「子育てが楽しくない、ツラいと思ったことがある」ママは約9割(※)。

昨年、放映され大反響を呼んだNHKスペシャルの書籍版『ママたちが非常事態!?~最新科学で迫るニッポンの子育て~』(ポプラ社)は、番組では紹介されなかった情報や取材の裏話も盛り込まれ、信じがたいほど追い詰められているママたちの悲痛な叫びが伝わってくる。

では現代の子育てがそこまで辛く苦しくなったのはなぜなのか?本書はその原因に科学の視点で迫った番組内容をもとに具体的な理由をわかりやすくまとめている。

たとえば、MRIを用いた実験によると産後の母親の脳は30カ所以上が肥大して育児に必要な脳力がアップする。しかし一方で、出産と同時に女性ホルモンが急低下することで「不安」と「孤独」を感じやすくなる。

子育てという大切な仕事に取り組む母を、不安や孤独にさせる仕組みが備わっているのはなぜなのか?

それには、700万年前、チンパンジーから枝分かれした人類が、非常にか弱い存在だったことが関係しているという。チンパンジーのように強靭な筋肉もないし、木登りも得意ではなく、肉食獣に狙われて命を落とすことも多かった。

そのため、子どもを次々に産む必要があった。今も太古の人間の育児を続けているアフリカのバカ族は、自分の子も他人の子も関係なく、大人なら誰の子でも世話をする「共同養育」を自然のこととしておこなっている。

これは、多くの子どもをちゃんと育て上げるため、700万年前に私たちの祖先が獲得した子育て戦略なのだ。女性が母親になると不安や悩みを言い合えるママ友を欲するのも、本能的な欲求といえるだろう。

子どもの育てにくさにも科学的な理由がある。

たとえば「夜泣き」。まだ生まれる前の母親のお腹にいる胎児は酸素を消費しながら生きているため、母体が多くの酸素を必要とする日中はなるべく寝て夜に起きることが多い。

つまり母親に負担をかけないためのリズムが産後も続いてしまうと、夜に目を覚ましてしまうのだ。夜泣きは赤ちゃんのママに対する思いやりの名残だと知るだけでも、少しは気が楽になるのではないだろうか。

「人見知り」は脳が発達している証拠で、「イヤイヤ期」は我慢できない未熟な脳の仕組みによって起こるもの。イヤイヤ期を乗り越える「抑制機能」を育てるためには「いい聞かせ」が効果的だという実験もわかりやすい事例で紹介されている。

産後のイライラの原因は、出産時に大量に分泌される愛情ホルモン「オキシトシン」が、子育てを邪魔する者に対して攻撃性を増すホルモンに変わるという説明も経験者なら納得できるはずだ。

最新科学によって解明している男の脳の育児による変化も興味深い。赤ちゃんに触れ、育児をすればするほどパパもオキシトシンが増え、そのオキシトシンが男の脳をイクメンに変えるのである。

母親と赤ちゃんの“生き物としての仕組み”がわかれば、状況改善につながるヒントにもなる。子育てがつらいのは自分のせいではない。本書でそのことを知り納得するだけでも気持ちがぐんと楽になるだろう。

(※NHKの会員サイトNHKネットワーククラブの0~3歳児のママ868名のアンケート結果)

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