記事提供:日刊サイゾー

テレビ東京 ドラマ24『バイプレイヤーズ~もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら~』

「いま、3つ事件追ってるから」

「俺も3つ」

食卓を囲みながら、6人の男が話をしている。といっても、刑事や探偵ではない。

「この間、総理大臣やったら、ゴジラに殺されたんだよ」

最年長・大杉漣がそう言って苦笑いした。

これは、大杉のほか、遠藤憲一、田口トモロヲ、寺島進、松重豊、光石研という“日本映画を支える6人”の名脇役が主演として集結した『バイプレイヤーズ~もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら~』(テレビ東京系)の一幕である。

彼らは本人役を演じ、そのタイトル通り、シェアハウスで共同生活を送る模様を描いたコメディドラマ。監督は、映画『アズミ・ハルコは行方不明』などで知られる松居大悟らが務めている。

彼らが共同生活を始めるきっかけとなったのは、中国動画配信サイトから大型ドラマ『七人の侍』のオファーを受けたからだ。

いかにも怪しげなオファーだが、制作費は日本円で3億円、世界的監督がメガホンを取り、主演には役所広司が決まっているという。

しかし、出演には条件がある。それが、クランクインまでの3カ月間、役所を含む7人で共同生活をし、絆を深めるというもの。そのために、大杉の別荘で一緒に暮らすことになったのだ。

今期の各局のドラマを見渡すと、「本人役モノ」と「共同生活モノ」が目立つ。

本作や、バカリズムオードリー若林正恭、二階堂ふみの『住住』(日本テレビ系)はその両方の要素を持っているし、「本人役モノ」はほかに山田孝之、芦田愛菜らの『山田孝之のカンヌ映画祭』(テレビ東京系)が、「共同生活モノ」は、松たか子、満島ひかり、高橋一生、松田龍平の『カルテット』(TBS系)がある。

本人役モノが多いのは、ドラマの中によりリアルさが求められているという表れだろうか?

日本のテレビドラマの特徴のひとつとして、役者のパーソナルなイメージが浸透しているというものがある。

これは良し悪しがあるが、そのイメージ通りの役柄にすれば、劇中、最小限の説明でその役柄のキャラクターが伝えられたり、逆にイメージと違う役柄を演じさせれば、そのギャップで驚かせることができるという利点がある。その究極の形が、本人役だろう。

そして共同生活は、よりそれぞれの個性や関係性を際立たせるものだ。「関係性萌え」というような言葉があるが、そういった感情を刺激させるシチュエーションだ。

本作で「中年のテラスハウスかよ」というセリフがあったが、むしろ思い浮かぶのは、アニメ『おそ松さん』(テレビ東京ほか)だ。

『おそ松さん』は、6つ子にそれぞれ強調された個性が与えられ、その個性と個性をぶつけることで魅力的な関係性を構築した。そして、いまやお笑い芸人ではなかなか作れないテレビのコント番組を、アニメで作ってしまったかのようだった。

『バイプレイヤーズ』でも、6人の個性が強調されている。

繊細で心配性な遠藤、リーダーだけどちょっと頼りなく、思い込みが激しい大杉、エキセントリックで宇宙人のように自由な田口トモロヲ、男っぽいが実は小心者の寺島、我慢と謙虚の人である松重、人懐っこくてみんなに愛される光石、というように。

彼らは、第1話からさっそくケンカをする。主役であるはずの役所が『七人の侍』のオファーを聞いていなかったことを知り、役所が出ないのであれば降りるしかないという話になったのが発端だった。

「たまにはやろうよ、みんなで主役をさ!」

という大杉の言葉に、寺島が反論したことから光石が失言をするのだ。

寺島「ちょっと待ってよ、『たまには』って何よ?俺もみんなも主役やってるよ!松重だって、遠藤だって」

光石「テレ東だろ?」

寺島「テレ朝もやってるよ!」

遠藤「テレ東の何が悪いんだ?」

光石「うるさいなあ。俺はNHKとか、キー局の話してるの」

遠藤「テレ東だって、キー局だろ?」

田口「NHKなら僕も」

光石「あんたBSだろ?」

まさに、本人役だからこそ、説明なしにできるケンカコントだ。

あたふたと家事にいそしむおっさんたち、おっさんにLINEのやり方を教わるおっさん、パソコンを“かな入力”するおっさん、おっさんに誕生日のサプライズを仕掛けようと準備するおっさん、プレゼント交換で各々のプレゼントを回すおっさんたち…。

もともと渋い役者だからこそ、その分、かわいらしさが際立つ。

エンディングでは、本人役を離れた本人自身でリアルなアフタートークも披露され、サービス満点。

物語も、10年前に6人で作ろうとして頓挫したという自主映画が鍵を握っているらしいこと、大杉が何やら企んでいるらしいこと、「この中に裏切り者がいる」らしいことなど、全方位に“仕掛け”が満載されている。

虚構と現実がないまぜになった『バイプレイヤーズ』は、もちろんこのドラマ単体でも楽しめる作品だ。しかし、ドラマや映画を見続け、彼らを知っていれば知っているほど面白い。つまり映画ファン、ドラマファンへの最高のプレゼントなのだ。

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