アウトドアやスポーツ好きな男性から子育て中のママまで、幅広い層から支持されているトヨタの「ヴィッツ」。身近な車として街で見かけることが多いですが、実は今、世界のモータースポーツ界で大変な注目を集めているんです。

今回、Spotlightではトヨタが世界に向けて発表した驚きのトピックスの現場に潜入。どうして「ヴィッツ」が注目されているのか?その裏に何があるのか?会見の様子とキーパーソンを直撃してきました。

日本では「ヴィッツ」、世界では「ヤリス」

出典 http://toyota.jp

日本の製品が海外では別名で呼ばれることがありますが、トヨタのスモールカー「ヴィッツ(VITZ)」は「ヤリス(YARIS)の名で知られています。

トヨタは今秋、この「ヤリス」でラリー界最高峰の舞台「世界ラリー選手権(FIA World Rally Championship、通称:WRC)」に挑むことを発表していました。今回の新たな発表会では、WRC参戦車両「ヤリスWRC」の完成した姿が披露されるということで、世界各国から多くの報道陣が集結。

出典Spotlight編集部

スモークとともに闇の中から登場した「ヤリスWRC」。緊張感が高まります。

出典Spotlight編集部

カラーバリエーション豊富でコンパクト、どちらかといえば可愛らしい日本ではおなじみの「ヴィッツ」とはかなり違う印象!

精悍な顔立ちで威風堂々としたサムライのような佇まいの「ヤリスWRC」に、取材陣は夢中でシャッターを切ったりカメラを回したり、大興奮の様子でした。

ところで、ラリーって?WRCって?

出典 http://toyotagazooracing.com

ここで、モータースポーツはよく分からないという読者の皆さんのためにラリーとWRCについて簡単に紹介します。

【ラリーって?WRCって?】
●ラリーとは、市販車をベースにしたナンバー付きのラリーカーが一般道や林道を走ってタイムを競う競技
●ラリーカーに乗車するのはドライバーとサポート役であるコ・ドライバーの2名
●WRCは国際自動車連盟(FIA)が主催する世界選手権で、ラリー最高峰の舞台。2017シーズンは世界各国で全13戦開催

トヨタとWRCの深い関係

サーキットを周回してタイムを競う「レース」とは異なり、ラリーは市販車をベースに開発されたナンバー付きのラリーカーが一般道路を走るため、競技目的もさることながら車メーカーにとっては市販車の開発ヒントを見出すための重要な場なのです。

特に「もっといいクルマづくり」への熱量が高いトヨタにとって、WRC参戦は“勝ち”を目指すにとどまるものではありません。

【WRCでのトヨタの略歴】
●1972年「セリカ1600GT」で初参戦
●1975年「カローラレビン」で初優勝以来、WRCでドライバーズタイトル4回、マニュファクチャラーズタイトル3回獲得。通算勝利数は日本車メーカー最多の43勝
●1999年「カローラWRC」でマニュファクチャラーズタイトル獲得を最後にラリー活動終了
●2015年1月、2017シーズンからWRCへの復活参戦を表明

セリカにカローラ、国民的車ともいうべきトヨタ車はラリーで培った実績に基づいて私たちの生活になじんできたことを物語っています。

18年ぶりにWRCへの復帰を決めた理由

1999年を最後にWRCを退いたトヨタの“復帰”の後押しをしたのは、「トヨタは、いつラリーに戻るんだ?」というラリーファンからの声、そしてトヨタの「もっといいクルマづくり」への情熱だといいます。

進化のめまぐるしいモータースポーツの世界で、18年のブランクは圧倒的に不利。誰もがそう思っていたところに、“負け嫌い”で有名な豊田社長は“勝ち”を狙っているとしか思えない大胆な策を示しました。

レジェンドからスターまで。世界トップレベルの布陣

出典Spotlight編集部

18年ぶりのWRC参戦にあたり、豊田社長がチーム代表に選んだのはトミ・マキネン氏。WRC通算優勝回数は24回、1996年から1999年にかけてはWRC4年連続ドライバーズチャンピオンを獲得。フランス南部・アルプスの 山岳路を舞台にしたWRC屈指の難コース、モンテカルロで4連覇、超高速ラリーで知られるラリーフィンランドでは5連覇を達成したという、まさにラリー界のレジェンドです。

ラリーファンにとっては信じられないような大物の起用は、トヨタが18年ぶりにWRCに参戦するというトピックに加えて世界を驚かせました。

出典Spotlight編集部

左からヤリ‐マティ・ラトバラ選手、ユホ・ハンニネン選手、エサペッカ・ラッピ選手、そしてチームを率いるトミ・マキネン代表。

また、世界が注目する豪華ドライバー陣はすべてフィンランド出身。モータースポーツ大国の奥深さを証明する布陣です。

今回「ヤリスWRC」とともに発表された注目の参戦ドライバー、ヤリ‐マティ・ラトバラ選手は、2002年のWRC初参戦以来すでに16勝もあげているというWRC屈指のスター的存在。チームへ新たにスタードライバーが加わることで、トヨタの“勝ち”への期待はますます高まっています。

