日本では、現在、ペットを飼育する家庭の方が、子どものいる家庭よりも多くなっています。その一方、平成27年度 環境省自然環境局資料によりますと、13万もの犬や猫が自治体に引きとられ、そのうち8万を超える個体が殺処分されています。

そして、自治体で殺処分される犬・猫のうち半数以上が幼齢個体、つまり離乳していな子犬や子猫という実態があります。特に犬に比べ、猫の幼齢個体割合はかなり高く、野良猫が出産するなどで保護される場合も多いことから、殺処分された猫の7割近くが幼齢個体です。

離乳前の個体は、現実的な問題として母猫(犬)がいなけば生きてはゆけません。しかし、離乳前の個体の世話をするには時間も人手も足りず、衰弱死してしまう為、殺処分の対象となってしまうのです。
そんな子猫や子犬を救う為のミルクボランティアが今、全国で増えつつあります。

ミルクボランティアとは?

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ミルクボランティアとは、最も手のかかる離乳前の子犬や子猫を一時的に預かる仕組み。ミルクボランティアに飼育を委託し、殺処分を避け、その後の里親募集へと繋げる取り組みです。

家庭で一時的に預かり、母猫(犬)の代わりとなり、ミルクをあげたり、排泄の手助けをしたりして、自力で食事や排泄ができる生後2ヶ月頃までの世話をする、つまり「お母さんの代わり」になってあげるのです。

離乳前の個体は、2~3時間ごとの頻繁な授乳が必要になることも多く、また体調も安定していない為、生きてゆく為には、本当のお母さんのように時間と手間と愛情が必要となりますが、職員ではそこまでする事は出来ません。そこで必要となるのが、ミルクボランティアなのです。

熊本市動物愛護センターでは猫の殺処分が0に

2004年に熊本市動物愛護センターが全国に先駆けてミルクボランティアの制度を導入し、猫の殺処分ゼロを実現、大きな話題となりました。この取り組みは、書籍「赤ちゃんネコのすくいかた」で読む事ができます。

また、仙台市は2011年3月の東日本大震災によって、飼い主を亡くした子猫が増えた事を受け、ミルクボランティアを導入。ミルクボランティアによって、多くの猫たちが新しい家族と巡り合う事が出来ています。2015年10月から大阪市でも導入されるなど、現在では、9つの政令指定都市でミルクボランティアが導入されています。

ミルクボランティアは小さな命と触れ合う喜びも

2015年にミクルボランティアを導入した新潟県の例を見てみましょう。

出典 http://www.pref.niigata.lg.jp

初めてのミルクボランティアの方の家にやってきたのは、生後42日目の3匹の可愛い子猫。

ミルクボランティアさんのお世話のおかげでスクスクと成長。生後50日には、おもちゃで遊ぶようにもなりました。

5月15日~6月11日の28日間で、ミルクボランティアが終わり6月11日動物愛護センターに返却しました。

出典 http://www.pref.niigata.lg.jp

途中で1匹が風邪をひき愛護センターに受診に行ったり、夜中に授乳したり、じゃれついてひっかくので傷だらけになるなど大変な1ヶ月でしたが、とても癒やされる毎日で楽しかったです!!

出典 http://www.pref.niigata.lg.jp

小さな命が消えてしまうことも

ミルクボランティアは大変ですが、子猫の可愛らしさをずっと見守ることができるという喜びがあります。しかし一方、離乳前の子猫の命はとても不安定なもの。時には、どんなに一生懸命に世話をしても、その命が消えてしまう事もあります。ミルクボランティアをする時には、救いきれない命もある事を理解していなければなりません。

動物愛護活動を続けている女優の杉本彩さんも、離乳前の仔猫を育ててきた経験を語っています。

私も20代から、離乳前の保護した赤ちゃんネコをたくさん育ててきました。

それは、ときには悲しいこともあり、たいへんなことではありましたが、喜びや感動にも満たされる素晴らしい経験でした。

ガラス細工のように壊れやすい目の前の小さな“いのち”は、すごい確率でこの世に生まれてきた壮大な奇跡だと、その“いのち”の重みを感じてきました。

ミルクボランティアをするには

ミルクボランティアは離乳前の子猫の世話という事で、条件を満たした人しか行う事ができません。例えば新潟県では、以下の条件に合う事が必須となります。

・県内在住の成年で終日世話が出来ること

・事前のオリエンテーションを受講出来ること。

依頼があったら新潟県動物愛護センターにすぐに迎えに行けること。

・動物を適正に飼育が出来る環境にあること(後日、飼育場所の現地確認あり)

最低1日5~6回(3~4時間おき)の授乳、離乳食等の給餌、排泄の補助。

・日々の健康管理で1日1回の体重測定などの記録。

・おおむね生後2ヶ月程度(固形フードが食べられるまで)
体重約800g程度になるまで飼育し、動物愛護センターに返却します。

出典 http://www.pref.niigata.lg.jp

自治体によって若干の違いはありますが、これらの条件を満たせる人は限られてきます。その為、ミルクボランティアが常時不足しているという悩みを抱えている自治体も少なくなりません。

滝川クリステルさんが立ち上げた一般財団法人 クリステル・ヴィ・アンサンブルでは、大阪市の「 子猫リレー事業」別名 「ミルクボランティア」を支援しています。この試みの興味深いところは、65歳以上の高齢者を推奨している事。

里親の条件として「高齢者はNG」という団体が多いですが、1日中目が離せない子猫の世話だからこそ、高齢者が適任であるという考えなのだそうです。

ミルクボランティアを支援するという方法も

重要な役割だとわかっていても、実際にミルクボランティアをすることができる環境の人は少ないでしょう。そんな人は、ミルクボランティアの支援をするという方法もあります。

2016年には、フェリシモ猫部が神戸市と「ふるさとKOBE寄附金(ふるさと納税)」を活用した動物愛護支援事業の推進で提携しました。「ふるさとKOBE寄附金」で集まったお金は、譲渡候補の犬猫の健康管理の他、ミルクボランティアの活動支援に使われます。

神戸市の殺処分数の多くは、野良猫の子猫です。殺処分削減のためには、不幸な子猫を生ませないための不妊手術とともに、自治体に持ち込まれた子猫のミルクボランティアと譲渡活動が重要となります。

出典 http://www.nekobu.com

人も動物も幸せに暮らせるように、私たちにできること

長年、大きな問題となっている日本の殺処分の現状。命を救うという活動が大きな役割を果たしているのはもちろんですが、もう一方で捨てられる命を減らすという面からもアプローチしなければ、いたちごっこが続いてしまいます。

家族として迎え入れた命を終生飼育する、野良猫に任な餌やりをぜず、飼い主のいない猫の避妊去勢手術をおこなうなどが最も重要です。そして今回ご紹介した「ミルクボランティア」という活動も、もっと多くの人に知ってもらい広まってゆく事で、多くの命が助かるはず。

消えてゆく命を救う為、自分にできる範囲で出来る事を見つけてゆきたいですね。

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