【次の標的は…】

昨日、驚きのニュースが報じられました。それは、「日本音楽著作権協会(JASRAC)が、音楽教室からも著作権使用料金を取る」というニュースです。

日本音楽著作権協会(JASRAC)は2日、ピアノなどの音楽教室から著作権の使用料を徴収する方針を明らかにした。

楽器の練習や指導で楽曲を演奏しており、音楽著作権管理での「演奏権」にあたると判断したという。使用料は受講料収入の2.5%とし、文化庁への届け出を経て2018年1月に徴収を始める考えだ。

出典 http://www.nikkei.com

(2017/2/2付、『日本経済新聞』より。)

【徹底抗戦の構え】

このJASRACの方針に対し、音楽教室側は強烈な反発を示しています。ニュースが報じられた途端に「法廷闘争も考えている」というコメントを出す所も出ています。既に臨戦態勢です。

音楽教室側の青木一男弁護士は、「教育からお金を取るっていうのは、音楽文化の発展に反する。法廷闘争も当然視野に入っていると語った。

JASRACが、全国の音楽教室に対し、指導や練習で使用される楽曲の「演奏権」として、著作権料を求めていることを受け、ヤマハや河合音楽製作所など、7団体が対応を協議した。

ヤマハは、「あくまで教育目的で、聞かせる目的ではない」として、演奏権は及ばないと反発している。

出典 http://www.fnn-news.com

(2017/2/2付、『FNNニュース』より。)

【レッスンから金取る? その根拠は?】

「音楽コンサートを聞く為の入場チケット代金」や「CDや音楽ファイルの売り上げ」等からは、製作者に「著作権使用料」が支払われる仕組みになっています。これが音楽関係者の収入になります。これは広く知られた事でしょう。

この仕組みの根拠は、「著作権法」という法律にあります。

この法律が無いと、勝手な演奏や違法コピー品が物凄い勢いで世にあふれ、作者に使用料金が払われません。これでは、
「何か作っても、勝手にコピーされて終わり」
「作者の意図がないがしろにされ、メッセージが伝わらない」
「作品を創る気にならない」
という流れになってしまい、学術や芸術が衰退・世の中が混乱します。

著作権法は、上記の様な混乱を防ぎ・著作者の権利を保護し・文化の発展に資する目的で作られた法律です。
この法律には、著作権の範囲や種類を明確にし、違反した場合には「賠償請求」や「使用差し止め」ができる…といった規定が盛り込まれています。

保護される著作物には、「文芸作品」「学術論文」「映画作品」など数多くの種類があります。その中に、音楽も含まれます。

一方、著作権保護ばかりを考えると、一般消費者や他製作者が萎縮してしまい、かえって世の中を混乱させてしまいます。

「何が著作権に引っかかって、どんな賠償を要求されるか分からないから、怖くて何もできない」という状態になれば、そっちの方が被害が大きいという結果になってしまいます。

それを避ける為、著作権法では「著作権の成立する条件」も定めています。これに当てはまらないものは著作権法で保護されず、著作権法の規定する賠償や差し止めを受ける事がありません。

音楽の場合は、以下の条件が問題になります。

JASRACの担当者によると、著作物利用時に著作権料が発生しないためには

「営利目的での演奏ではないこと」
「観衆から料金を取らないこと」
「演奏者に報酬が支払われないこと」

の3つを満たす必要があるとのこと。

出典 http://nlab.itmedia.co.jp

(2017年2月2日付、『ねとらぼ』より。)

JASRACの見解は、「上記の3条件を全てクリアすれば、著作権料は発生しない」となっている模様です。

今回の「音楽教室から、著作権使用料をとる」という話に関しては、2つ目の条件「観衆から料金を取らないこと」をどう解釈するかが重要になる…と専門家が見ています。
(著作権法では、「観衆」のことを「公衆」と言っています。)

JASRACが全国の音楽教室から新たに使用料を徴収する方針を決めたことについて、著作権の問題に詳しい福井健策弁護士は、

「使用料が発生するかは、教室で生徒が練習することが、著作権法の『公衆に聞かせるための演奏』に当たるかどうかがポイントだ。
例えば、お客さんに演奏を聞いてもらうケースなどはこれに当てはまる。