“負け嫌い”豊田社長の負けん気がハンパない

出典 http://toyotagazooracing.com

「ヤリスWRC」とドライバーのお披露目会場では、豊田社長とトミ・マキネン代表がテスト走行で再会する動画も紹介されました。

「We hate to lose(負け嫌い)」

何度もそう繰り返し固い握手を交わす2人からは、18年のブランクをものともせず“勝ち”を予感させる力強さしか伝わってきません。

今年のル・マン24時間耐久レースの後にも言いましたが、TOYOTA GAZOO Racingは“負け嫌い”です。WRCでも、負けたくはありません。

出典 http://toyotagazooracing.com

豊田社長の正式表明からも、並々ならぬ負けん気が感じられます。

先日、短い時間ですがヤリスWRCのステアリングを握り、トミと一緒にクルマを走らせることができました。

クルマから感じる音や匂い、ステアリングやペダルから伝わる感覚、そして何よりクルマを作りあげてきたトミの表情を見て、このクルマで戦っていく"自信"を、彼と共有することが出来ました。

出典 http://toyotagazooracing.com

参戦車両の仕上がりは体感してから自信へ変える。ラリー界のレジェンドを“コ・ドライバー”として自らハンドルを握る豊田社長の姿は、世界を牽引する車メーカーのトップの徹底した現場主義と「もっといいクルマづくり」への情熱を如実に表しています。

トヨタが“勝ち”の先に見据えるのは…

あらゆる道を走る競技であるラリーは、人とクルマを鍛え上げるためには最適な舞台です。

出典 http://toyotagazooracing.com

これは、“負け嫌い”なトヨタがWRCでの“勝ち”にこだわる以上に、普通の生活・社会で使われる車がいかに快適で安全であるべきかを見据えてラリーに参戦していることを示す、豊田社長の言葉の一節です。

WRC参戦が意味することについては、チーム代表のトミ・マキネン氏も次のように語っています。

WRCに参戦して得られる知見をいかに市販車に応用するかということは、プロジェクト全体の中核。もちろん、ラリーに“勝つ”強い車をつくるためには性能ありきで議論を進めているので、より速く強い車に仕上げるためにより高価な素材を使う場合もある。一方で市販車の場合は一定の価格設定をし、予算内でつくれる車に仕上げないといけない。

アプローチの違いはあれど、ラリーカーをつくる過程で素材の信頼性や性能を追求していく中で、市販車に応用できる発見はある。だから我々は開発にあたり、どの部分が市販車に応用できるだろうか、市販車のより安全な走行パフォーマンスにつながるかだろうかという観点を持っている。今すぐに(今回WRCために開発したヤリスの)この部分が市販車に応用できると具体的には示せないが、後々市販車の開発に活きてくると信じている。

出典トミ・マキネン代表インタビュー

チームを託されたトミ・マキネン代表を中心に開発された「ヤリスWRC」の技術や経験は、私たちの生活や社会をもっとよくしてくれる「もっといいクルマづくり」にきちんと反映されることを約束してくれる言葉ですね。

ラリー界のレジェンドが語るドライビングの魅力

出典Spotlight編集部

トヨタが18年ぶりのWRC復帰で狙う勝利の先には、私たちの社会や生活に欠かせない「もっといいクルマづくり」があることが分かりました。

トヨタが通常の開発努力だけでなく、モータースポーツへの参戦という別のアプローチからも“いいクルマ”づくりに励む一方で、日本では若者の自動車離れなど“いいクルマ”の魅力が活かされづらい状況も。

そこで、トミ・マキネン代表に車とドライビングの魅力について質問してみました。

特に都市部は車がなくても生活できる環境だし、車は単なる移動手段のひとつにすぎないという考え方も出てきて、昔ほどの特別感はなくなってしまったのかもしれない。しかし、たとえ移動手段にすぎないにしても車は必要であり続け、社会からなくなることはないと確信している。

そこで車に乗るという行為が生じる時、“いいクルマ”だと自宅から職場までの通勤ルートを移動するだけであったとしても、それだけで気分が変わる。日々のルーティーンでも“いいクルマ”に乗っていると思考が自由になったり集中できたり、家でのリラックス感や仕事で集中する感じとは違った空間が生まれて、その空間と時間は非常に大切。

車に乗った瞬間、ふっと力が抜けて仕事の集中や緊張感から解き放たれる自由な感覚。全く別な空間と時間がそこにはあって、その感覚、自由を味わえるのが車とドライビングの魅力ではないかと思う。

出典トミ・マキネン代表インタビュー

車がもたらす空間と時間、ドライビングで味わえる自由な感覚。ラリー界のレジェンドの言葉からは、手段であっても趣味であっても“いいクルマ”に乗ることの意義と魅力が伝わってきます。

2017年、“いいクルマ”づくりの第一歩はモンテカルロから

Licensed by gettyimages ®

2017年の世界的スポーツイベントとして必見のWRC。まずは1月19日(木)にスタートするシリーズ開幕戦・ラリーモンテカルロに注目し、18年ぶりに復帰するトヨタはトミ・マキネン代表のもと「ヤリスWRC」でどんな戦いをするのか?勝てるのか?しっかり見届けたいですね。

そして、シーズンを通じて「ヤリスWRC」で磨かれた技術が私たちの社会や生活を快適にするに“もっといいクルマ”へ、どのように生かされるのかにも期待しましょう。

この記事を書いたユーザー

Spotlight編集部 このユーザーの他の記事を見る

Spotlight編集部の公式アカウントです。

権利侵害申告はこちら