公共の場での授乳について論争が勃発。

近年、出生率が下がり続け、早ければここ2~3年のうちにも年間の出生数が100万人を切るのではないかとの予測もされている日本。

これについて、保育所の不足(去年の流行語大賞に「保育園落ちた日本死ね」という言葉が選出され、物議をかもしたことを記憶されている方も多いだろう)、長引く不況、男女のライフスタイルの変化など、様々な要因が叫ばれているが、この中には子育てに対する社会の不寛容も大きな要因となっているのではないか。

そう思わせられる出来事が起こり、世の中の注目を集めるに至った。

■「人前で授乳はいかがなものか」に議論

それは、1月11日の『朝日新聞』朝刊の投書欄に掲載された大学院生の(恐らく)女性の声である。

ショッピングセンターの飲食店でアルバイトをしているというこの女性は、利用客の中に多い乳幼児や小さな子供を連れた女性が、センター内に授乳室やキッズルームがあるにもかかわらず、人前で授乳をすることに対して、いかがなものかと戸惑っている。

授乳ケープを付けている人もいるが、それでも目のやり場に困るので授乳室でしてほしいといった内容をこの投書欄に投稿。

それについて、SNSのTwitter上で子育て中の女性(と思われる)アカウントが撮影した投書欄の画像とともに「こういうの、つらいなあ」と意見を表明したことで、公共の場での授乳についての論争がネット上で巻き起こることとなったのである。

やはりその多くは、

「授乳室が空いていないことも多いので仕方ない」

「赤ちゃんを優先せざるを得ない」

「授乳が不快という世の中になったのか」

「そもそも妊婦側もしたくて公共の場で授乳しているわけではない」

「昔は電車の中でも当然のように授乳していた」

など、子育て中の女性の意見に同調するものが多かったが、中には、

「ちゃんと下調べをしてから行くべき」

「このように妊婦の気持ちや状況は説明されれば理解もできるが、いきなりやられれば戸惑うのは当然ではないか」

「気持ちはわからなくもない」

など、投書欄の意見への同調もあり、はたまた、

「こんな意見を載せてしまう新聞社の判断はどうなっているのか」

という、『朝日新聞』の常識を疑う声なども見られ、様々な意見が飛び交うこととなった。

果たして、公共の場における授乳は迷惑行為なのか。また、それを行わなくて済むような状況に現在の日本はあるのだろうか。実情を確かめるべく、都内で現在子育て中の女性に話を聞いた。

「もちろん、この投書欄に投稿した人の気持ちもわからないことはないですよ。何より、授乳している本人だってわざわざ公共の場で授乳をしたいわけではないですし。とはいえ、実際はどうしてもせざるを得ない状況になるんですよね。

例えば、私もデパートには行きますが、個室の授乳室が充実しているといわれている所であっても、特に休日は常に混雑して行列ができているのが当たり前なので、諦めて帰ることもよくあります。

地域によってはこうした施設がまったくないところも多く、国立大学などで授乳室を解放しているところもあるんですけど、運よく近くにないこともありますし…。

訪れた施設の方のご厚意で場所を貸して頂けることもありますが、やっぱり全体的にこうした授乳室や赤ちゃん休憩室のような施設は不足しているのを痛感しますね。

赤ちゃんを実際に育てていない人は、こういう施設を見かけて、『そういう所があるじゃないか!』って思うのかもしれませんが。その上で授乳ケープも使って欲しくないと言われると、さすがに手詰まりだなと思ってしまいます」

やはり、授乳室だけで授乳をしろ、という意見が現状に即していない場合が多いのは確かなようだ。

そもそも授乳室とは、公共の場での授乳が迷惑にあたるからここでやれ、というものではなく、公共の場で授乳をするのにためらいがある子育て中の女性に配慮し、周りの視線を気にせずに授乳が出来る場所を提供する、というのがコンセプトのものであったのではないか。

それがいつの間にか、まるで喫煙所と同じような感覚で、授乳は授乳室でやるのが当たり前、それ以外はマナー違反である、と思う層が増えてしまったということなのかもしれない。

他人に迷惑をかける可能性があり、我慢をしてもほとんどの場合において緊急の問題が発生しない嗜好品であるタバコと授乳を同列の感覚で扱うことは明らかにおかしいと筆者は考えてしまうのだが…。

冒頭に記したように、こうした社会の不寛容が、子育てに対する大きな障壁になっている事は否めないだろう。

今回のような騒動をきっかけに、現在の育児を取り巻く環境が注目され、今以上に子育て中の女性に優しい世の中になってくれることを切に願うばかりである。

権利侵害申告はこちら