一方、音楽教室で、生徒が上達するために繰り返し練習することが当てはまるかというと、法律上、微妙なケースで、カラオケやダンスホールとは違い、思い切った法解釈をしているとも感じる」

としています。

出典 http://www3.nhk.or.jp

(2017年2月2日付、『NHK NEWS WEB』より。)

JASRACも音楽教室側も譲らない構えであり、専門家の間でも微妙な解釈が飛び交っています。
どういう結果になるかは今後明らかになるでしょうが、かなり難しい問題であることは確かです。

【そもそも、「JASRAC」って何?】

ところで、ここまで騒ぎになる「JASRAC(日本音楽著作権協会)」って、一体どういう組織なんでしょうか?。
ここまでの流れから見て、「著作権を管理する組織」である事はよく分かりますが…。

JASRACの事を考える前に、音楽家の事を考えてみましょう。

作詞家・作曲家の活動は、かなり創造的なものです。高い芸術性・高度な技術と才能が求められる職業です。世に出る音楽作品を創り上げる為には、膨大な努力と時間がかかります。

しかし、権利を主張し、使用者から料金を適切に徴収するとなると、全国のコンサートホールやCDショップはもちろん、ネットの世界の隅々まで監視し・調査し・請求するという作業が必要になってきます。
音楽家個人では、とても無理な作業です。そこで、その作業を代行する者として、「著作権管理団体」が存在します。

JASRACは、その中のひとつであり、最大規模の団体です。関係の深い省庁は、文部科学省所管の「文化庁」です。

例えば、毎日いろいろな音楽を流しているテレビ局ではどのような仕組みになっているのでしょうか?

実は、あれらの楽曲の使用料について、利用するごとに各権利者に支払っているわけではないです。「事業者の年間売り上げの何%かを使用料として支払う」という形での包括契約を結んでいて、JASRACは一括して楽曲の使用料を管理しています。

その後、年4回に分けて権利者に分配されているのです。

出典 https://thepage.jp

(2015.07.24付、『THE PAGE』より。)

【JASRACは、とてもありがたい存在】

JASRACに登録しておけば、監視や料金徴収を代行してくれます。また、正当な方法で著作物を利用したいとなった時も、権利者を簡単に検索できます。

これだけ表現の場が多様化した現代においては、かなりありがたい存在です。

最初に言っておきますと、私のような学術書を書く人間からすれば、JASRACがあって助かっている部分があるのは確かです。

本に歌詞を載せようと思った場合、ほとんどの楽曲を集中的に管理しているため、権利者を探す手間がない。その上、利用料はとても安い。

これが写真だったら、権利者を探すのに一苦労、許諾を得るやりとりに時間がかかる。その上で、1点何万円といった高い使用料を請求されることも珍しくない。採算が合わず、写真が不掲載になることもある。

有料の講演でテレビCMの動画像を使おうものなら、権利関係が入り組みすぎて、手間と費用は写真の比じゃない。

出典 http://withnews.jp

(2017年1月10日付、『withnews』より。国際日本文化研究センター・山田奨治教授のインタビュー記事から引用。)

【一方、世間の評判は悪い】

「JASRACの存在はありがたい」という意見もありますが、「JASRACは酷い」とする評判も数多くあります。

主な原因は、「そんなところからも料金取るの?」と言いたくなる様なニュースが度々報じられ、「JASRACは、金を取る為なら、どんな事でもやる」という「守銭奴イメージ」が強いからだと思われます。
今回のニュース「音楽教室から料金徴収」についても、同じイメージが付いて回ります。

JASRACは著作権管理団体なので、監視や料金請求が仕事です。正当な行為なのですが…。仕事の性質上、好意的に見られにくいのも事実です。

JASRACは2016年6月7日、BGMを利用していながら、音楽著作権の手続きが済んでいない187事業者、212店舗に対して、全国30か所の簡易裁判所にそれぞれ民事調停を申し立てた、と発表した。

