日本人なら、お寿司屋さんが素手で寿司を握るのは見慣れた光景です。

しかし、もしお寿司屋さんの手にばい菌が付いていたりしたらと考えると、食べられなくなるかもしれませんよね。

そんな心配をしないでも食べているのは、日本食ならではのしっかりとした伝統と信頼に基づいているといえますが、それは、どのようなものでしょうか。

海外の人から見ると、フランス料理のように手の込んだものではなく、一見簡単そうに見える寿司ですが、その奥の深さに驚かされている外国人は多いようです。

アメリカでは素手が禁止されている

アメリカのニューヨーク市やカリフォルニア州の衛生局が、「完全に加熱しない食品を扱う際には、素手で触らない」という基準を出し、寿司やパン、果物などを扱う店では、トングなどや手袋を使用することが義務づけられました。

しかしニューヨークやロサンゼルスで日本食レストランを営む寿司職人たちは、「手袋をつけて寿司を握ることは困難、手袋に米粒が付くし、手の感覚が失われて適切な力で握ることができず、味も損なう」と、この規定の廃止を訴えているそうです。

ちなみに手袋使用について、「かえって手を洗わなくなる」「使い捨て手袋は、環境に悪い」「病院にいるみたいな気分だ」どの声が寄せられていて、行政側も規定内容の見直しを発表しています。

すし職人の衛生管理

お寿司を握る職人は、手を通してさまざまな料理をこしらえていきます。

世界中でも手を使ってこのように料理を仕上げていくのは、日本の寿司だけではないでしょうか。

海外の人から見ると、フランス料理のように手の込んだものではなく、一見簡単そうに見える寿司ですが、その奥の深さに驚かされている外国人は多いようです。

それだけに、すし職人は日頃から自分の手を大切にし、板場に立つときは常に衛生や清潔に気を配っています。また、ユニホームも白の上着に白い前掛けをしています。汚れが付いたらすぐわかるような清潔感にあふれています。

手酢

すし職人は、お寿司を握るのに「手酢」と呼ばれるものを使います。

これで、手が届くところに酢を入れた器を置いて、たえず両手を湿らせています。手酢には手を殺菌消毒するとともに、手のひらを冷やす効果があります。

酢が蒸発するときに手のひらの熱を奪うのです。

通常、手のひらの温度は33℃~34℃ですが、職人の手は30℃前後に保たれています。このため、手の熱で酢飯の温度が上がることもなく、粘り気が出ないので、手に米粒もくっつきません。

清潔とともにある寿司職人の修行

寿司職人は一定のフォームで丁寧に握っていますが、アッという間に握り寿司になってでてきます。

無駄がなくリズムがあり、見ていても気持ちのいいものです。そうなるにはどのくらい修行の時間をかけているのでしょう。

一人前の寿司職人になるには、10年とも、それ以上とも言われています。下積み時代にやめてしまう人が多い世界でもあります。

下積み時代には、洗い場や掃除などを徹底的に行い、10年の間に現場の空気に触れて、だんだんと魚のさばき方や握り方、お客とのコミュニケーションまで習得していくのです。

厳しい修行時代に、いくつもの決まり事がありますが、それは、いつも清潔にするということと結びついています。

使った鍋やまな板、包丁はもちろん、カウンターまで磨きます。それができなければ上に進むことができないのです。

つまり、清潔ということとともに腕を磨いていき、さまざまなことを叩き込まれているといってもいいでしょう。

清潔:日本の文化の基盤

東京オリンピック招致に「おもてなし」という言葉が使われ、今や世界共通語になっています。

日本料理は器や部屋など空間と道具などの使用によって、料理にとどまらずに、もっと日本そのものを味わってもらうことを目指しているかのようです。

そこには「清潔をベースに最高の料理を味わってもらえる」という、日本文化の特徴があることも見逃すことができません。

執筆:南部 洋子(助産師・看護師・タッチケア公認講師)

医療監修:株式会社とらうべ

<執筆者プロフィール>

南部 洋子(なんぶ・ようこ)

助産師・看護師・タッチケア公認講師・株式会社 とらうべ 社長。国立大学病院産婦人科での経験後、とらうべ社を設立。タッチケアシニアトレーナー

<監修者プロフィール>

株式会社 とらうべ

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