長男出産後、間もなく1ヶ月健診を迎える頃に、友人から届いたお祝いのメールを見て、私は号泣しました。

このメールが私に母親になった幸せを教えてくれました。

私の職業は助産師。長男を妊娠した時、私の子宮にはピンポン玉くらいの子宮筋腫がありました。「子宮筋腫合併妊娠」です。

妊娠20週に入り、つわりも落ち着き、秋の果物が美味しくいただけるようになったある日、夜勤をしていた私は朝方下腹部に痛みを覚え、そのまま入院することになりました。子宮筋腫が大きく成長し、妊娠に悪影響を及ぼしていました。

私が考えていた以上に事態は深刻で、その日から妊娠を継続させるための点滴治療を受けながら、3ヶ月の入院生活を送ることになりました。

点滴の副作用による不快感と付き合いながら、陣痛のようなお腹の張りに、「今日生まれてしまうのだろうか。今生まれたら、この子は助からないんじゃないか」と不安を抱えながら、その一方で「副作用なんかどうってことない。必ず守ってあげるからね」と強い気持ちも持っていました。

妊娠34週、それまで持ちこたえてきた私たちにドクターストップがかかりました。MRIの結果、子宮筋腫は長男の頭ほどまで大きくなり、更には破裂しそうになっているというのです。破裂すれば母子ともに命の危険にさらされることになります。

妊娠37週からが正期産ですから1ヶ月程早産することになりましたが、「とてもよく頑張った」と納得することができました。

「大丈夫だからね」

長男にもそう伝え、翌日、帝王切開で長男を出産しました。

長男の泣き声を聞いたときは、「ああ、良かった。元気な声で泣いてる。無事に産んであげられた」とホッとしましたが、想像していたよりもずっと冷静な自分に少し戸惑いました。

「私が今まで担当してきたお母さんは、元気に泣いている赤ちゃんを見て涙して喜んでいたけど、自分は助産師だからこんな感じなのかな?」そんなふうに思いました。

長男は出生直後は元気に泣きましたが、34週という未熟さもあり、少しすると呼吸が苦しくなってしまったようで、GCUという新生児の治療室に収容されました。

私は自分が入院している病棟から、毎日面会に通いました。私は助産師ですから、やるべきことはわかっていました。母乳も順調に出てきて、搾乳も人の手を借りることなく、せっせと母乳パックを作り続けました。

生後10日目呼吸状態が落ち着いた長男は、母子同室ができるようになりました。

ところが、「良かった!やっと一緒にいられるね!」というような喜びを私は感じることができなかったのです。

この子は自分の命とだって代えられる大事な我が子であることはわかっていました。母親としてやるべきこともわかっていました。でも、何だかとても淡々としていて、長男に対しての愛着が実感できませんでした。

「助産師だから」

はじめはそう思っていました。

でも、これでいいのか…?

長男に愛着を持てない自分に、大きな不安を感じました。でも、それを誰にも相談できないまま退院。

おっぱいから直接母乳を飲む力が弱い長男のために、毎日搾乳し哺乳瓶で与え、オムツを変えて、抱っこして添い寝して、愛おしさを実感できないまま淡々と日々は過ぎていきました。

そんなある日、友人から1通のメールが届きました。

「おめでとう!長い間本当によく頑張ったね!」

これだけの短いメッセージでした。

メールには、ニコニコ顔のそら豆のパパとママの間で、小さなそら豆のさやが揺れているアニメーションが付いていました。

「そら豆の親子だ。かわいい…」とアニメーションをながめていると、さやがパカ!っと開いて「ポン!」と赤ちゃんそら豆が飛び出して来ました。

たったそれだけなのに、それを見た瞬間、私の中から何かがブワーッ!と湧いて出ました。あんな感覚は生まれて初めてでした。止めようと思っても止められない何かです。

私は嗚咽しながら、

「良かった。無事に生まれて良かった。頑張って本当に良かった。ホントに頑張ったよね。私たちホントに頑張ったよね…。ありがとう…ありがとう」

繰り返しつぶやいて長男を抱きしめました。

とても愛おしく幸せでした。

34週で生まれてしまい、飲む力が弱いこの子を私がしっかり育てなくちゃ。出産後そういう思いでスタートを切った助産師の私は、必死になって張り詰めるあまり、ただ喜びに浸るという大事な感情を無意識にどこかに置いてきてしまっていたのでしょう。

友人からの何気ないメールは、そんな私に、無事長男を授かった幸せと喜びを実感させてくれました。

そして、助産師である前に“ひとりの母親”となったことを教えてくれたのです。

著者:助産師母さん
年齢:36歳
子どもの年齢:3歳

助産師の経験ありのママです。

※プロフィール情報は記事掲載時点の情報です。

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