宅配便業界最大手であるヤマト運輸の労働組合が、2017年の春闘で、現在の人員体制では急増する宅配便に対応するのは難しいとして『宅配便を取り扱う全体の量を抑えるよう』に経営側に要請したことがわかりました。

宅配業界では、慢性的なドライバー不足にプラスして、近年のインターネット通販の飛躍的な普及が問題となっていました。特に2013年に佐川急便がAmazonとの契約を打ち切った為、その荷物の多くがヤマト運輸に流れた事により扱う荷物量が急増、それによって過酷な労働環境を生み出しています。

その便利、どこまで必要?

21日に放送されたテレビ東京系「ガイアの夜明け」では『“便利”はどこまで必要か?』として、宅配会社の過酷な労働状況を追った番組を放送しました。

深夜なのにコンビニで買い物ができる、インターネットで24時間欲しいものが手に入る、しかも送料無料で再配達までしてくれる、どれも今や当たり前になった便利なサービスです。しかしその裏では、便利なサービスを支える人たちを悩ませる過酷な現実がありました。

出典テレビ東京系「ガイアの夜明け『 “便利”はどこまで必要か?』」2月21日(火)放送

荷物の9割がネット通販、約2割は再配達に

今や、宅配荷物の量は年に37億4493万個という驚異的な数字になっています。番組では、一人の宅配ドライバーに1日密着。積み込む荷物のほとんどは、大手の通販会社によるネットショッピングの商品です。

しかし多くの荷物があるにもかかわらず、配達先は留守が多く、なかなか車に積んだ荷物は減りません。中には、日時指定しているにもかかわらず不在だったり、再配達の連絡の後で「やはり出かけるからすぐに届けてほしい」と電話がかかってくることも。

夜になると、不在票を入れた人たちが仕事や学校から帰宅、再配達の連絡が入ります。配達中にもドライバーの元に次々連絡が入ります。その電話の対応をしながら並行し、配達作業は続きます。しかし、再配達の連絡がないまま持ち帰る荷物も少なくありません。

宅配ボックスがあるマンションでも、共働きの家庭が多く留守が多く、すぐいっぱいになってしまって、使えず持ち帰ることも多いそうです。

朝8時に家を出たドライバーが、仕事を終えて帰宅したのは午後11時すぎ。その間に休憩は、コンビニでパンを購入し、駐車場で昼食として食べたわずかな時間だけでした。幼い我が子に会えるのは、朝の僅かな時間だけ。帰宅して遅い夕食をとる横で、妻は「仕事はなくならないだろうけれど(体が)持たなくなるのではと心配」と語りました。

少し前に、大手宅配会社の宅配ドライバーが、配達中の荷物や台車を投げ飛ばす様子を撮影した動画がYouTubeにアップされ、世間を騒がせたことがあります。

「ありえないとは思うけど、やっちゃう気持ちもわからなくもない。みんなストレスはありますよね」(番組で密着していたドライバー談)

出典テレビ東京系「ガイアの夜明け『 “便利”はどこまで必要か?』」2月21日(火)放送

過労死レベルの残業80時間が5ヶ月続く人も

労働組合に、2人の男性が相談にやってきます。大手宅配会社で16年ドライバーとして勤務、去年退職したSさんは、連日の1時間以上のサービス残業や長時間労働に苦しんできました。Sさんのタイムカードに刻印された時刻は、ずらりと長時間労働の記録が並んでいます。

「労働時間もすごく長いですね。23時51分に終わって、次の日は朝8時には入っていますね」(タイムカードを見て、神奈川労連の澤田幸子さん談)

出典テレビ東京系「ガイアの夜明け『 “便利”はどこまで必要か?』」2月21日(火)放送

そして、過労死ラインと言われる残業80時間以上の月が、連続して5ヶ月確認されました。そして連日1時間を超えるサービス残業。現在は弁護士を立てて話し合いをしているそうです。

再配達を減らす試み

番組では、再配達を減らす試みとして、個人宅用宅配ボックスの開発が日本郵便と大和ハウス工業、住宅ポストのナスダの共同開発で進められていると紹介されていました。また、宅配業者によってはコンビニで受け取れるサービスを行っているところもあります。大きな問題とされる再配達が改善されるだけでも、配達する人、受け取る人の双方の負担を減らすことができます。

時代は営業時間の短縮へ、一方で24時間営業を始める店舗も

便利さとは、一体どこまで必要なものなのでしょうか?確かに、ファミリーレストランやコンビニが24時間営業を始めた時は「すごい!」「便利!」と素直に驚きました。

しかし現在、多くの店舗が営業時間短縮の方向に動いています。ロイヤルホストの24時間営業廃止、ガスト・ジョナサンなどのすかいらーくグループも7割の店舗で午前2時閉店に、マクドナルドも24時間営業の店が4割になりました。

しかしその一方で、新たに24時間営業を始める店舗もあります。ウェルシア薬局は、あえて24時間営業に舵を切りました。池野会長は「夜中に病気した時に、役に立たないのが薬局と言えるのか?」と、その理由を説明。病院の処方箋や、薬剤師しか売れない第1種医薬品を24時間取り扱うことにしたのです。

番組では、夜中に具合の悪くなった男性や、深夜に怪我をした子供の母親が駆け込んでくるなど、この営業時間に助かけらて入る姿や、店舗に足を運べない在宅介護の方のための配達を始められるよう模索する様子を放送。けれど現状では、このままでは採算が取れない懸念があるという問題も浮上。便利を追求するということは、どこかに負担を強いることになる可能性を秘めていると言えます。

便利はどこまで必要なのか?

最近の加熱する通販サービスに対し、SNSなどでは「配達ゆっくりでいいよボタンとかあればいいのに」「便利だから使っちゃうけど、なるべくまとめて購入するようにしている」という声もあります。

その一方、番組で紹介されたMAGASEEKでは、顧客からの「先ほど注文したのですが、いつ出荷されますか?」「まだ出荷の連絡が来ていません。ちゃんと今日出荷されますか?」等の問い合わせメールも多く、スピードへのニーズを感じ、それに応じているとしていました。

私たちの暮らしを取り巻くサービスは、その競争によって安く便利になってきました。しかしその分、それを支える人達の負担が大きくなってきているのも事実です。便利さを求める私たちの声に応える形で、様々な業種で過酷なサービス競争が行われていると言えます。

今回のヤマト運輸の労働組合の『宅配便を取り扱う全体の量を抑えるよう』という要請に対し、経営側も協議に応じる構えです。会社の収益減ともなる問題を労使で話し合うというのは、極めて異例の事態です。

「ガイアの夜明け」では、この問題をこんな言葉で締めていました。

「単に豊かさを求めるだあけ時代から、豊かさの背景にある働き方にも意識を向ける時代へ。我々はいまその転換期に来ているのだと思います」


この問題は企業内の問題だけではなく、一人一人が「便利さについて」改めて見直すべき問題なのではないでしょうか。

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