活を振り返ってみて、マインドコントロールが行われていたと思いますか?

高田 思います。

――では、そのマインドコントロールに気づき、「こういう点はおかしい!」と声を上げる村人はいなかったのでしょうか?

高田 村では、子どもは子どもだけで集められて暮らしていたので、世話係を除けば大人の村人とほとんど接触がなかったため、村人がどうだったかはまったくわかりません。

でも、子ども同士では普通に、村の批判や、おかしいところを話すことはありましたね。

――当時、村の子たちは高校に進学できなかったとありました。さすがに中卒は少ない時代です。進学できないことに関して、反抗的な気持ちは起こりませんでしたか?

高田 正直なところ、中学生の頃は勉強が苦手だったので「(村の)高等部に行けば高校に行かなくてもいいから、もうテスト勉強しなくていいんだー、ラッキー!」くらいに思っていました。

――しかし、将来、職業の選択肢は限られてしまいますよね。

高田 子どもの頃から、自分はずっと村にいるだろうと思っていたし、高等部に入ることも特に疑問に思わず、「仕事に困る」といった発想をしたこともなかったです。

村では自分の役割さえこなしていれば、あとは何も心配いらない暮らしだったので、学歴が仕事に結びつくような発想自体、思いつかなかったです。

ただ、「中卒」という響きは気に入らなかったので、もし高等部で通常の高校に通えるコースがあったなら、そちらを選んだんだろうなとは思います。数学は苦手でしたが、古文や美術は、もっといろいろ教わりたかったですね。

■普通の人が感じる、よくわからない団体に対しての拒否感も理解できた

――19歳でカルト村を出て、ふさおさんに出会ったとのことですが、カルト村出身であることに関して、勇気を振り絞ってふさおさんに告白したように感じられました。

やはり、カルト村出身であることへの羞恥心や、距離を置かれてしまうかもしれないといった不安があったのでしょうか?


高田 もちろん、どう思われるだろうという不安はありました。村が一般的にどう思われているのかは、なんとなくわかっていましたし、普通の人が感じる、よくわからない団体に対しての拒否感というものも理解できたので。

ふさおさんとメールのやりとりをしているときも打ち明けられず、どうしようかと悩みました。

でも、実際に会っていろいろ話をするようになると、どうしても過去が現在につながっているため、はっきり言っておいたほうが伝わりやすく、自分がすっきりしたかったこともあり、村出身だと話しました。

ふさおさんは、私が村で生まれて暮らしていたということをまったく気にしない人で、普通に受け入れてくれました。そういう人と長く一緒にいたから、この本が描けたというのは、実際のところあると思います。

――村では自分の所有物はないということですが、特にお金を所有できないのは、一般の人には想像できないと思います。自由にお金を使えるようになった今、高田さんは、お金をどのようなものだと考えていますか?

高田 お金が存在しなかった子ども時代だったからこそ得た、「お金はすごい、お金はお守り!」といったお金自体に対するリスペクトは、相変わらずありますね(笑)。

ただ今は、お金が必要な社会で暮らしていますし、子ども時代のように隠し持って眺めてうっとりというようなことはしていません(笑)。必要なものは買って、おいしいものを食べてあちこち旅行して、家のローンも払っています(笑)。

お金は大事ですが、あくまでもお金で、軽んじることはこれからも決してないけれど、「お金、お金!」とがんじがらめにならないように、気楽に暮らせればいいなぁくらいに思っています。

――お金を見慣れていないと「こんな大金、どう使えばいいのかわからない!」と、就職後、初任給の使い道に悩みそうです。

高田 初任給の使い道に困ることは、特になかったです。村では誰かのお古ばかりでおしゃれができなかったので、最初は「しまむら」とかに通って服をたくさん買いましたし、貯金もしたかったですし。

それでお金が貯まったら自動車の免許取得!次は一人暮らし!…という感じで、お金を貯めてはどんどん使っていました。暮らしていく上でお金は、いくらあっても困りませんからね(笑)。

――お金と、うまく付き合っていけているんですね。村では自分の成長のために仕事をしますが、一般社会で仕事をする主な理由は、お金をもらうためです。この、仕事をしてお金をもらう行為について、高田さんはどんな印象を受けましたか?

高田 いいですね!お金大好きなので、最高です!子どもの頃に自分の労力をお金に換算して手に入れることが可能だったなら、お菓子や本も買えたし、友達の誕生日プレゼントも買えたし…と、つい空想してしまいます。

■個人の人格は無視されて、「信仰」に対するイメージで判断される世の中

――日本では、とかく宗教や信仰について公にしづらい雰囲気がありますが、それについてどう思いますか?

高田 特に考えたこともありませんが…確か海外でも「どんなに親しい間柄でも、宗教と政治野球の話には気をつけろ」って言いませんでしたっけ?

私の場合、「村にいた」と言った途端に、「カルト村出身者」「元村の子」とひとくくりにされてしまうことがよくあります。

実際は、それぞれ別人格を持った個人の集まりですし、村ではちょっと変わっていると言われていた私が今、村の話をすることも、まったく個人的な思い出なのに“元村の子代表”みたいになっていて「なんかスミマセン」という感じです。

村にいた子それぞれに、100人いたら100通りの捉え方があると思うし、村に対して思うことも人それぞれだと思います。

「何かを信仰している」と言いづらい空気があるとすれば、言った途端にその人個人の歴史や人格は無視されて、聞いた人が持つ「信仰」に対してのイメージのみですべてを判断される今の世の中の傾向が関係しているのではないだろうかと思います。

――カルト村で小さい頃に世話係さんから虐待を受けたり、ひもじい思いをしたりと、いまだに何かトラウマが残っているのではないかと感じられました。村で生活したことで、今でも日常生活に染み付いている習慣はありますか?

高田 習慣ではないですが、うれしいことが続くと不機嫌になるという、変な癖があります。村にいた頃、両親とは離れて暮らしていて、たまにしか会えなかったんです。

会っても必ず別れる日が来たので、今でもあまり良いことが続くと、訳もなく不安になってしまいます。良いことを喜ぶより、良いことを怖れる気持ちのほうが強いのは、「幸せは長くは続かない」と、記憶に刷り込まれているからだろうと思います。

あと自分では無自覚で、最近ふさおさんに指摘されて気づいたのですが…。

子どもの頃、おなかをすかせたときの自衛手段として食べ物を隠してこっそり食べていたので、今でもふさおさんが買ってきてくれたお菓子などを、すぐ食べないでしまい込む癖があります(笑)。

「今よりもっとおなかがすいたときのため」という理由なのですが、あちこちにしまい込んで忘れてしまって、結局、賞味期限が切れてしまったりすることも多く、ふさおさんに「犬かよ!悪くしてから食べるんじゃなくて、おいしいうちに食べなよ、また買ってきてあげるから!」と怒られるのですが、やはりもったいなくて好きなものはしまい込んで、後からちびちび食べています。

おなかをすかせてから大事に食べると、おいしくないですか?(笑)

高田かや(たかだ・かや)

東京都在住、射手座、B型。生まれてから19歳まで、カルト村で共同生活を送る。村を出てから、一般社会で知り合った男性“ふさおさん”と結婚。

村での実体験を回想して描いた作品を「クレアコミックエッセイルーム」に投稿したことがきっかけでデビュー。今、一番幸せを感じるのは、ベッドで寝転びながら本を読みつつ、何か食べているとき。

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