調停を申し立てた、すべての店舗のうち、じつに132事業者、151施設が美容室だった。

出典 http://www.j-cast.com

2016/6/9付、『J-CASTニュース』より。

CDや録音テープなどは、かつてはディスコやダンスホール、ライブハウスなどの音楽を活用する施設を除いて、BGMとして自由に使うことができた。

それが1999年の著作権法改正(付則第14条が廃止)で、それまでレコードやCDなどをBGMに使っても使用料の支払いを免れてきた喫茶店やホテルなどからも徴収できるようになった。

またJASRACの楽曲管理は、法改正後の2002年には有線放送事業者からまとめて徴収するケースが9割を占めていたが、12年には6割弱にまで下落。CDの普及などで有線放送の利用が低下したため、思うように徴収できなくなった。

こうしたことから、JASRACは事業者(店舗)ごとに新たな契約を結んで、著作権使用料の徴収を強化しているようだ。

出典 http://www.j-cast.com

(2015/6/21付、『J-CASTニュース』より。)

上記ニュースの様に、法律の改正に伴って・今まで徴収していなかったところから・規模の大小に関係なく料金を徴収する…という話が多数報じられました。

これらのニュースを見たネットユーザーから、「カスラック」という不名誉なあだ名を付けられた事は有名な話です。

「携帯音楽プレーヤーで音楽を流せないとは厳しいですね」
「BGMに課金するのはやり過ぎだと思うけど......」
「ただのBGMなのか、客を呼ぶコンテンツなのかは明確でない。でも、そこは線を引かないと」
「よくこんなの調べられるな。カスラック暇なのかwww」

などと、JASRACに対して批判的な声が寄せられている。

出典 http://www.j-cast.com

(2016/6/9付、『J-CASTニュース』より。)

【保護される側からも、疑問の声が】

また、一般ユーザーだけでなく、製作者・アーティストの側からも「JASRACに対する疑問の声」が出た事があります。ここでは、2例ほど紹介します。

先ずは、シンガーソングライターの「しほり」さん。アニメソングやゲーム音楽の作り手としても有名な方です。水樹奈々さん・中川翔子さん・ももいろクローバーZなど、多くの歌手に楽曲提供もされています。

ところが、数多くカバーされる一方で、当のしほり氏が手にする金額は微々たるものだ。昨年3月の配分は、イベント使用料が2531円、ライブハウス使用料に至っては0円だという。
これはJASRACが定めている「包括的利用許諾契約」に原因があるようだ。

JASRACはライブハウス等と本契約を結び、楽曲使用料を徴収する。そして、楽曲の著作権を委託しているアーティストに再配分する仕組みを採っている。

ところが、楽曲を使用したライブハウスがJASRAC側の無作為に抽出・集計する「モニター店」に該当しなかった場合、ライブハウスの申請の有無に関係なく、その使用料はまったく払われない問題点があるのだ。

なお、未払いの使用料については、集計に引っかかったアーティストに割り振って支払われているそうだが、実際は不明となっている。

出典 http://news.livedoor.com

(2015年8月21日付、『livedoor NEWS』より。)

次は、有名バンド「爆風スランプ」のメンバー「ファンキー末吉」さん。彼は自分のブログで「JASRACとの訴訟」についての想いを綴っておられます。

『ファンキー末吉支援者の会』によると、ファンキー末吉さんはこれまでJASRACから三か月に一度、おおよそ二百万円から四百万円の印税支払いをうけていた。
しかし、2009年9月にトラブルが発生して以降はその支払額が三十万円から六十万円程度に激減したというのだ。

本人はあくまで「JASRACが故意に印税分配を減らすということをするとは思わない」と断っているらしいが、ここまでタイミングよく不自然な現象が起こると「みせしめではないか」という疑念を抱く人も多いのではないだろうか。

出典 http://getnews.jp

(2014.01.11付、『ガジェット通信』より。)

【独占禁止法違反の疑いで、裁判になったことも】

著作権管理団体は、JASRACの他にも存在します。そこには、同様のトラブルの話があるのかも知れません。
ただ、JASRACの規模がズバ抜けて大きく、問題がJASRACに集中しやすいのは事実でしょう。

