現在の日本において引きこもりはそうめずらしい話ではありません。20年以上引きこもる男やお風呂にすら入れなくなる女、家庭の中で暴れまくり親やペットを殺そうとする息子まで様々なケースがあります。

Spotlight編集部では崩壊しきった家庭内の現状に迫るべく、精神障害者の強制拘束を否定し、対話と説得によって患者を医療につなげる「精神障害者移送サービス(株式会社トキワ精神保健事務所)」押川剛さんにお話をうかがいました。

3月1日、新潮文庫より「子供の死を祈る親たち」を出版。そして、押川さんの活動が漫画『「子供を殺してください」という親たち』として月刊コミック@バンチで連載がスタートし、注目を集めています。

今回は、押川さんのインタビューとともに漫画の内容を一部紹介します。

「子供の死を祈る親たち」とは

ーー精神障害者移送サービスに相談にくる親御さんはどのような方が多いですか?

押川:うちに来られる大半の親御さんが最初は普通ですし本音を言いません。でも長年この仕事をやっていると、しぐさや立ち振る舞いから、子供の死を強烈に願っているのがわかるんですよ。

だから「事故や病気で死んでくれないかな」って思っているんでしょ?と聞くと、その思いのたけを一気に話始めます。その悲壮感は子供の死を祈っているように見えますね。

©押川剛 鈴木マサカズ/新潮社 月刊コミック@バンチ

押川:もちろん様々なケースがありますが、やはり相談にくる親御さんは擦り切れる手前といった感じの方が多いです。殺すか殺されるかそんな世界です。

繰り返される「家庭内ヤクザ」

ーーそこまで崩壊していく家庭。その原因は何なのでしょうか?

押川:私が対応しているのは引きこもりや家庭内暴力、親に命令し奴隷化するなどチンピラヤクザのような言動をして親を困らせている子供たちです。

では、子供たちはどうしてそうなってしまったのか…?

原因の元をたどると親にいき着きます。

©押川剛 鈴木マサカズ/新潮社 月刊コミック@バンチ

押川:この漫画(「子供を殺してください」という親たち)の家族が代表例なんですけど、子供がチンピラヤクザ化する家庭の親御さんほど高学歴であったり大企業に勤めていることが多いです。

こういう親御さんたちは自身が、他人や我が子を奴隷化してきたのです。会社の上司や顧客には人当たりがよく、ゴマをすりまくっているが、部下や私のような学歴や大企業勤務でない人に対しては、とても横柄で、平気で嘘をついたり振り回したりします。

また我が子であっても、自分のためにとことん利用しつくします。子供の資質をまったく無視して、「大企業に入れ」「恥ずかしくない大学に行きなさい」「失敗するな」と親の価値観を押しつける。こういった発言は子供ではなく親のためのもの。

こういう親の姿を「普通の事」として認識して育った子供が、引きこもりなどで社会との接点をなくすと、家庭内のチンピラヤクザになって、親を奴隷化するようになります。

ケチな親たちの末路

ーーではやはり、親の育て方や見せてきた姿の影響はとても大きいということですね?

押川:間違いなく、大きいです。他にも例をあげると、「ケチな親」これも厄介です。

人には極力お金を払わない、他人の金で飲み食いするのがうまい。こういう「金を払ったら負け」というケチな考えのもと生きている親御さんはたくさんいます。

この生き方を子供は見ていて、刷り込まれています。だから、就学や就労に失敗すると、外で出来ない分親から金を巻き上げる。親がそれに従うのは、「外に払うぐらいなら、自分の子に払った方がいい」と思うからなんです。

だから私のところに頼みに来るのは、親御さんも年をとって面倒が見きれなくなり、「自分が殺されるかも」という状況になってやっと重い腰をあげます。その時には状況は深刻ですけど。

©押川剛 鈴木マサカズ/新潮社 月刊コミック@バンチ

押川:手に負えなくなった子供を施設へ預け、また会うのを恐れ引っ越す親御さんもいます。

子供と親は別の人間だということを自覚する

ーー押川さんの思う子育ての成功とは?

押川:子供が親とは別の人間なんだと自覚して、自分の人生を生きることです。そこには、精神的自立や経済的自立も含まれ、親にはめられた型ではなく自分の未来を見出せるようにしてあげることが大切です。

出典 http://www.oshikawatakeshi.com/?p=4841
     http://suzukimasakazu.com/
©押川剛 鈴木マサカズ/新潮社 月刊コミック@バンチ

精神障害に陥る子供たちは、子供だけでなく親にも問題があり、むしろ親から引き継いだ考え方や生活によるところも大きいのかもしれません。

次回は「オール3でヨシとする」という押川さんの子育て論についてお話をうかがいます。

【2日連続公開】
・押川剛が語る「子供の死を祈る親たち」の共通点
・オール3でヨシ。自分の子供に“特別”を押し付けてはいけない

【押川剛(おしかわたけし)プロフィール】

1968年北九州市生まれ。専修大在学中に川崎市内で警備会社を起こし(トキワ警備)、大学は中退する。従業員の統合失調症発病を契機に精神障害者の説得移送に事業を転換する(トキワ精神保健事務所)。これまでに1,000件以上の移送を完遂。精神障害者や、薬物・アルコール依存症の対象者と対話できる貴重な人材として、日本テレビの報道番組やTBSテレビ水トク!「THE説得」などにおいて、たびたび特集される。

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