カフェインの覚醒作用を期待して、コーヒーやお茶を活用しているという人は少なくないだろう。しかし普段の生活において、カフェインを「薬物」として認識している人が、どれだけいるだろうか。

『カフェインの真実』(マリー・カーペンター:著、黒沢令子:訳/白揚社)を読んで改めてカフェイン含有の商品のパッケージを眺めてみると、私自身あまり意識していなかったことに気づかされた。

例えば医薬品や眠気覚ましを標榜している清涼飲料水であればカフェインの含有量が明記されているのに対して、コカ・コーラなどのドリンクには原材料に明示されているものの含有量は不明で、コーヒーやお茶にいたっては栄養成分表示にも見当たらない。

本書によれば、かつてのコカ・コーラには現在よりも多くのカフェインが添加されており、1906年に米国農務省科学局(現FDA)が「依存性のある毒物」として規制に乗り出し裁判になったという。

しかし、コーヒーに関しては規制の対象にならなかった。その理由は、コカ・コーラはカフェインを「添加」しているのが問題であって、コーヒーやお茶に含まれているカフェインは「元から備わっている自然の成分」だからだそうだ。

この裁判ではコカ・コーラ社側が勝利したものの、100年以上を経た現在に至ってもカフェインを取り巻く規制は複雑な様相を呈したままとなっており、世界アンチ・ドーピング機構と国際オリンピック委員会はカフェインを使用禁止薬物のリストに入れていない。

上限を設けると、日常のカフェイン消費量でも罰則対象になってしまう可能性があるからだ。

では、そもそもカフェインとは何なのか。

科学的には「微小な結晶構造を持つメチル化キサンチン」と呼ばれる化合物であり、訳者によると日本国内では植物からの抽出物に限り使用が認められているそうで、著者も尿酸を主成分に生成される合成カフェインが嫌いな人は、日本の飲料を買うよう勧めている。

そしてカフェインの薬理作用は、覚醒作用や集中力を高めるだけでなく、筋力増強といった身体能力の向上にも効果があり、本書には米軍が「サージ(急襲攻撃のための増員)作戦の準備」に用いた際の研究結果や、アスリートが国際大会などで活用している事例が載っている。

一方、強い不安感やパニック発作のような副反応が起こる人もおり、カフェイン常用者が摂取を中断すると薬物特有の離脱症状(禁断症状)として、頭痛や筋肉痛、うつ状態に無力感などを伴うとされる。

このようなカフェインを私たちが上手に活用するには、コーヒーやお茶だとカフェインの濃度にバラつきがあってコントロールが難しいことから、著者は独自に「標準カフェイン量(SCAD)」という尺度を考案し、1SCADを「カフェイン75mg」相当としている。

これを基準に、市販されているカフェインの含有量が明記されている物を用いて自分に効果的な量を探ると良いだろう。

体内でのカフェインの半減期(血中濃度が半分になる時間)は4~5時間だそうなので、就寝予定から逆算して使用する時間を決めれば睡眠の妨げになるのを避けられると思われる。

また、カフェインは習慣的に摂っていると「耐性」ができて効果が弱まるため、軍やアスリートの事例では最低2日前から、できれば1週間程度はカフェイン断ちをしてから本番に臨むという。

ただし、自身も被験者となってカフェインの離脱症状を研究した精神薬理学者は、離脱症状を抑えるために少しずつ減らしていったと著者の取材に答えているから、いきなり摂取をやめてはいけない。

ううむ、どうも締め切りを破りがちで計画性の皆無な私には、カフェインを使いこなすのは難しそうである。好きな紅茶を、リラックスするために嗜む程度にしておこうか。

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