自転車は車道の左側を走るものと知ってはいても、歩道を走るさいには右側を走ることになるのを知っている人がどれほどいるだろうか。

道路交通法の第六十三条の四によれば、「歩道の中央から車道寄りの部分を徐行」するよう定められており、明確に右側と示されてはいないが、車道の左側から歩道に進入すれば自然と右側となる。

歩道上で自転車同士が対向して衝突した場合、車道寄りを走っていた人が「法律通り走っていたのはこちらだ」と主張すれば、過失責任の割合に影響する可能性はある。

『わが子に会えない 離婚後に漂流する父親たち』(西牟田靖/PHP研究所)を読むと、法律や制度を知らないばかりに、それらを駆使してくる相手から翻弄されることの恐怖を感じた。

本書は、自身も離婚によって子どもに会えなくなってしまった著者が同じような境遇の人たちに取材したもので、とりわけ目立ったのが「身に覚えのないDV(ドメスティック・バイオレンス)」を配偶者から主張されたケースだ。

ある男性は、部屋がもぬけの殻になっていたため捜索願を出そうと警察に「妻や子がいなくなった」と電話したところ、「居場所は教えられない」と言われてしまったという。

DV防止法にも虚偽申告による罰則規定はあるものの、速やかな被害者保護という観点から、申請の段階では真偽を問わずに申し立て者の住所を秘匿するものであるらしい。

この男性はその後に離婚裁判となるのだが、その訴訟ではDVは離婚理由に挙げられていなかったという。つまりは、行方を隠すための方便だったのである。

もっと恐ろしい事例は、産後うつからか暴力を振るってくる奥さんの精神の安定のために子どもと一緒に奥さんの実家に里帰りさせたところ、帰ってくる予定の日に行方不明になったというもの。

警察に捜索願を出すも、やはり「場所はお教えできません」と連絡があり、さらに奥さんから依頼を受けたという弁護士が「奥様から離婚とDVで申し立てを受けました」と留守番電話に入れてきたそうだ。

男性は、奥さんの地元で弁護士に相談に乗ってもらおうとするのだが、10人ほどに当たってみても依頼を受けてもらえず、東京で弁護士を探してみたら驚くべきことを知ることになる。

なんと、奥さんの依頼を引き受けた弁護士が、所属する弁護士会に「DV男の人格異常者」が「私の依頼人女性を探しに来るかもしれない」とメールを流布していたというのだ。

そこで男性は、奥さんと共同で使用していたパソコンを調べて弁護士とのメールのやり取りを証拠として、その弁護士を告発し懲戒請求をかけると、今度は不正アクセスの容疑で警察から家宅捜索を受けてしまう。

奥さんから暴力を振るわれていた側がDVの加害者にされたあげく子どもと会えなくなる、実に怖い話である。

本書では、実際にDVを行なっていて、更生プログラムを受けている男性の話も取り上げている。

肉体的な暴力だけでなく、精神的な圧力をかけるような言葉を配偶者や子どもに向けていながら、それをDVだとは自覚していなかったというようなものは、著者も「自業自得だろうとか、読んでいて違和感を覚えるケースがあるかもしれない」と述べている。

しかしなにより、DV加害者とみなされると離婚後に子どもとの交流が制限され、離れている期間が長くなるほどに子どもとの絆が薄れていくことには、また別の問題があるだろう。

本書によれば、「親子断絶防止法」の成立に向けた関係者の動きがあり、これは離婚した親に義務を課すというより、国や自治体の責務を明らかにするものであるらしい。

法律が感情に左右されるようでは困るが、血の通わない法律の運用もまた悲劇を生むばかり。法律や制度のあり方に無関心ではいけないと、強く思わされた一冊だ。

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