日本は東西に長く伸びる島国である。北海道から沖縄まで地域によってさまざまな文化や習慣を持っている。

同郷の人同士で話すと「あるある」ということが別の地域出身の人と話すとまったく通じなかったり、不思議な顔をされたりという経験を持つ人もいるかもしれない。

今回ご紹介する『くらべる東西』(おかべ たかし:著、山出 高士:写真/東京書籍)は同じ日本でありながら、いまだ受け継がれ、残されている東と西の文化や風俗の違いについて紹介している本だ。

当たり前と思っていたことが東と西とで思わぬ違いを見せていたりして驚かされる。東の代表として関東、西の代表として関西が登場し、同じだけど違う34組の文化や風俗が写真ととともに比較されている。

たとえば、外国人旅行者に人気の銭湯。

日本らしい文化のひとつだ。年々減ってはいるものの、東と西とでは異なる特色があるようだ。その違いは、ずばり湯船の位置である。関東の銭湯は入り口から入るとまず洗い場があり、奥に湯船がある。

対して関西の銭湯は入ると中央目の前にドドーンと湯船が配置されている。

これは、東の人は人目を気にするため浴場の隅の方でこぢんまりしていないと心が休まないが、西の人は社交的でオープンな性格であるため中央でどっしりと湯船につかりたがるからというわけでは、もちろんない。

その由来は諸説あるものの、肉体労働者が多かった関東では体の汗や汚れを落としてから湯船につかることが一般的だったが、商人が多かった関西では先に体を温めてから体を洗うため、利用方法に応じてこのような配置の違いが生じたというのが有力説である。

そして、料理。

和食の基本となるのが出汁(だし)である。関東の出汁は濃く、関西は薄いという違いを耳にしたことがある人は少なくないだろう。しかし、異なるのは和食だけではない。洋食にも違いが見られるものがある。

たとえばサンドウィッチにも東西で違いがあることをご存じだろうか。子どもから大人まで人気のサンドウィッチに「タマゴサンド」がある。あなたはタマゴサンドと言われて、どんなものを想像するだろうか。

もし、あなたが東の人なら茹で卵をつぶしてマヨネーズであえたものが挟まっているパンを想像するのではなかろうか。しかし、西の人の中には焼いた玉子を挟んだパンを思い浮かべる人もいるのである。

日本全国いたるところで姿を見ることができる猫。器用に動く長い尻尾がかわいらしい。そんな猫の尻尾にも東西に違いがあるという話があるらしい。

生息地が完全に区別されているわけではないが、関東では尻尾がクルンとカギ形に曲がっている猫が多く、関西ではピーンと真っ直ぐな尻尾の猫が多いとのこと。その理由はこうだ。

尻尾が長い猫は長生きすると化け猫になるという“猫又”と呼ばれる化け猫伝説が、東の江戸でかつて信じられていた。江戸の人々は化け猫を避けるために尻尾が短かったり曲がったりしている猫を飼った。

そしてその名残で関東にはカギ形尻尾の猫が多く生息したようだ。ただし、西の中でも長崎はカギ形尻尾の猫が多いという。これは、カギ形尻尾の猫の祖先が海外猫で、長崎が海外との交易の窓口であったことが理由らしい。

さて、猫が違うなら犬はどうだろう。もともと尻尾の短い種類もいる犬である。残念ながら猫のような違いはない。

しかし、犬は犬でも、狛犬の尻尾には東西で特徴に違いがあるという。神社を訪れた際には参拝に加えて、尻尾の流れや向きに注目しながら狛犬観察をしてみてはいかがだろうか。

他にも、バスの乗り口が東西で異なる理由、関東と関西での御祝儀袋の畳み方の違い、桜餅の葉の扱い方やおいなりさんの形、地域性が見られるタクシーの色など興味深いネタが盛りだくさんある。

全てが横並びの写真とともに掲載されているので、東西の違いをとてもわかりやすく見ることができる。各比較について綴られた解説に目を通していくと、地域ごとに積まれてきたそれぞれの歴史の深さと日本の文化の豊かさを感じずにはいられない。

これから異なる地域にお引っ越しの予定がある方、東西真逆で育った人と結婚の予定がある方は、本書で予習をしておくとよいだろう。

また、関東の人は関西を訪れた時に、関西の人は関東を訪れた時に、さらに、住まいの東西が異なる友人と会った時にでも、この違いが真実であるのかをチェックして楽しんでみてはいかがだろうか。

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