記事提供:日刊SPA!

「アイドル戦国時代」と呼ばれ、地下アイドルからご当地アイドルまで日本全国でアイドルが乱立する昨今のアイドル業界。もはやどんな奇抜なグループでも驚かれないこのご時世に、ネットを震撼させたニューカマーがいる。

紹介しよう。彼らの名前は「笑顔パンチ」。今流行の“メンズ地下アイドル”だ。

“メンズ地下アイドル”とは、「会いに行けるアイドル」として大手事務所に所属せず、劇場ライブを中心に活動する男子アイドルグループを指す。

2010年前後より増え始め、今ではその数50組以上。メディアに取り上げられる機会も多くなり、昨年12月には専門誌『ミレメン』(コアマガジン社)が創刊。

今年1月30日にも『ユアタイム』(フジテレビ系)でも「Rush×300」と「B2takes!(ビートゥーテイクス)」という2組の人気イケメングループが特集された。

「笑顔パンチ」もそんな“メンズ地下アイドル”として、昨年末ファーストシングル「Your smile」でデビューを果たしたグループだ。

今やジャニーズすら韓流グループを意識したタイプが増える中、地下なのに90年代王道ジャニーズのような謎のネーミングと、ダサすぎる衣装と歌。その存在が2ちゃんねらーに発見されるとたちまち拡散し、ネット民たちに衝撃を与えた。

「ごめんワロタ(笑)」「舞祭組よりブサイクだね」「闇が深い」「一般人より歌が下手じゃねーか」「下界に縁がありそう」

YouTube再生回数はすでに9万回に届く勢いだが、「グッド」評価58に対して「バッド」評価665。高評価の10倍以上を叩き出す堂々たる燃えっぷりだ。

とはいえ、である。一応、PVもプロの仕事。顔面偏差値はさておき、宣材写真もどうやらちゃんとしたフォトスタジオで撮ってある。しかも公式ツイッターを覗くと、なんとライブも開催してるではないか!

これは本気(ガチ)なのか?それとも彼らは生まれる時代をまちがえたのか?高鳴る胸をおさえながら、真相を確かめるべくライブへと潜入した。

◆記者が目の当たりにした衝撃の光景とは?

2月某日、会場のライブハウスには、へなへなした歌声が響いていた。

「涙かくす君のえーがお~、さびしそうで胸が痛ーいよ~」

ステージ上で歌うのはYouTubeで見たあの彼ら、そう「笑顔パンチ」だ!キャパ100人ほどの観客席はお客さんがちらほら。女子中高生から主婦っぽい妙齢の女性までファン層は幅広く、ペンライトを振って声援を送っている。

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生歌を目の当たりにした感想は「YouTubeで聴くほど音痴じゃない、かな…?」という感じである。しかし歌より不安定なのはダンス。タップダンスと見まがうドタバタぶりで、我が子の授業参観のようなハラハラをおさえられない。ある意味スリリングだ。

笑顔パンチは2曲の持ち歌(少なっ)を歌い終えるとライブ終了。さっそく取材を申し込むことにしたが…。

「すいません、今日は物販で忙しくて…週末に代々木公園で無料ライブをやってるんで、そこに来てください」

なんと売れっ子アイドルのような答えが。胸の高鳴りを抑えつつ、もちろん行ってみることにした。

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記者が肌で感じるこの寒さは、北風が舞う冬空のせいだけではあるまい。メンバー5人対ファン女子4と合コン以下の比率のシュールな光景である。しかしそこは「笑顔パンチ」、名前通りの爽やかなスマイルを浮かべながら、

「サイン入りCD、1000円です!2ショットチェキもやってまーす」

とライブ終了後には物販ブースの前で精いっぱい声を張り上げる。2ショットチェキは1000円、ハーレムチェキは2000円(全員サイン入り)。500円の「プロマイド写真セット」も販売している。

こうした物販手法について、メンズ地下アイドルに詳しい関係者は「男子も女子地下アイドルと同じで物販メインで稼ぐんです」という。

「地下メンズでも人気グループになるとライブで500人近く集客するし、物販は3時間待ちということもザラ。男性アイドルオタと違って、女性は一度ファンになったら推しメンを変えずに応援し続けるし、お金使ってくれるというビジネス的な旨味もあるんです」

