今や、私たちの生活は、インターネットなしでは成り立たない。特に、スマートフォンが普及してからは、ネットにアクセスしない日はない。

こうした、私たちとネットの関係から、未来を予想した本が、『勝手に選別される世界』(マイケル・ファーティック、デビッド・トンプソン:著、中里京子:訳/ダイヤモンド社)だ。

この本に描かれているのは、遠い未来ではなく、目と鼻の先の未来。さて、どんな未来なのか、ちょっと覗いてみよう。

あなたは旅行先で、初めて泊まるホテルに足を踏み入れた。そのとたん、しわひとつない制服のコンシェルジュが歩み寄ってくる。

そして、他の客が列をなしているチェックインカウンターを横目に、VIP専用カウンターに案内される。フロント係がルームキーを用意する間、コンシェルジュは温かい紅茶を差し出す。それに口付け一息ついたところで、フロント係は尋ねる。

「景色がいい部屋への無料アップグレードはいかがですか?」。あなたは申し出を受け入れる。そして、先ほどからずっと気に掛かっていた質問をする。「なぜ、この私に?」と。

フロント係の答えは、次のとおり。

「あなたのオンライン上のコメントと旅行歴によると、あなたは、ブランドロイヤルティと情報拡散能力のスコアが非常に高い人物であることがわかります。また、現在の勤勉度から類推して、これからも財政面で恵まれ続けるでしょう。従って、当ホテルは、部屋のアップグレードを提供することによって、あなたが生涯にわたって私どものお得意様になると予測するからです」

――つまり、「ネット上のあなたは、評判がよく価値ある人間なので、頻繁に利用してもらうべくサービスをした」ということだ。

このように、本書の未来予測は、“ネットの情報で、自分の価値を判断される世の中になる”というもの。

現在でも、就職活動の際に学生の情報を企業側が検索することがあるというが、それ以上の選別が行われることが予想される。

例えば、企業側が極秘に特定の人物だけに行う求人勧誘だ。個人の経歴からソーシャルネットワークへの書き込み内容、TwitterやFacebookでの拡散能力、普段どのようなサイトを閲覧しているかを調べた上で、欲しい人材だけにコンタクトを取る…。

ネット内のあなたの評判が、リアルのあなたを支配するかもしれないのだ。

こうした予想の根拠は何だろうか。それは、データの完全な削除よりも、新しい記憶装置を買って情報を溜めておく方が安く済むことと、蓄積された詳細な個々の言動が利用されることに由来する。

具体的にいうと、既に現在、私たちがオンライン上で書き込んだ文章は、削除ボタンをクリックしても、データが完全にこの世から消えたわけではない。

画面上からは確かに消えるが、運用会社の装置には残っているのだ。高いコストを払ってゴミ捨てをするより、安いコストで新しい箱を導入する方を選ぶ運用会社のやり方は、経営上の判断からすれば妥当なものだ。

そして、当然、こうしたデータは、高い価値をもつ。個人の詳細がわかれば、企業ならよりターゲットを絞った広告活動を行えるだろうし、個人ならライバルの動向調査や恋人の浮気調査も可能かもしれない。

既に、アメリカでは、「インテリアス(Intelius)」や「スポキオ(Spokeo)」といった情報会社があり、お金があれば誰でもデータを買うことができる。

本書では、「自分が電子的に行うあらゆることは、記録され、永久に保管されると心すること」と注意を促す。

さらには、積極的に、自分の良いことをアピールする書き込みをするなど、ポジティブな情報を発信して、良い自己像を演出しようとまで提案する。

そこまでするかは、人によって判断の分かれるところだが、いずれにしても、膨大なデータの活用が私たちにとってプラスになるよう、意識をしながらネットと向き合わなければならないようだ。

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