記事提供:日刊SPA!

AV女優を題材にした、これまでにない意欲作が刊行された。題して、「うちの娘はAV女優です」(幻冬舎)。

著者はAVメーカー広報を経てAVライターに転じたアケミン氏。作中には、“親公認”のAV女優10名が登場し、それぞれの物語はアケミン氏の寄り添うような視線で綴られている。十人十色の人生模様は、どこまでもリアルだ。

これまで語られることのなかったAV女優の親子関係を、直に取材・執筆して向き合ってきた彼女は何を思うのか――アケミン氏に聞いた。

――まず、本書を執筆するきっかけからお聞かせください。いつ頃から、「親公認」のAV女優の存在に気づき始めたのでしょうか。

アケミン:ここ3年くらいでしょうか。何気ない会話の中で「親がこの仕事を知っています」「応援してくれています」という女優さんの話を聞く機会が増えてきたんです。

私自身、AV業界で仕事をしていることを両親も知っていますが、いい顔をされない時期があった。

この業界で働いているとマンションの審査も通りづらいし、裏方の私でさえなにかと「社会の壁」を感じることがあったのに、なぜ彼女たちは人生のハードルが上がる選択をわざわざしたのか?

同業者として、同性としてその話を聞いてみたい、そもそものきっかけはそんな単純な好奇心です。

ただ、この手の話はエロくないので、通常の男性誌のインタビューではカットする部分。このテーマを書ける場所を探していた際に色々とご縁があり、幻冬舎plusさんで連載することになりました。

――「うちの娘はAV女優です」というタイトルを最初に見たとき、「時代が変わって、親が寛容になり、一緒に応援するようになったのか」と思ってしまいました。

ところが、そんな単純な話では全然ない。それぞれが複雑な事情や人間関係を抱え、葛藤する様が描かれています。どうやってここまで、赤裸々に語らせたのでしょうか?


アケミン:どうやって…といっても強要してませんよ(笑)。何度か取材をしていて、「この子なら話してくれそうだな」という女優さんにお願いしました。

親公認の話をできる女優さん自体、激しい競争を生き延びた上位エリート層と言われるかもしれません。

ここに出てくる女のコでグラビア組んだら、かなり豪華なエロ本ができると思うぐらいの人気女優ばかり。全国紙や地上波にも顔出ししている女優さんなので、やはり皆、肝が座っていましたね。

AVに出たら結婚できないとか、就職が難しいとか、人生の選択肢が狭まってしまったり、世間の風当たりもまだ強いこともある。そんな中、「周囲の反対を押し切ってまでやりたいことって人は一生の中で何回あるんだろう」ということを考えました。

親サイドとしては、自分のこれまでの価値観や常識を超えたものを付きつけられたとき、人はどう動くのか、そんな風なことも思っていました。

――登場するAV女優の多くが芸名ではなく仮名となっています。そんな中、実際の女優名義で登場した丘咲エミリさんの回は、特に驚かされました。

アケミン:幻冬舎plusでの連載時では全員仮名でした。プライバシーの配慮と同時に、女優名を全面に出すとパブ的な要素が強くなり、語る言葉も変わってきてしまう。

「人気や知名度に引っ張られずに彼女たちの価値観や考え方を読んでもらいたい」という編集サイドの意向もあったので。

丘咲さんはウェブ公開時にツイッターでも「これは私の話です」と自らツイートしてくれました。

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彼女は、昨年秋に引退したのですが、引退作「本気で無敵の引退 デビュー5周年!マル秘解禁240分SPECIAL」ではスッピンでセックスしたり、親友のニューハーフ美女と絡んだり、ガチで童貞マネージャーに筆下ろししたりと、どこまでもさらけ出しているので、彼女の生き様、いやイキ様もぜひ見ていただきたいです。

◆恵比寿マスカッツが果たす意外な“役割”とは?

――「恵比寿マスカッツ」のようなAV女優のアイドル化がもたらした影響も大きい、と触れています。

アケミン:マスカッツのメンバーの中には親御さんがライブに来るという子もいます。昔、お母様があまりにノリノリで踊っていてファンの間でも有名になってる、なんて噂もありましたね。

本書でも取り上げた副キャプテンの川上奈々美ちゃんは、デビュー半年後に親バレして、一時は家族とも疎遠になったといいます。

けれどマスカッツや映画、舞台の活動とタレントとしての活動をきかっけに信頼関係を回復して、今ではお母さんが励ましてくれている、そんな親公認の説得材料となっている例もある。

ただ、親を説得しても、完全に親が納得しているわけでもない。それを感じ取っている女優さんも多いです。一般的に親が望む「結婚して、出産して」という王道の生き方と自分の意志が食い違うこともある。

「私もいつかはパパママの顔を見たいけど今まだ会えない」

という「親不孝ベイベー」というマスカッツの曲のフレーズが胸に刺さってくるところです。

――読み進めていくうちに、昨今AV業界に大ダメージを与えた「強要問題」とは、ずいぶん異なる世界観だと感じました。アケミンさんはたくさんのAV女優にインタビューをしてきた経験から、どのように考えますか?

アケミン:確かにAV業界は出演強要の被害がでやすい構造であったのは事実ですし、改善していかなくてはなりません。ただAV女優になるきっかけは様々だけれど、自分の意志で職業として向き合っている女優さんがいる、これもまた一つの事実です。

本書でも「今はAVって軽い気持ちでやるもんじゃないと思ってる。1本出たくらいでAV女優を名乗らないでほしい」という女優さんの言葉がありました。

彼女たちの葛藤や割り切れなさを含めて、その言葉をできるだけそのまま、一つ一つ丁寧に伝えられたらと思います。

――本書を書く前と今とで、「AV女優」に対する考え方は変わりましたでしょうか?

アケミン:彼女たちの生い立ちを聞くと、中には、貧困や親のDV、ネグレクトなど今の社会の問題も浮かび上がる例もあります。ただその不運を不幸としないたくましさ、圧倒的な自己肯定感の強さを感じました。

普段から裸を見せる仕事というだけあって自分の辛いところ、恥ずかしいことも言葉にできる彼女たちの言語化能力の高さにも驚きました。

ちょっとぶっ飛んでいると思われがちなエピソードもありますが、そもそも普通ってなんだろう、世間の目ってなんだろう、とも考えさせられました。いろんな性癖の人、いろんな事情や背景を抱えた人が集まるAV業界の複雑さとおもしろさを伝えたいですね。

そしてなによりAV女優は「誰でもできる簡単なお仕事」ではない、と改めて思いました。そんな女優さんたちの心意気、ちょっと固くいうと「表現者としての意識」がAV業界を変える力になるとも考えています。

普段、何気なく観ているAVの裏側には、人間くさいドラマが渦巻く。

過激だったり、センチメンタルだったり、誇らしくなるようなものだったり…ページをめくる指が思わず止まってしまう箇々がとにかくたくさん登場するのだが、そこにあるのは圧倒的なリアリティだ。

女優、そして家族にとってのAVとはいかなるものなのか――ぜひ、体感していただきたい。

・著者プロフィール/アケミン

1978年生まれ。幼少期をアフリカ、メキシコ、ブラジルで過ごす。大学卒業後、映像翻訳のアシスタントや派遣事務を経て、2003年AVメーカー「DEEP'S」に就職。

その後、「アイデアポケット」に転職、09年退社、フリーライターに転身。現在はスポーツ新聞でのコラムや男性誌でのAVレビューを主に執筆中。またイベント「スナックアケミン」も不定期開催。本書がはじめての著作となる。

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