この日も彼らのまわりには女性ファンたちが取り囲み、1枚1000円のチェキを何枚も購入する女性も。

「ネット炎上とか、現場の私たちには関係ないです。歌はたしかに下手だけど、一生懸命なとこがいいっ」

しかし本人たちは炎上についてどう考えているのだろうか?ライブ後、ついに取り付けた念願のインタビューを開始しようとすると、そこには衝撃的な光景が待ち受けていた。

「お前ら!最近みんなタルみすぎだから。ネットでなんて言われてるかわかってんの?そんなんだったら一生地下だよ!?」

女性マネージャーから飛んだ檄に、「笑顔パンチ」メンバーの顔からスマイルが消えていた――。

◆「それでも僕らは前を向いて進みたい」

インタビューに入る前に「笑顔パンチ」の概要を説明しよう。

新興事務所が「歌って踊れる正統派アイドル」を目指しメンバーを募集、オーディションを勝ち抜いた6名で昨年末デビューした。諸事情により1名脱退したが、5人体制となって心機一転、路上ライブを中心に活動し始めた矢先に炎上騒ぎが降ってきた。

「それまでは数百再生だったのが、いきなり1日で2万回行ったからびっくりしました。僕はファンの人から可愛いキャラって言われてたんですけど、ネットでは『CCBかよ』って…」

そう語るのはメンバー最年少、ピンク担当の岩井勇矢くん(19歳)。担当カラーに合わせて髪もピンクに染めたがゆえの悲劇だ。

「僕は『研ナオコ』って言われました。学校とかでも『あれ、炎上の人だよね?』って指さされたりして…」

沈痛な面持ちで語るのはブルー担当の岩崎良拓くん。「笑顔パンチ」のエース格のイケメン大学生だが、彼がアイドルを目指したきっかけは、なんと就活だったという。

「今、4年生なんですけど、学部が営業系の仕事が就職先に多いんです。コミュ障の僕には絶対ムリだってあきらめてた時に、バイト仲間に誘われてジュノンボーイコンテストに応募して。二次で落ちちゃったんですけど、芸能ってやりがいある仕事だなって、今の事務所に応募しました」

就活をしたくないゆえにアイドルとは驚きだが、さらに異色の経歴を持つメンバーもいる。イエロー担当の池内光司くん(22歳)は元サラリーマンアイドルだ。

「僕は元からアイドルになりたかったんですけど、実の姉に『アンタ鏡見たことあるの?』ってガチで怒られて。あきらめて一回就職したんですけど、やっぱり夢を追いかけたい!って上京して笑顔パンチに応募しました」

池内くんは現在、スーパーマーケットで深夜バイト生活。1日10時間以上働きながら、昼間にはライブ活動や自費でボイストレーニングのレッスンに通っているという。

「他のメンバーも学生の2人以外はバイトを掛け持ちしながら活動してます。それでも夢があるからがんばれるし、同じ目標を持ってるメンバーがいるから励まされる。炎上しちゃったけど、それだけ知ってもらえたのはすごいことだし、僕らは逆にチャンスだって思ってるんです」

他のメンバーも、「もう僕らは『笑顔パンチ』じゃなくて『炎上パンチ』だって開き直ってます」と笑う。

無料ライブ以外でもメンバー同士で意見を出し合い、配信動画サービスのツイキャスやラインライブといったSNSを使って、自分たちで考案したバラエティ番組を発信しているという。

メジャーの舞台を目指して、地下から花開くことを夢見る若者たち。輪になって次のアイデアを出し合う顔には、宣材写真とはちがってナチュラルで清々しい笑顔が浮かんでいた。

ところで、YouTubeで9万回再生したデビューシングル『Your smile』は、炎上の甲斐あって売り上げは伸びたのだろうか?

「…今日のお客さんでやっと10枚です」

わ、若者よ、明日に向かってひた走れ!

…と、いい話で終わらせようと思ったら、取材から1週間後に驚くべき事実がツイッターに更新された。

日頃より笑顔パンチを応援賜り誠にありがとうございます。

この度誠に残念ではございますが、下記の2名を規約違反により除名処分と致しましたことを報告させて頂きます。

・岩崎良拓
・池内光司

さっそく2名脱退してるじゃないか!記者の前で見せた、あの爽やかな笑顔はなんだったのだろう…。

やはり闇の深そうなメンズ地下アイドル業界。新生「笑顔パンチ」の行く末が今から心配になるが、結成早々SMAPばりの内紛劇を見せてくれた彼らに一応エールは送りたい。

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