小池都知事の大胆公約「満員電車ゼロ」

都内に勤務するサラリーマンに「日々の生活のストレスは何ですか?」と尋ねたら、多くの人が真っ先に答えるであろう「満員電車」。最近では場所を選ばない働き方などが注目されつつも、まだまだ日本社会に根強く残る大きな課題です。

そんな中、昨年8月に東京都知事に就任した小池百合子知事は、その公約の中に大胆にも「満員電車ゼロ」を掲げました。

この「満員電車ゼロ」について小池都知事にアドバイスをしているのは、書籍『満員電車がなくなる日』の著者であり、交通コンサルティング会社・ライトレールの阿部等社長。

小池都知事と阿部氏は一体どのように「満員電車ゼロ」を実現しようとしているのでしょうか?今回はそのポイントをざっくり4点にまとめてみました。

1. 車両もホームも2階建てに

「満員電車ゼロ」に向けた最も大きな施策が、2階建て車両です。ただし、現在国内で見られる上記のような2階建て車両はドアの数が少ないので、定員は増やせても乗り降りの際に混雑してしまいます。

そこで阿部氏が提案しているのは、このように車両の2階にもドアを配置し、さらにホームも2階建てにすること。

こうすることで、定員の増加スムーズな乗降が同時に可能になります。

2. 出発時のロスタイムをなくす

次に注目すべきは、電車の出発時に発生しているロスタイムです。電車は現状、青信号になってから以下のようなプロセスを経て出発します。

1)青信号になる
2)車掌が発車ベルを鳴らす
3)ドアを閉める
4)周囲を確認して出発

特に違和感のないプロセスだと感じるかもしれませんが、冷静に考えれば、青信号になる前にドアを閉め終わり、信号が変わると同時に動き出せればより効率的に出発できます。

これが実現できていない原因の1つは、効率を追求しないアナログなリスク管理にあると阿部氏は言います。

実際に最新の車両にはトラブルを検知して電車を自動停止させる仕組みが備わっていますが、念には念を…ということで、まだ出発前に駅員が目視で安全確認をするフローが根強く残っています。

鉄道会社にとって乗客の安全を守ることが最重要事項であることは間違いありませんが、効率を考えずにリスク管理ばかりしていても一向に満員電車はなくならないのも事実です。

3. 安全に車間距離を詰める

また、阿部氏は前の電車との車間距離を詰める余地も大きいと主張します。

例えば、ブレーキの性能向上。もしこれが実現できれば、

ブレーキの性能が向上する
→すぐ止まることができる
→前の車両との車間距離を詰められる
→電車の数を増やせる

といった流れで、より効率的な運行をすることができます。これは高速道路を走る車をイメージしていただければ理解できると思います。

また、車間距離を詰めるためには(安全性を確保できる範囲で)車両の速度をできる限り上げることも必要です。

しかし、現状の信号システムは細かく車両のスピードをコントロールすることができないので、安全な速度の上限とは乖離した(遅い)スピードで走っていることも多いのだそうです。

きめ細やかな車両スピードの調整ができる信号システムをつくることで、上記理論と同様、結果として電車の運行本数を増やすことができます。

4. 停車駅を分散させるダイヤ

最後に阿部氏が提案しているのは、選択停車ダイヤです。

これは西武鉄道などで取り入れている「千鳥停車ダイヤ(千鳥=互い違い)」に近い概念ですが、電車の停車駅をずらして混雑を分散させる手法のことを指します。

例えば、これまでの「急行」「快速」「各停」といった運行種別を撤廃し、それぞれを「快速A」「快速B」「快速C」のような形に変更します。その上でA〜Cの電車が交互に停車駅を設けていきます

渋谷のようなターミナル駅に停まらない電車も出てきますが、あえてこうすることで全体として線路を走る電車の数を増やせるのだそうです。(この詳細なシミュレーションは複雑なため、今回は割愛します)

また、すべての電車が快速になれば停車の頻度に差がなくなるので、電車が詰まったり、追い越しをすることもなくなります

課題は山積み。でもやっぱり期待したい「満員電車ゼロ」

要点のみではありますが、「満員電車ゼロ」の実現方法、なんとなく理解できましたでしょうか?

実際のところ、これらの施策を実行に移すことを考えると、まだまだ課題は山積みです。上に書いたような「安全性」と「効率」のバランスをどう取るかという問題もありますが、それ以上に厄介なのは、満員電車は鉄道会社にとって悪いことではないという事実。

1回の運行であれだけ多くの乗客を収容できているというのは、言い換えれば利益効率の良い状態なのです。公的資金の援助などがない限り、鉄道会社側には莫大な費用をかけてまでその状況を改善する理由がありません。

しかし、こうやってできない理由を並べるのは簡単です。きっと小池都知事は、さまざまな課題を認識した上で「満員電車ゼロ」を公約に掲げているはず。毎日の通勤電車に疲弊するサラリーマンの1人として、これからの手腕に期待したいと思います。

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