歌舞伎座「二月大歌舞伎」で、中村勘九郎さんの長男・七緒八くんと次男・哲之くんの2人が、兄弟そろって初舞台を迎えました。七緒八くんは三代目中村勘太郎として5歳11カ月、哲之くんは二代目中村長三郎として、3歳8カ月での初舞台となりました。

この日の演目となった『門出二人桃太郎』は実は、中村屋にとって『特別な演目。父・中村勘九郎さんと弟の七之助さんのデビューも、この『門出二人桃太郎』、しかも同じく5歳と3歳という初舞台でした。

そして「桃太郎」という役は、二人の祖父である十八代目 中村 勘三郎さんが、五代目勘九郎を名のって3歳の時に初舞台で勤めた役なのです。

後継としての子育て

今回の初舞台の様子がTVで流れていましたが、普段は天真爛漫でやんちゃな幼い二人が、いざ舞台に上がると役者として立派に勤め上げるその姿に感嘆しました。

梨園に生まれた男の子は、生まれながらにして、その後継としての人生を歩むことが決まっています。そしてまた、その母も梨園に嫁いだ者の宿命として、男の子を生むことが求められるというプレッシャーとの戦いがあります。尾上菊五郎さんの妻で女優の富司純子さんも、以前、雑誌のインタビューでその苦悩について語っていました。

梨園に嫁いだ以上、家代々伝わる芸を継承させる、次にバトンを渡すという責任があります。しかも芸を継げるのは「男の子でないと」という規律がありますから。結婚してすぐに妊娠したものですから、次もすぐにできると思っていたんです。でもなかなかできない。「次のお子さんはまだ?」「こんどは男の子ならよろしいのにね」という何気ない一言もプレッシャーになりました

出典『女性自身』2006年12月19日号

物心ついた時から芸能の家の子供として

子供たちは男の子として生まれると、幼い時から芸能の家の子供としてマネジメントされながら成長してゆくことになります。例えば、市川海老蔵さんのブログでは、麗禾ちゃんはスタンプ加工などで顔を隠していますが、勧玄くんはブログでずっと顔出しています。

また、3歳程度のときにお目見えで舞台に立ったりなど、物心ついたときから跡継ぎとしての生活をしてゆきます。

間に合いそうです。
起きて機嫌がいいのが救いです…

この日は、直前までお昼寝から起きず、ハラハラしたとか。

初お見えは、1日だけではありません。最終日の25日まで、毎日決まった時間に楽屋入りし、決まった時間に舞台へ上がる、2歳7ヶ月の勸玄くんにとっても、それを支える親にとっても大変なこと。

7日目の海老蔵さんのInstagramには「今日は帰りたい、ということで笑」と書かれたこの写真が。

父と子でも師と弟子という世界

父と子でありながら師と弟子という関係関係となる歌舞伎の世界。その稽古の厳しさは、相手が幼い我が子でも変わりません。勘九郎さんと結婚した前田愛さんが、結婚後に初めて十八代目中村勘三郎さんの厳しい稽古の様子を見た時には、思わず「あなた、これまでよく生きてきましたね」と口にしたほどだと言います。

そんな父の稽古を引き継ぐ勘九郎さんは、幼い我が子に激を飛ばすこともあるのだそう。普通の子供が発表会に出るのなら、失敗しても「頑張ったね」で済みますが、歌舞伎の舞台はそうはいきません。たとえ3歳でも、プロとして、そして名家の名前を背負って舞台に立つたねばならないのです。

しかし、いくら厳しくすると言っても幼い子供。稽古が嫌いになってしまっては元も子もありません。そうならないように、時には褒め、おだて、時には厳しく、まさにアメとムチが必要となります。

前田愛さんは、初舞台を前にした女性自身のインタビューで「子どもたちの稽古を見ていると、もう、胃が痛くなりっぱなし」だと語りました。稽古がうまくいかない時には、母である愛さんも大きな声で叱ることもあるのだそう。そしてしっかりできた時には、全力で褒めます。

相手が3歳の哲之くんでもそれは変わりません。幼い我が子へ厳しく接するには、時には心を鬼にしなければならない場面もあるでしょう。けれど、どんなに周りが配慮しても、本人がその立場を自覚してゆかねばならないということを、幼ない頃からしっかりと伝えるのも、母の役目なのです。

ほとんどの子供が自分からやりたいと言い出す

物心ついた時から稽古を始める梨園の子供たち。海老蔵さんの長男・勸玄くんもすでに稽古を始めています。

うん。
この人をしっかりと導けるように
私ももっともっと精進しよう。

実は、ほとんどの子どもは稽古を自分から『やりたい』と言い出すそうです。幼い頃から、稽古や舞台の本番、DVDなどに囲まれて育っている子供たちにとっては、それがごく自然なことのようです。

眠くないのぉ〜
五右衛門の稽古してるそうです
おいおい笑

まだ稽古を始める前の勸玄くんも、自主的に稽古をしていたようです。

学業との両立、スケジュール管理も

また、学校に上がれば勉強との両立もしなくてはなりません。遊びたい盛りの子供を稽古に向かわせ、稽古と並行して学業もおろそかにならないようにし、本番があればそのスケジュールも足されてきます。もちろん母親は、その送り迎えやフォローをしてゆかなくてなりません。

そして大切なのが、人としての教育。2月3日に放送されたフジテレビ金曜プレミアム「祝!中村屋ファミリー」でも、愛さんは芸事だけでなく、日常のしつけにおいてもしっかりと子供たちと向き合っていました。

「人から物を受け取る時には『ありがとう』」「返事の『はい』は1回」どの家庭でもある当たり前のしつけですが、世襲によりいつかは多くの人たちの上に立たねばならない息子だからこそ、徹底して厳しく、立派な人に育って欲しいという愛さんの強い思いが感じられました。

歌舞伎の世界は一般の世界とはかけ離れている部分も多く、その中で、子育てをしてゆくことは、私たちには見えない大きな苦労があるようです。厳しさと優しさを惜しみなく注いで子供たちと向き合うその姿からは、大きな愛情と覚悟が感じられ、感動せずにはいられません。

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