記事提供:おたぽる

あの大ヒットSF映画の裏側に迫る『エルストリー1976』。マニア向けなキャラクターが続々と登場する。

運命の瞬間がいつ訪れるかを予測することは難しい。人生を振り返る年齢になってから「あぁ、あの日が自分にとっての運命の瞬間だったんだな」と認識することになる。

ドキュメンタリー映画『エルストリー1976 新たなる希望が生まれた街』は、“運命の瞬間”を共に過ごしたことに後から気づいた人々の物語だ。

無名の俳優だった彼らは1976年の夏、ロンドン郊外にあるエルストリー撮影所を訪ね、風変わりなコスチュームを身に付け、新人監督が撮る一本のSF映画に出演する。

翌年、その映画は『スター・ウォーズ』というタイトルで世界公開され、メガヒットを記録することになる。

時代を経て、世代を超えて愛されることになる『スター・ウォーズ』シリーズからはC-3POやR2-D2、チューバッカといった人気キャラクターが生まれたが、本作に登場するのはもっと渋く、地味めなキャラたちだ。

帝国軍の歩兵部隊ストームトルーパー、反乱軍のパイロット、宇宙酒場に集まる宇宙人などを演じた人々をカメラは追っている。軽い気持ちでオーディションを受け、撮影所に向かい、与えられた奇抜なコスチュームを纏って数日間を撮影所で過ごした。

台本を渡されていなかった彼らは低予算のスペースオペラで、テレビ放映用だと思っており、映画史に残る作品になるとは誰も予測していなかった。

1976年の夏は大変な猛暑で、スタジオ内に戦闘スーツ姿で待機しているだけでクタクタになるほどだった。

脇役ながら『スター・ウォーズ』の世界観を築くのに欠かせないキャラクターを演じた俳優たちが、思い思いに撮影時のエピソードを語る。

「スタジオに一人でいたスタッフにコーヒーを淹れてもらった。後からジョージ・ルーカスだと知ったよ」と楽しげに振り返るのは宇宙人グリードを演じたポール・ブレイク。

宇宙酒場のウェイトレス嬢を特殊メイクで演じたパム・ローズは、「自分のフィギュアのある役者なんて、大スターでもいないわ」と喜ぶ。

1シーンしか映らない端役であれ、ファンから愛され続ける作品に参加できたことをポールやパムは誇らしげに感じている。彼らにとって『スター・ウォーズ』は青春時代の輝かしい思い出となっている。

一方、辛い目に遭ったのは主人公ルーク・スカイウォーカーの親友ビッグス役に選ばれていたギャリック・ヘイゴン。

当初はかなり重要な役でチェニジアでのロケ撮影にも参加していたが、撮影終了後の編集段階でビッグスの登場パートはばっさりとカットされ、デス・スター攻撃シーンでちょっと顔を見せるだけになってしまった。

関係者向け試写を観たギャリックはショックを受けるが、試写終了後に顔を合わせたプロデューサーに怒りをぶつけるのをぐっと我慢した。大ヒット作の主要キャラにはなりそびれたが、ギャリックはその後も息の長い俳優として活躍し続けている。

黒いヘルメットで隠された大男の哀しみ。本作を観ると、オリジナル三部作をまた観たくなる。

今回の登場人物の中でいちばん有名なのは、あのダース・ベイダーを演じたデヴィッド・プラウズだろう。

ボディビルダーとして屈強な肉体を誇っていたプラウズは、キューブリック監督の『時計じかけのオレンジ』(71年)で老作家と同居するマッチョマンを演じたことでルーカスの目に留まり、最強の敵ダース・ベイダーに抜擢された。

『スター・ウォーズ』のみならず、『時計じかけのオレンジ』にも出演したのだから凄い!だが、黒ヘルメットで顔を覆ったダース・ベイダー役は、プラウズに今でも複雑な感情をもたらしている。

オリジナル3部作でダース・ベイダーを演じたプラウズだが、声はアフレコで別人に変えられ、また『スター・ウォーズ/ジェダイの帰還』(83年)でダース・ベイダーがヘルメットを脱ぐ重要なシーンはセバスチャン・ショウが演じている。

演じることへのこだわりが強かったプラウズはルーカスフィルムとの間に軋轢を招き、公式イベントには呼ばれなくなってしまったそうだ。

本作に登場する人々の多くは、世界各地で催されているコミックコンベンション(コミコン)に招かれ、『スター・ウォーズ』マニア向けにサイン&記念撮影することで収入を得ている。

ハン・ソロを演じたハリソン・フォードのような大スターにはなれなかったけれど、フィギュア化され、ファンからサインを求められる人生を歩んでいる。

俳優としてもっとブレイクしたかったという本音を吐く者もいれば、ファンと過ごす時間が最高に楽しいとコミコンの開催を待ちわびる者もいる。

また、ちょい役でも台詞があり、エンドロールで名前がクレジットされた出演者と、台詞のないその他大勢のエキストラでは、明確な線引きがあることも明かされる。

『スター・ウォーズ』のスピンオフ大作『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』が現在上映中だが、人生の哀歓を感じさせるドキュメンタリー映画に触れるのも一興ではないか。大ヒット作をめぐる光と影の物語がここにある。

『エルストリー1976 新たなる希望が生まれた街』

監督/ジョン・スピラ 出演/ジェレミー・ブロック(ボバ・フェット)、ポール・ブレイク(グリード)、ジョン・チャッパン(反乱軍パイロット)、アンソニー・フォレスト(サンドトルーパー)、ローリー・グード(ストームトルーパー兼X-Wingパイロット)、ギャリック・ヘイゴン(ビッグス・ダークライター)、デレック・ライオンズ(マサッシ・テンプル・ガード)、アンガス・マッキネス(ゴールド・リーダー)、デヴィッド・プラウズ(ダース・ベイダー)、パム・ローズ(リーサブ・サーリン)

配給/ビーズインターナショナル 12月17日(土)より新宿武蔵野館、シネマート心斎橋、名古屋シネマテークにて公開ほか全国順次

(c)ELSTREE 1976 LIMITED, 2015

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