記事提供:サイゾーウーマン

疲労や睡魔がピークに達しても休めないとき、最強の助っ人のように感じる「栄養ドリンク」。最近は「エナジードリンク」なるものも一般的になり、毎日のようにお世話になっている女性も少なくないだろう。

でも、毎日飲み続けて平気なのか、本当に効果があるのかなど、気になる点もなくはない。

そこで、大阪市立大学大学院医学研究科疲労医学講座の特任教授で、「東京疲労・睡眠クリニック」院長の梶本修身先生に、栄養ドリンク、エナジードリンクの本当のトコロを伺った。

◆栄養ドリンクで得られる「疲労回復」は、全てまやかし

――栄養ドリンクは疲労回復に効果的だと思うのですが、どんな成分が入っているのでしょうか?

梶本修身先生(以下、梶本) 一般の栄養ドリンクに含まれる成分は、カフェイン、タウリン、ビタミンB1がメインで、アルコールも微量に含まれていることが多いです。

カフェインが眠気を覚まし、アルコールが気分を高揚させることで疲労感は消しますが、どちらも疲労そのものを取ってくれるわけではありません。

ビタミンB1に関しても、日本人では一般的な食生活で所要量の116%以上を摂取していますから、食事だけで十分足りているんですよ。そこへ栄養ドリンクで補給しても、余剰物質として尿中に排出されるだけ。

その際、尿のビタミン濃度が高くなることで色が濃くなったり匂いがしたりするため、“効いている”ように感じてしまうのですが、もし必要な物質として体内に吸収されていれば、尿で出てこないはずですよね(笑)。

タウリンに至っては、効果どころか、逆に、摂取すればするほど自発的な行動量が落ちていくことがラットで示されています。

つまり、ビタミンB1やタウリンを主成分とする栄養ドリンクは実はカフェインで疲労感を消すだけで、疲労自体を取る成分は一切入っていないんです。

――「疲労」と「疲労感」は違うんですか?

梶本 「疲労」は、登山やボクシングなど筋肉を特別に痛めつけない限り、「自律神経中枢の疲れ」といえます。例えば、3キロを走る場合でも、猛暑の8月と涼しい4月なら運動量は同じなのに疲労度がまったく違うでしょ。

その差は、発汗など体温調整を司る自律神経中枢にかかる負担の差。つまり、運動時には、自律神経が呼吸、心拍や体温を秒単位で調節し、身体全体をコントロールしているんです。また、デスクワークなどによる緊張や集中の持続も自律神経の働きです。

ただ、自律神経中枢の細胞は、働くときに酸素の消費とともに「活性酸素」を発生させるので、使いすぎると細胞にサビが生じて、本来の働きができなくなっていってしまうんです。それが「疲労」の正体。

それに対し「疲労感」というのは、“疲れた”と感じる感覚的で曖昧なもの。激しい運動でも、楽しければ疲れは感じにくいでしょ。逆に、会議などつまらないことをしていると座っているだけですぐに疲れた気がしますよね。

つまり、実際の疲労度合いと疲労感は大きく異なります。そのため「疲労感」だけ取ってしまえば、「疲れが取れた」と錯覚させることができてしまうんです。

――タウリンに疲労回復の効果はまったくないんですか?

梶本 タウリンは肝機能を改善する効果は報告されていますが、元来は神経を鎮める作用がある抑制物質ですから、そもそも元気になるはずがないんです。

実際、CMでも「タウリン○ミリグラム配合」と謳っているだけで、「タウリンが疲労に効く」とは一言も言ってません。もし、製薬会社が「タウリンが疲労に効果がある」と宣伝すると薬機法違反です。

もし「タウリンが疲労に効く」という印象を持たせているなら、巧妙なイメージ操作です。

――風邪薬と栄養ドリンクを一緒に飲むと回復が早いといわれていますが、併用で効果的になるということはないんですか?

梶本 風邪薬には抗ヒスタミン剤が入っているので、眠気を誘います。カフェインを同時に摂取すると一時的にその眠気を覚ましてくれるので、感覚としてなんとなく元気になった気がするだけのこと。風邪薬の効果が増すわけではありません。

◆栄養ドリンクをめぐる大人の事情

――では、なぜ効果のない栄養ドリンクが、長年、疲労回復薬のように扱われているのでしょうか?

梶本 リポビタンDなどが発売された1962年頃は、脚気という疾患が問題となるほどビタミンB1が不足した時代です。だから、当時はビタミンB1を補給することに意味があったと思います。

しかし、栄養ドリンクはこれまで一度たりとも偽薬を対照としたヒト臨床試験で抗疲労効果が実証されたことはなく、人に対して抗疲労効果が実証された医学論文もありません。

ビタミンが不足してるから「補給したら効くであろう」という発想だけで承認された、55年前の既得権益であり、飽食時代の今となっては時代錯誤ともいえます。

日本には、残念ながらそのような既得権だけで発売されているものの、実際には効果が疑わしい医薬品がたくさんあります。

ただ、日本の製薬会社が出している栄養ドリンクを例に挙げると、年間2,500億円といわれる売上高のかなりの部分が広告料として使われています。

だから恩恵を受けているマスコミは、事実を書くことができないんでしょうね。今までその科学的事実を放送してくれたのはNHKだけ。事実、民放局や雑誌で私がそのことを語っても、全てカットされてしまいます(笑)。

――最近、いくつもの種類が出回っているエナジードリンクはどうなのでしょうか?

梶本 栄養ドリンクは医薬部外品なのですが、エナジードリンクは清涼飲料水の扱いです。そのため、成分内容量の表示が義務づけられておらず、公表されていないんです。

おそらくカフェインが大半だとは思いますが、公表されていない以上、検証もできないのでなんとも言えません。

ただ、アメリカの小児学会で最も権威ある雑誌では「有用性がないだけでなく子どもに飲ませるのは危険」と注意喚起されていて、米国医師会も「エナジードリンクは子どもに与えるべきではない」とはっきり書いています。

しかし、それも日本の大手マスコミでは報道されていません。

(後編につづく)

梶本修身(かじもと・おさみ)

1962年生まれ。大阪大学大学院医学研究科修了。医師・医学博士。現在、大阪市立大学大学院医学研究科疲労医学講座の特任教授で「東京疲労・睡眠クリニック」の院長を兼任。

著書『すべての疲労は脳が原因I』『同II』(集英社)は15万部を突破するベストセラー。

『たけしの健康エンターテインメント!みんなの家庭の医学』(テレビ朝日系)、『ためしてガッテン』(NHK)、『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)など出演多数。

権利侵害申告はこちら