「この子は唇がまだ不完全な状態だね」と、お医者様に言われたのは、妻が妊娠5ヶ月の時でした。

ただ、その時は「まだ、早い段階だから、これから形成されるかも知れないし、あまり気にしないでね」とのこと。元来、能天気な自分と妻は「口唇口蓋裂」という言葉自体知らなかったので、あまり気にせず生活していました。

しかし、妊娠7ヶ月近くたっても、唇の状態は不完全のまま。

お医者様から、「口唇裂が認められますね。口蓋裂はエコーだと分からないから、産まれてみないと分からないかな」と宣告されました。そこで初めて、口唇口蓋裂の病状を調べて、不安になる毎日でした。

妻は「原因が自分にあるのではないか」と自分を責めていましたが「口唇口蓋裂に原因は無いから、気にしないようにしよう」と毎日なぐさめていました。ですが、どうしても考えてしまうのでしょう。妻は泣きながら自分に謝ってくる日々でした。

健康に産まれて来るだろうと、勝手に決めていたので、不安はありました。

手術のこと、専門的な病院を探すこと、お金のこと…。

あれこれ考えましたが、産まれて来る子をちゃんと愛してあげられるのか、というのが一番でした。妻には、不安を与えないようにしていたのですが、ふとした時に涙が出てくることもありました。

そこから、3ヶ月たち、我が子の唇は形成されないまま、妻は出産のため、里帰りをしました。

精神的にも不安定なままだと、出産にあまり好影響を与えないということで、二人とも「まずは無事に産まれる」ことだけ考えようと話をしました。「それを一番に考えよう」と約束して、妻を送り出しました。

そして妻が実家に帰ってから、10日ほどたった時、夕方に電話が。陣痛が始まって、病院に向かうとの連絡でした。立会い出産を希望していたので仕事を急いで切り上げ、病院へと急ぎました。

病院へ着くと、まだ分娩室ではなく、簡易ベッドの置いてある待機所で、妻が苦しそうに寝転んでいました。「元気で産まれてくるといいね」と腰をさすりながら、陣痛のペースが速くなるのを待っていました。

しばらくすると、分娩室へ。初めての出産、立会い出産…。

自分は何をしていいものか。できることは腰をさすることだけでした。そして分娩室に入って27時間後、吸引分娩で、ついに我が子が産まれました。

産まれてきてすぐに思ったのは、ただただ愛おしいという感情。

唇も口内も不完全の状態の我が子ですが、一生懸命産まれて来てくれたことに感謝しました。元気な男の子でした。

生後3ヶ月の時に、口唇裂部分の縫合手術。1歳1ヶ月の時に口蓋裂部分の手術を行ない、今では親の自分もたまに忘れてしまうくらい、キレイに治りました。

これからも、病院のお世話にはなるのでしょうが、元気に育ってくれています。産まれる前の不安は何だったんだろうと言うぐらい、可愛い我が子。これからも家族を明るくしてくれたらいいなと思っています。

著者:Norihito
年齢:34歳
子どもの年齢:3歳10ヶ月

父として、旦那として経験してきた出産や、子育ての事を書いていければと思っております。

※プロフィール情報は記事掲載時点の情報です。

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