最近、よく耳にするようになった『クラウドファンディング』。

映画『この世界の片隅に』の制作費がクラウドファンディングで集められたり、SMAPさんに「ありがとう」を伝える為に立ち上がったファンの方々が、クラウドファンディングで集めたお金で新聞の広告枠を購入したり…クラウドファンディングは徐々に市民権を得てきたように感じております。

ちょうど4年前、ニューヨークでの個展開催費用を集める為に僕がはじめてクラウドファンディングをした時は、

「乞食行為だ!」

「ファンから金を巻き上げて、自分の活動に使っている!」と散々。

「『ファンから金を巻き上げて、自分の活動をしている』というのであれば、ライブもそうじゃないですか。チケットという紙切れを売って、その売り上げをライブの制作費にまわしているんですよ。ライブや結婚式、神社の寄進…あれら全てはクラウドファンディングです」と説明するも、『何か、いかがわしいことをやっているに違いない!』と思い込んでいる人の耳には届きませんでした。

当時、芸人仲間からも同じような声が上がって、「もったいないなぁ。自分の活動の選択肢にすればいいのになぁ」と思ったことを昨日のように覚えています。

皆で面白がってイジってしまった手前、芸人がクラウドファンディングをするのは、まだまだ先だと思います。

新しいモノを咀嚼する前にイジる行為は大変危険で、そのモノが市民権を得た時に、「昔、批判してしまった手前、今さら…」が発生して、取り返しのつかない遅れを生むことがあります。

若い世代や、新しいテクノロジー、自分が理解できないモノなどは、肯定から入ることをオススメします。

さて、このクラウドファンディング。

このクラウドファンディングという選択肢があることによって、具体的に何が変わったか?

変わったモノは山ほどあるのですが、その一つに『中間が必要なくなった』ということが挙げられると思います。

商品のアイデアがあって、その商品が欲しい人がいても、これまでなら上司の許可が必要でした。

制作費用を会社が負担するので、会社としても売れる見込みがあるモノにしか『GO』を出すことができません。

では、その《売れる見込み》という得体の知れないデータは、どこから出したかというと、過去に売れた商品の一覧表から。

この仕組みでは、当然、完全に新しいモノを作り出すことはできません。

具体的例を、自分の体験談でお話します。

「『えんとつ町のプペル』を分業制で作る!」と表明した時、出版社の反応は良くありませんでした。

良くないどころか、全然ノリ気ではありませんでした。

これまでの絵本が、そこそこ売れていたし、その作風が僕の個性として回り出していたからです。

「まぁ、出版社が乗らないなら、自費出版で出すか、自分で出版社を作って、そこから出そうかな…」

そんなことまで考えたほどです。

しかし、その旗色を変えたのはクラウドファンディング。

『えんとつ町のプペル』の制作費用を集めるクラウドファンディングでは、実に3293人もの方が支援してくださり、1013万1400円というお金が集まりました。

このお金を元手にして、制作をスタート。

一ページ目を描き上げた直後に、出版社の目の色が変わったのを覚えています。

出典 https://www.instagram.com

(※キンコン西野のInstagramより)

会社との企画書のやりとりで突破できなかった壁を、作り手とお客さんが、

「これ、欲しい人、いる?」

「あー、俺は欲しい!作ってくれたら絶対に買う」

「じゃあ、作る!」

…とダイレクトに会話することによって突破できたわけです。

こんなことが、まかり通ってしまうと、「もう、出版社は要らないじゃん!」という結論になりそうですが、実は、一番大切なのはそこじゃありません。

僕は『うまく使えるなら、中間は必要』だと思っています。

一番大切なのは、「こうこう、こういう仕組みで、もう僕は出版社が無くても大丈夫なんですけど…」という姿勢で、出版社と向き合えるようになるということ。

やっぱり、『餅は餅屋』です。

所属事務所や、テレビや、出版社や、本屋さん…これまで、何十年も積み上げてきた経験や信用は、個人が、ちょっとやそっとで追い抜けるモノではありません。

何より、それらは自分の敵ではありません。

折り合いがつかなかった時に「このクソ会社が…」となるだけで、同等の立場でキチンと交渉さえできれば、所属事務所や、テレビや、出版社や、本屋さんの経験や信用は自分のブースターとして機能し、すべて自分の財産となります。

先人の汗が自分の財産になるなんて、んなもん、使わなきゃ損です。

喧嘩するのではなく、吸収しちゃう。

お客さんとのダイレクトな繋がりは、所属事務所を出し抜く為ではなく、所属事務所と対等に話し合う為である、と。

クラウドファンディングが生んでくれたものは『対等に話し合える権利』ではないでしょうか。

僕はよく、

「吉本がこの話に乗らないんだったら、僕個人でやりますけど、どうします?」

と会社と交渉することがあるのですが、

「まぁ、個人でやってもいいんだけど、できれば会社が乗ってきてくれた方がスケールが大きくなって助かるんだけどなぁ…ていうか、乗ってくださいよ」

と内心は思ってます。

最近だと、個展を入場無料で開催する為の費用を集めるクラウドファンディングをしました。

6257人もの方から、実に4637万3152円もの支援が集まりました。

これにより個展を入場無料で開催することができて、個展の動員数が数万人になったので、吉本が仕掛けるアートイベントでは、自分の個展の動員数を材料にして、かなり強気の交渉をしています。

「その条件なら、僕はやりません」とか言ってます。

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