去年の暮れ。

個展を入場無料で開催する為の費用を集めるクラウドファンディングを実施したところ、6257人の方から、実に4600万円以上の支援が集まった。

テレビでもこの金額が報じられ、ある番組では、コメンテーターの学者が「4600万円をどのように使うのか…」とコメントしていたが、残念だけど、学が無さすぎる。

クラウドファンディングには『寄付型』と『購入型』がある。

つまり、

「ただただ3000円を寄付します」

というのと、

「3000円支援するかわりに…」

というやつ。

僕がやったクラウドファンディングは後者で、3000円支援してくださった方には、サイン入りの絵本(えんとつ町のプペル)をリターンとしてお返ししている。

たとえば、こんなの↓

この場合だと、リターンにかかる費用は、《絵本代金+絵本の送料+配送手数料+電話代+サイトの手数料》となる。

細かく言っていくと、数千冊の絵本の保管場所や、配送作業に使う場所代なんかもかかってくる。

この場合だと、3000円の支援で、残る(自由に使える)お金は数百円だ。

リターンによっては、売れれば売れるほどマイナスになるものもある。

つまり、4600万円支援してもらったからといって、4600万円が使えるわけではない。

これが購入型のクラウドファンディングだ。

では、なぜ、クラウドファンディングをするか?

他の人はどうか知らないけれど、僕がクラウドファンディングをした理由は2つ。

一つ目は『予約販売サイト』として活用するため。

出版社から「『えんとつ町のプペル』の初版発行部数は1万部です」と言われ、その数では勝負できないと踏んで、「僕が1万冊買うので、スタートは3万部にしてください」と返した。

なぜ、「1万部買う」という勝負に出れたかというと、クラウドファンディングのリターン(サイン入り絵本)で、ある程度の見込みを立てられていたから。

「1万部を個人で買う」という駆け引きの、大きな大きな後ろ楯として、クラウドファンディングを使ったわけだ。

結果、『えんとつ町のプペル』の初版は3万部となり、発売翌日には増刷がかかったので助かった。

雑誌の取材や、テレビの囲み会見などを発売日にぶつけたので、1万部だと、雑誌やテレビで紹介された一番アツいタイミングで「絵本が店頭に並んでいない」という地獄的状況をお届けして、出版社に怒鳴り込みにいくところだった。

クラウドファンディングをした2つ目の理由は、『共犯者を作る』ということ。

実はこのこれこそがクラウドファンディングの本文だ。

購入型だと、4600万円も集めておいて、場合によっては赤字になることもあるわけで、少なくとも僕の場合は、そもそも『資金調達ツール』として機能させていない。

目を向けるべき数字は4600万円ではなくて、支援者数の『6257人』だ。

『えんとつ町のプペル展』を入場無料で開催する為に、6257人もの方が支援してくださった。

そして、この6257人という人は、高確率で個展会場に足を運んでくださる。

理由は「自分達が作った個展だから」

高野山を開いた弘法大師・空海が、面白い言葉を残している。

「伏して乞う、有縁の道欲おのおの涓塵(けんじん)を添えてこの願を相済え」

『涓塵(けんじん)』というのは、塵ほどの小さな喜捨、あるいは民衆一人一人の本心からの寄進という意味ね。

現代語訳すると、

「大スポンサーの一本釣りではなく、ほんのわずかずつでもいいから、多くの人々の気持ちを集めて高野山を作った方が絶対によくね?」

といったところ。

何故か?

回転させなきゃいけないからだ。

国から金を貰って寺を作ったところで、そこに人が集まらないと、じきに傷んで、潰れてしまう。

ハコ(人が集まる場所)を作るときは、同時に、人が集まる理由も作らねばならない。

そこで空海は、「国から貰った金で作った場所にお客さんを呼ぶのではなくて、僕たち一人一人が少額ずつ出しあって、皆で作っちゃおうよ。そしたら思い入れができるから、皆、来るじゃん」と旗を振ったわけだ。

涓塵というのは、現代のクラウドファンディングで、空海ときたら、とっくの昔に、そこに気づいてたんだよね。

そんなに、国から金を貰って巨大なハコを作りたいのなら好きにすればいいけれど、良い方向に転がることもあるだろう。

ただ、エンタメ素人の行政の皆様に頭に入れておいた方がいいのは、補助金を貰うことで『集客のチャンスを逃している』ということ。

集客が伴わないハコに付いてくるのは『返す見込みのない維持費』で、つまり、借金を作る装置を国からの金で御丁寧に作っているわけだ。

その辺りのことを70ページにわたって語っております『Discover Japan 特集:西野亮廣』が本日発売です。

イベンターさんと、集客に苦戦している店長と、政治家は全員買ってください。

以上、圧倒的なステマでした。

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