この「規模が大きすぎて、実質は独占状態」との批判から、独占禁止法に関わる裁判になった事もあります。裁判の結果は「独占禁止法違反の疑いあり」。

【詳報】JASRACが最高裁で「敗訴」 放送局との契約で新規参入業者を「排除」

日本音楽著作権協会(JASRAC)がテレビ局などと結んでいる契約方法が、独占禁止法違反(私的独占)にあたるかどうかをめぐって争われた裁判で、最高裁第3小法廷(岡部喜代子裁判長)は28日、JASRACの行為には「他の事業者の市場参入を著しく困難にする効果がある」と認める判決を下した。

この最高裁判決によって、JASRACと放送事業者が結んでいる「包括契約」が、独占禁止法の禁止する「私的独占」にあたるかどうかを、公正取引委員会(公取委)があらためて審判をすることになった。

出典 https://www.bengo4.com

(2015年4月28日付、『弁護士ドットコム』より。)

【演奏家に対するリスペクトが無い】

また、演奏家などに対するリスペクト(敬意・尊敬の念)が感じられないのでは?…という話も聞きます。

有名な話としては、「雅楽(ががく)」に関するものがあります。「雅楽」とは、日本に古くから伝わる伝統音楽で、お正月の時期や神道行事などでよく耳にする音楽です。

この雅楽に対する「JASRACの対応」が問題視され、大きく報じられました。

日本古来の伝統芸能「雅楽」を演奏したら、日本音楽著作権協会(JASRAC)から著作権料を求められた――。雅楽演奏家の男性がツイッター上でこんな投稿をした。

千年前の作品に使用料が発生するのか、と驚いた様子だ。法律に照らし合わせても、著作権の保護期間の対象外なのは明らか。演奏家本人が、そのてん末を語った。

出典 http://www.j-cast.com

(2012/12/13付、『J-CASTニュース』より。)

この騒動に巻き込まれたのは、雅楽演奏家の岩佐堅志さんです。2012年9月に兵庫県西宮市で開催した雅楽公演に関し、JASRACから「著作権使用料を申告しろ」と言われた…とのこと。

岩佐さんが西宮公演で演奏したのは、全て「古典雅楽」であり、新作ではなかったそうです。約1000年前の楽曲ということになります。

著作権法・第51条では、「原則は、作者の死後50年間は著作権が存続する」としています。1000年前の作品ともなれば…法的にも無理のある話に聞こえますし、普通に考えても理解に苦しみます。

JASRACを名乗る若い男性から12月12日に電話があり、西宮の公演について「著作権使用料の申告はされましたか」と聞かれたという。

過去2回、同様の問い合わせがあった際には「雅楽に著作権はありませんよ」と答えて収まったが、今回は違った。
相手は「たとえ著作権フリーでも書類は提出してもらいます」「演奏した曲を教えてほしい」と食い下がる。

しかも電話口では「ががく」を「がらく」と言い間違えており、岩佐さんは不信感をもったようだ。再三「雅楽に著作権料は発生しない」と説明を続け、最終的に相手は「今後は(書類を)出すように」と言い残して電話を切ったという。

出典 http://www.j-cast.com

(2012/12/13付、『J-CASTニュース』より。)

「演目内容を調査したわけではない」「雅楽の読み方すら間違っている」という辺りから考えてみると、「著作権管理団体としては、認識が甘いんじゃないか?」「何か勘違いをしていないか?」との疑義を持たれても仕方ないでしょう。

最終的には、岩佐さんにJASRACから謝罪の電話があり、岩佐さんも「特に怒っているわけではありません」となって、収束をみた様子です。

【まとめ】

これだけメディアが発達した現代において、スムーズな作品の流通を実現する為には、著作権管理団体は必要です。そうでないと、音楽家や演奏家の報酬に混乱が生じますし、文化の発展も阻害されてしまいます。

その最大手として存在しているJASRACは、社会の役に立っており、責任の重い存在でもあります。
しかし、多くの疑問点を指摘される団体である事も事実です。

今回の「音楽教室からの徴収騒ぎ」については、まだ騒動が始まったばかり。これからどんな展開になるかは分かりませんが、かなり難しい問題である事は確かです。

管理や規制は大事ですが、やり過ぎになれば本末転倒です。今回の騒動によって、JASRACは変わるのか?。注視したいところです。

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