海外で活躍する日本人サッカー選手でスーパースターは誰かと言われれば、多くの人が本田圭佑と答えるだろう。所属クラブで勝ち取ったタイトルでいえば香川真司や岡崎慎司には及ばない。

それでも、身にまとったオーラは紛れもなくカリスマそのもの。そして、カリスマゆえに孤高を貫く本田の言動は、サッカー界はもちろん、ファンからも誤解されて受け入れられることが多かった。

知名度とは裏腹にあまりにも知られていない本田圭佑の人物像に迫った一冊が『直撃 本田圭佑』(木崎伸也/文藝春秋)である。

足掛け7年、28回にわたって著者が行ってきた本田への直撃取材、その記録は本田のサッカー選手としての強みを露にする。それはテクニックでも身体能力でもない、常人離れした精神力だ。

そして、本田と著者のスリリングな会話は全ての職業人に刺激をもたらすだろう。

本書における直撃取材の数々は2010年8月から2016年1月までの間に行われたものだ。その間に本田は日本代表とクラブチームで幾多もの紆余曲折を経てきた。

しかし、本田の発言はいついかなるときも弱気になることがない。常に本田は独特の表現で成功へのイメージを明確な言葉にしてみせる。

勝負の前に、だいたい勝負は決まっている。

出典『直撃 本田圭佑』(木崎伸也/文藝春秋)

誰よりも上にいけば、誰の言うことも聞かずにすむ。

出典『直撃 本田圭佑』(木崎伸也/文藝春秋)

僕は特に“環境先行型”ですから。

出典『直撃 本田圭佑』(木崎伸也/文藝春秋)

こうした言葉のインパクトだけが先行してしまい、本田は「ビッグマウス」と批判に晒されることも珍しくない。

しかし、これらの強気な発言に込められている本質は、目標を口にすることで自分への逃げ道をなくすというストイックさだ。

そして、本田の自己分析は「ビッグマウス」どころかむしろ極めて冷静である。

たとえば本書には何度もクリスチャーノ・ロナウドとリオネル・メッシの名前が登場する。爆発的な得点力を武器に個人でもチームでもタイトルの山を築き上げてきた二人は、現代サッカーの頂点に立つ存在である。

そして、本田は多くの点で自分が二人に遠く及ばないことを認めている。そのうえでこうも言ってのけるのだ。

めちゃめちゃ遅くて個人技であまりいかれへんみたいなタイプが、クリスチャーノやメッシを目指しても、それは自由ですよね。それを目指したときに、どういうものができあがるのかと思っているんですよ。

出典『直撃 本田圭佑』(木崎伸也/文藝春秋)

差は認めつつも諦めることはない。これは元来の性格に加えて父親から常に一番を目指せと教育されてきた生い立ちも影響しているのだろう。

それゆえに本田は自分だけでなく他人にも同じ理想を要求する。その結果、2014年ドイツW杯での「目標は優勝」という発言につながり、グループリーグ敗退後はメディアからのバッシングに晒される事態を招いた。

それでも本田は「やり方は変えられない」と言う。その愚直ともいえるほどの信念は、高級ブランドのスーツに身を包み、現役選手でありながらプロサッカーチームの運営というビジネスにまで手を広げているスーパースターとは思えないほど。

著者もまた愚直に本田の言葉を追い求め続ける。あるときはリハビリ中で居場所すら分からない状態から本田を探し、あるときはモスクワまで足を運んだうえで取材拒否をされ、あるときは本田の目に届くことも知りながら批判も厭わない。

それでもその真剣さに本田はいつでも「今日はしゃべらんよ」と言いながらも言葉を引き出されてしまう。

そう、本書に登場するのは自分の仕事に対し、どこまでもひたむきにしか向き合えない二人のプロフェッショナルなのである。だからこそ、二人の魂がぶつかり合う様はサッカーファン以外にも多くの興奮をもたらしてくれるはずだ。

ずっこけない成功なんてないんですよ。

出典『直撃 本田圭佑』(木崎伸也/文藝春秋)

そう本田は語る。挫折をむしろ歓迎し、成功への道を学べるチャンスだと捉えるメンタリティがあるからこそ本田はACミランでエースナンバーの10番を背負うサッカー選手にまでなった。

本稿執筆時点で本田は、クラブでも代表でもかつてない苦境を迎えているように見える。しかし、現状から本田がどのような学びを得て復活への糧としていくのか、本書を読むと期待せずにはいられない。

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