「なぜ、人に迷惑をかけてはいけないの?」

キラキラした目の子どもたちからこんなことを聞かれてドキッとしない大人がいるだろうか。とっさに「なにバカなことを」と流したり「そう決まってるの!」と頭ごなしに封じてしまったりすることもあるのでは。

しかしそんな質問こそ「子どもが大人に向けて成長していくためのハードル」と説くのが『考える力を育てる 子どもの「なぜ」の答え方』(左右社)の著者、向谷匡史氏だ。

著者は浄土真宗の僧侶でありかつ空手の道場主、さらには保護司として子どもたちに向き合ってきた。

しかも『ヤクザ式 相手を制す最強の「怒り方」(光文社新書)』(光文社)など多数“ヤクザ”シリーズを著しアウトローの世界にも造詣が深い人物でもある。社会のリアルを知り尽くしているからこそ回答は現実的。

金メダリスト内村航平氏の母、内村周子さんも、自らの子育てを振り返り本書の内容に深くうなずいたという。ではさっそく本文を紹介しよう。

質問34 なぜ、人に迷惑をかけてはいけないの?

改めて聞かれるとなかなか手強い問いではないだろうか。これまで道場の教え子たちには、他人に迷惑をかけないことを社会生活の基本として厳しく指導してきた著者。

だが仏法を学ぶうち「私たちは人に迷惑をかけなくては生きていけない存在である」という気づきに至ったという。

『迷惑』というのは、直接的な“被害”にとどまらず、周囲の手助けやお世話によって生かされているということです。

出典『考える力を育てる 子どもの「なぜ」の答え方』(向谷匡史/左右社)

食品の流通から交通、治安など、社会の動きすべてが誰かの働きによるものという意味だ。この気づきから得られた回答は、

“迷惑をかけちゃいけない”ということの本当の意味は、“迷惑をかけていることを忘れてはいけないよ”ということ。

出典『考える力を育てる 子どもの「なぜ」の答え方』(向谷匡史/左右社)

さらに「感謝を知る子どもは多くの人に愛されることでしょう」とエールを送る。

質問25 なぜ、人の悪口を言ってはいけないの?

この問いに対し、著者は親鸞の教え「悪性(あくしょう)さらにやめがたし こころは蛇蠍(じゃかつ)のごとくなり」を引き、人は生まれながらにして悪口を言わずには生きていけない、と喝破する。ではなぜ悪口を言ってはいけないのか。

その答えの一つとして、悪口は人間関係を壊すからという。つまり実益上の回答だ。

人間ですから、それが自分のワガママであっても、人間関係において好き嫌いが生じます。それはいいのです。気をつけるべきは、できるだけそれを口にしないこと。

出典『考える力を育てる 子どもの「なぜ」の答え方』(向谷匡史/左右社)

この答えは、優等生であろうとする大人の心もラクにしてくれるのではないだろうか。

本書に記されているのはあくまで著者の考えであり、100パーセントの模範解答集ではない。だがそれがいい。子どもの質問に自分だったらどう答えるか、そう考え続けることが親の成長をも促すからだ。

この他「幸せって何?(質問08)」「親の言うことは聞かないといけないの?(質問18)」など、ドキリとする質問が全部で40件。あらためて“常識”を問い直すよい機会になるのでは。

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