記事提供:日刊SPA!

昨年6月、AV出演を強要された女性の訴えをもとに、大手AVプロの幹部らが逮捕された。以来、同様の被害を訴える女性が続々とメディアに登場して社会問題化。

内閣府での議論を踏まえて今年は国会でも取り上げられる見込みだ。当の“AV出演強要者”たちは、この四面楚歌の状況に何を思うのか――

◆ついに重い口を開いた…

2月9日、「性的な撮影要求27%」「望まぬ性的撮影73人」という刺激的な見出しで、大手メディアは内閣府の調査結果(※)を報じた。

この調査は、「モデルやアイドルの勧誘を受けた経験もしくは、自らそうした募集広告に応じた経験」を持つ10~30代の女性2575人を対象としている。

このうち、当初の勧誘や募集に沿って契約まで至った197人のなかで、契約の際には聞かされていなかった性的な行為や撮影を要求された女性は、53人(27%)。うち17人は哀れにも応じてしまったという。

また、契約なしに自己の意思に反して性的な行為などを撮影された女性は60人。前出17人との重複回答を除けば、契約の有無にかかわらず望まない性的撮影をされた女性は73人にものぼる。

しかし、これらの数字をそのまま冒頭の大手メディアの記事見出しのように、AV出演強要問題の文脈で安易に使う姿勢にはAV業界関係者は首をかしげる。

「この調査で使われている“性的な行為”という言葉は、イコールAV出演ではない。『水着や下着、露出度の高い衣服を着ての撮影』も“性的な行為”に含まれています。一般の芸能事務所と契約した後、水着グラビアがイヤだと訴える人って、けっこういますよね。それもカウントされてるんじゃないかな」(AVプロダクション関係者)

実際、2月12日に“出家”を表明して所属事務所と決裂した人気女優の清水富美加も、水着撮影が苦痛だったと主張している。

「それに、『契約なしに自己の意思に反して性的な行為などを撮影された女性が60人いた』そうですが、現在のAV業界では契約書を交わさずに撮影をすることはありえませんから、この数字もAVに関係ないですよね」(同)

つまり、内閣府のアンケート結果は、AV業界における出演強要問題を語る上で不可欠な被害数字を創造している可能性があるのだ。

これまで、AV強要問題の実態についての情報発信は、NPO法人ヒューマンライツ・ナウ(以下、HRN)やポルノ被害と性暴力を考える会(以下、PAPS)が中心だった。

彼女たちは、被害に遭ったと訴える大勢の女性の相談を受け、その実績をアピールしてきた。

SPA!もこのアンケート結果についての評価や強要問題の実態についてHRNなどに取材を申し込んだのだが、いずれも多忙を理由に断られ、PAPSは取材が締め切りに間に合わなかった。

(※)内閣府が発表したAV強要問題のアンケートとは…

【資料】はコチラ

内閣府の男女共同参画局では、AV出演強要問題をはじめとする性暴力被害の実態把握を目的に、アンケートを昨年12月に実施。

水着グラビア、着エロ、ライブチャット、JKビジネス(撮影会)、個人配信の無修正動画など、モデル女性を必要とする業種を幅広く網羅している。

だが、AVと児童ポルノが同列に扱われているなど、各業種の区別ができておらず、議論をミスリードに導きやすい。

この資料から「自己の意思に沿わないAV出演を強要された人数」を正確に知ることは不可能だが、SPA!が精査したところ、その可能性がある人数は、最大でも2人にとどまった。

◆プロダクションの社長を直撃!

では、かたや「AV出演を強要した男たち」として、糾弾されているAV業界の人々はこの問題をどう捉え、釈明するのか。SPA!は問題の渦中にいるプロダクションの社長を直撃した。

「私たちは出演を強要した極悪人のように言われていますが、本当に心外です。『強要されてAVに出演させられた自分は被害者だ!』と訴えた元女優も、現役時代は本当に楽しそうに働いていたんですよ。女優たちに手のひらを返される状況には、戸惑うしかない」

そう口火を切ったのは、大手プロダクションの社長である川上則夫氏(仮名)だ。女優側の弁護士から届く内容証明への対応に胃をキリキリさせているという。

「内容証明が来るたびに、悲しくなる。あんなに情熱をかけて彼女が売れるよう頑張ったのに、『強要された』『弁護士を通せ』とは…。本当にやるせない」

同じく大手プロダクションの社長、秋本吾郎氏(仮名)は、強要がありえない事例においても、強要を理由として内容証明を送ってくる弁護士が存在すると呆れ顔だ。

「弊社による強要被害に遭ったと訴えてきた女性は、以前、別の事務所に所属してAV出演を経験済みだったんですよ。にもかかわらず、『渋谷でスカウトされ、秋本の事務所でAVだと知らずに出演させられた』と主張していました」

また、現状の仕事の流れでは、そもそも強要など生まれないと、川上氏は話す。

「強要したって散々言われてますが、私たちプロダクションの人間は女優に『やりたくないことはやらなくていい、もし現場で台本や契約にないことをさせられそうになったらすぐマネジャーに連絡をするように』って指導してるんですよ。これは“強要”なんですか?」

◆一緒に強要をなくそうと話し合ったのに…

AVメーカーの業界団体である「特定非営利活動法人知的財産振興協会」(以下、IPPA)に話を聞いた。

「昨年6月に伊藤弁護士をはじめとするHRNの方が我々のところに来て、強要問題があるというから、そりゃ驚きましたよ。HRNが公表した報告書には、『AVの撮影現場で水12リットルを飲ませた』『逃げようとした女優を追いかけて羽交い締めにして現場を続行させた』などの記述があり、これが本当なら絶対に助けなければいけない。そう考えて加盟各社に照会したんですが、残念ながら我々の調査では一件も見つからなかった」

そこで前出の凄惨な仕打ちの真相を究明するために、「被害を受けた女性にヒアリングをさせてほしい」とHRNに調査協力を要請したという。

「HRNには解決に尽力することを約束して、今後は協力して強要問題を解決しましょうってことになったんです。

じゃあ、一体どこの誰が強要したんだ?となるわけで、被害を受けた女性へのヒアリングをお願いしたら『被害者が直接IPPA関係者に囲まれて密室で話をするという状況には到底耐えられない』と。

被害を発生させたAVメーカーなり監督の実名をHRNは把握しているでしょうから、それを教えてほしいだけなんですが、ダメだと。それさえ教えてくれれば、我々もすぐに実効性のある対処ができるのですが…」

IPPAからの照会がうやむやにされるなかで、内閣府ではAV出演強要があった前提で議論が進む。しかも、強要ばかりを強調することによって、救済が遠のくこともあるという。

「結婚や就職を理由に取り下げてほしいということであれば相談に乗れるし、実際に取り下げたことも何度かあります。でも『強要されて出演した作品だから、販売サイトから取り下げてほしい』というのは承服できない。だってそれで取り下げたら強要してるって認めるわけじゃないですか。やってもないことを認めるなんて、おかしいですよ。20年、30年前のAVは確かにとんでもない現場もあって、強要はあったかもしれない。でも、今はそんな時代じゃない」

混沌とするAV業界。問題の解決の糸口は見つかるのだろうか。

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