2013年に施行された「いじめ防止対策推進法」。一部では「ザル法」などと酷評されているこの法律の改訂検討が続いています。

無料メルマガ『いじめから子供を守ろう!ネットワーク』では、2月7日に文科省で行われた「いじめ防止対策協議会」の様子が記されていますが、文科省と教育の現場、さらには現役の教師の間にも温度差があるようです。

傍聴記

沖縄市の中2男子が暴行され、ネットに動画が流された事件で、新たな事実が報道されています。市教委の発表では、被害生徒はその後、不登校になったが、学校や市教委は暴行されたことを知りながらも調査していなかったというのです。

さらに、この事件以前にも別の生徒が同様の被害を受けて転校していたことが発覚しました。

「見つからなければいいんだ」

「問題にならなければ無かったことにしよう」

こんなことが当たり前になっている現状こそ、問題なのです。文科省は、ここにメスを入れるだけの気概を示していただきたいものです。

2月7日に文科省の「いじめ防止対策協議会」が開催されましたので、傍聴してまいりました。

同協議会は、「いじめ防止対策推進法」(以下「いじめ防止法」)が施行された翌年(2014年)に、いじめ防止法の取組状況の検証などをするために、文部科学省が設置した有識者会議です。

昨年10月の会議までで、「いじめ防止対策推進法の施行状況に関する議論のとりまとめ」が策定されました。

今年に入ってからは、策定した「とりまとめ」を具体化するために、国の「いじめの防止等のための基本的な方針」(以下「いじめ防止基本方針」)の改訂等が検討されています。

今回の会議では、「いじめ防止基本方針」については、前回の議論の結果を盛り込んだ新たな改訂案が示され、検討が加えられました。

前回の会議の後、マスコミ報道で話題になった「いじめの解消の定義について、引き続き活発な意見が交わされました。

文科省の調査では、認知されたいじめの88.6%が「解消」したとされており、「解消率100%」と発表している教育委員会もあるなど、各教育委員会によるいじめ解消の見解の違いを是正すべく議論が進められてきました。

改訂案では、「単に謝罪をもって、安易に解消とすることはできない」として、

1. 被害者に対するいじめ行為がやんで、その状態が相当期間(3カ月目安)継続していること、かつ
2. 被害者が心身の苦痛を感じていないこと、

の両方の要件が必要とされました。

各委員からは、「夏休みなど長い休みがあるので、3カ月よりもっと長い期間が必要なのではないか」「いじめがやんで3カ月放置とならないように、毎月モニタリングをすることが必要ではないのか」など、さらに踏み込んだ意見も出ておりました。

どの程度の行為を「いじめ」と認知すべきなのか

その一方で、「(報道されて)3カ月という期間が一人歩きしている。いじめがあったらすぐに止める。それから相当期間見守るという趣旨なのに、『3カ月かけていじめを止めるのか』と訊かれた」あるいは「中には『3カ月も見守らなくてはいけないのか』という声もあった」という現場の声も紹介され、もう少し説明が必要だという声もあがりました。

また、どの程度の行為を「いじめと認知すべきか」という「いじめの認知」に関して「軽いいじめは、いじめと認めなくてもいいのではないかという意見が述べられ、意見が分かれました。

「小学校の低学年の子は、風呂に入っていなくて臭う子がいれば、すぐに『クサイ』と言ってしまう。それだけで、『子供が傷ついた、いじめだ』と親が言ってくる」という意見が紹介されましたが、「いじめの定義に該当する。そういう言葉は人を傷つけると教えるのが教育だ。いじめという言葉は使わないで指導するなど柔軟に対応するケースだ」、

あるいは、「確かに小学5、6年生になれば、臭くても何か事情があるのだろうと口には出さなくなるのだが…。ネグレクトで風呂に入れてもらえなくて、近くによると本当に臭い子もいる。そういう子には保健室でシャワーを浴びさせている学校もある」との意見が出ておりました。

そんな中で、文科省の担当者から、「軽微なものも全部いじめだとして対処すると先生方の机の上のファイルがどんどん高くなっていくことになりますが」との発言がありました。

委員たちからは、「軽微ないじめというが、裏に根が深いものがある場合がある」「一つ一つの行為は軽微でも、無視とか、からかいとか、仲間外れとか、深刻な被害になる」「先生方の負担を言っていると思うが、軽微だからと放置していて重大事態になるまで発見が遅れたら、重大事態になった場合の教師の負担は計り知れない」など、「軽微であってもいじめとして対処すべきであるとの意見が相次ぎました。

この日、改訂案は大筋で合意し、今回の検討をふまえて最終的な改訂案を作成し、その上で、公開してパブリックコメントを募集するとのことです。今年度末には、改訂後の新しい「いじめの防止等のための基本的な方針」が完成する見込みです。

「いじめが解消したか」はどう判断すべきなのか?

委員の皆様のご意見の通り、「軽微なものはいじめではないと言ってしまうことは危険です。現実の相談では、むしろ、軽微ないじめ、「遊び」とか「からかい」と思われるようないじめが、重大事態への入り口となっています。

「からかい」の段階で指導すれば、いじめを解決するのには一日もかかりません。呼んで注意すればいいだけのことなのです。先生方には「いじめ」について敏感なセンサーを持っていただきたいものです。

もう一点、今回の会議では「いじめが解消したかどうか」という議論もありましたが、被害を受けていたお子さんが、いじめがない環境で、順調に学校生活が送れる状態であれば、「いじめは解消した」と考えて良いと思います。

協議会で問題となったのは、「謝罪したから解消したと言えるかどうか」という点です。私たちは、「加害者からの謝罪」がきっかけとなって、被害者が学校に復帰できたケースに何度も出会っています。

その意味では、「謝罪ということは外せないことだと思っています。しかし、「形だけの謝罪」とか、言葉だけは謝っているが反省の態度が伴わない謝罪の場合には、謝罪してもその場限りで、いじめが続いてしまうケースがあることも事実です。

改訂案では「3カ月」という言葉も出ていますが、実際には、2週間ぐらいは毎日確認するぐらいのまめさが必要です。それでいじめが起きなければ、ほぼ大丈夫でしょう。

保護者としても、子供が被害にあったあとは、いじめが起きていないか確認し、もし起きたらすぐに学校と連絡を取り合うことが必要です。

ともあれ、教師、あるいは教育委員会が「いじめに関心を持ち続ける」ことが必要です。冒頭の沖縄市のような「放置」だけはして欲しくないものです。

なお、いじめ解消の方法については、当団体のホームページでも、解決に向けての文書の作成方法など具体的手段を開示しておりますので、参考にしていただければ幸いです。ご心配なことがおありでしたらご遠慮なくご相談ください。

いじめから子供を守ろう ネットワーク

井澤・松井

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