コーヒーチェーン「コメダ珈琲店」の創業者をご存じだろうか。「コメダ珈琲店なんだから米田さんでしょ」と思いきや、創業者のお名前は加藤太郎さん。実家がお米屋さんを営んでいたことから、「米屋の太郎」を縮めて「コメダ珈琲店」と名付けたという。

名古屋発祥、最近では関東にも進出してきた「コメダ珈琲店」は、昭和の雰囲気漂うレトロ風カフェ。スターバックスや、サードウェーブ系の最先端カフェでオシャレ疲れしてしまった女性客に「コメダ珈琲店は癒やされる」と、にわかに人気が集まっている。

『なぜ、コメダ珈琲店はいつも行列なのか?』(高井尚之/プレジデント社)は、そんな現代人を引きつけるコメダの魅力を紹介している。

「お客が長居する」経営なのになぜ儲かるのか。カフェ業界で独自路線をいくコメダワールドを少しだけ覗いてみよう。

・シロノワールの秘密

コメダの看板メニューといえば「シロノワール」。黒っぽいデニッシュパンの上に、「白い」ソフトクリームが載っていることから、フランス語の「黒い(noir)」とかけて「シロ+ノワール」と命名された。

ソフトクリームは、実は名古屋人のソウルフード。ドリンクメニューのクリームソーダやクリームコーヒーにもアイスクリームではなく新鮮なソフトクリームが使われている。

デニッシュパンは自社工場で作っていて、市販のデニッシュパンが24層から36層なのに、コメダはなんと64層ものきめ細かい厚みを持ち、上のソフトクリームが溶けて浸したときの美味しさにこだわっている。形が円形なのもコメダのオリジナルだとか。

近年、期間限定の「シロノワール」がSNS上で話題になっている。過去にはカスタードクリームをはさんで林檎をちりばめた「Ringoノワール」や、バレンタインにはバニラソフトではなくチョコソフトが載った「クロノワール」が登場した。

系列店の「甘味喫茶おかげ庵」では抹茶ソフトの載った「抹茶シロノワール」を提供。昔ながらを大切にしつつ、女性が行ってみたくなる付加価値を高めているのだ。

・ブレンドコーヒーの秘密

コメダのコーヒーは「すっきりとした香味とミルク、砂糖に負けないしっかりとしたボディ」がコンセプト。ブラックはもちろん、ミルクや砂糖をいれても美味しい味になっている。

1杯420円というブレンドコーヒーは、1杯220円で飲めるドトールコーヒーなどと比べると決して安くはない。

しかし、ある調査によると、コメダの客の平均滞在時間は約60分、ドトールコーヒーは約30分というデータがある。時間で割ると1分あたり7円と7.3円で滞在コストではコメダに軍配があがるのだ。

さらにコメダは朝11時まで無料でトーストとゆで卵がつくモーニングサービスがあり、数枚綴りのコーヒーチケットを利用すると400~760円も割引になる。

店内にある新聞や雑誌は読み放題なので、常連客のなかには新聞の定期購読をやめ、浮いたお金でコメダのモーニングを食べるついでに新聞を読んでいく人もいるとか。

さすが「お得文化」の名古屋人ならでは、こうしたサービスを活用すれば十分にお得と言えるのかもしれない。

・長靴グラスの秘密

コメダでクリームソーダを注文すると一見変わった長靴型のグラスで出てくる。オレンジジュースなどはフタ付きのダルマ型グラス、アイスコーヒーは銀色のマグカップと、他の喫茶店では見かけないユニークな容器を採用。

創業者の加藤太郎さんは、開業時に食器店から提示されたサンプルが平凡で満足できず、お客様がワクワクするような器を求めて何軒もの店を探し回ったとか。

コメダが創業した昭和40年代の喫茶店は男性客がメインで、喫煙率は最高83.7%(昭和41年)もある男臭い場所だった。そうした時代に男性客だけをターゲットにしなかったことが、このグラスからわかるという。

いまもコメダは女性が気軽に入れる明るい雰囲気で、客層も夫婦連れや家族連れが大半だ。この長靴グラスがなかったら、これまでのコメダの人気はなかったかもしれないとすると、急に立派な長靴に見えてくる。

最近は、カフェに入ってもパソコンを開いて仕事をしている社会人や、席に座ることなく持ち帰りでカップを手に出ていってしまう人も当たり前。

そんな忙しない世の中だからこそ、ホッと一息ついてゆっくりとくつろげる「コメダ珈琲店」は現代人の心のオアシスなのかもしれない。

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