コンビニ業界に詳しいライターの日比谷新太さんが、業界の裏事情を包み隠さず語る当シリーズ。

今回も先週に引き続き、コンビニ経営の過酷な実態をレポートする「経営者はつらいよ」シリーズということで、放漫経営のあげく破産寸前まで追い込まれた、とあるコンビニ加盟店主のエピソードを紹介しています。

近所に競合店…その時コンビニ経営者は?

純粋な個人商店などと比べれば、安定しているようなイメージがあるコンビニ。ところが実際は、日々緊張感を持って経営にあたらないと、瞬く間に倒産や閉店の危機に陥ってしまうという、とてもシビアな稼業なのです。

今回は、とあるコンビニ加盟店主が“破産寸前”に至った顛末をご紹介しましょう。

その店舗は、開業から約10年間経過しており、日々の売上は平均の少し下というレベルでした。

街道沿いに立地しているため、朝や昼の時間帯は現場に向かう工事関係者が朝ごはんやお昼の弁当を買っていき、また夜の時間帯は同じく工事関係のお客さんが仕事帰りにビール等を購入していくのにくわえ、近隣にお住いのサラリーマンのお客さんも晩ごはんやおつまみ・お酒を買いに立ち寄るといった、どこにでもあるような典型的な店舗でした。

このお店、売上もソコソコなうえ、近隣に強力なライバル店がなかったこともあって、店主はあまり苦労をせずに10年間無事に安定経営を続けていました(言い換えると営業努力は苦手だったのかもしれません)。

しかしある日、この店舗の近隣300mほどの距離に食品スーパーがオープンしました。

食品スーパーの客層は主婦層が中心なので、この店舗の主要客である「男性」「工事関係者」などには、さほど大きな影響を及ぼさなかったのですが、ただ飲料などは価格に大きな差があるため、やがてお客さんはおつまみ・食事は従来通りコンビニで買うものの、ビールなどの飲料は食品スーパーで…というふうに、お客さんの購買行動に変化が現れました。

そうなると、この店舗の売上は徐々に下がっていきます。しかし、この“徐々に下がっていく”というのが非常にまずく、経営者として深刻な問題だというふうに捉えることが、なかなかできないものなのです。

「いつか戻ってくるよ」「まだまだ大丈夫」という甘い認識で、その店舗はオペレーション改革などを進めることはありませんでした。

購買行動が変化してしまったとしても、店舗の品揃えを変えることで、競合店との共存共栄も可能だったにもかかわらず…。

危機感の薄いコンビニ店主は、ある日ゴールデンレトリバーの子犬を購入します。

「健康のために犬と散歩したいから」という理由で、それはそれで結構なことなのですが、一度火が付いてしまった浪費癖は止まらず、その翌月には新車も購入してしまいました。

まさかの“放漫経営”発覚

ここで問題なのが、その資金源です。

コンビニ店主も含む小売業者は、お客様から一時的に消費税を預かり、銀行口座などにそのまま貯め込んでいるものですが、この店主は何を勘違いしたのか、なんとその「預かり消費税」を使って、ゴールデンレトリバーや新車を購入していたのでした。

その後、夏ごろに消費税の分納期限がやって来ましたが、銀行口座は残高不足の状態。督促が何度が来たようでしたが、店主はそれを無視していたため、ある日ついに税務署から呼び出しを食らってしまいました。

そんな店舗の危機的状況は、やがてFC本部にも把握されるに至ります。FC本部としては、資金繰りに窮した末に自己破産や夜逃げなどをされて、店舗が閉店してしまっては目も当てられないので、こういう場合には直接的な介入を行います。

つまり、この店主一家の生活費も含めた資金繰り一切を、本部がすべて管理してしまうのです。

実際このケースでは、家族が入っていた不要な保険の解約車の売却などが行われました。

いっぽう店舗のほうも、人件費を極限まで圧縮するために、それまで8人いた深夜アルバイトは1人だけ残して全員解雇に(解雇されたアルバイトは、本部から近隣の店舗を紹介されました)。

深夜の勤務は、店主がほぼ毎日一人で入ることになりました。

このように経営の健全化を図ったうえで、毎月のP/Lや資金繰り予測を行い、それを材料に税務署には税の分納を頼むとともに、近隣の信用金庫には融資の依頼を行いました。

その後、破綻寸前の状況から約1年間という期間がかかったものの、なんとかこの緊急事態を乗り切ることができました。

ちなみにこの店ですが、現在も営業を続けており、店主も最近お孫さんが産まれるなど、幸せな日々を送っているということです。

文/日比谷 新太(ひびや・あらた)

日本のコンビニエンスストア事情に詳しいライター。お仕事の依頼はコチラ→のメールまで:u2_gnr_1025@yahoo.co.jp

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