行列が話題になったコッペパン店・吉田パンは2013年に創業し、その後も新たな店が続々とオープンしている。そんな中、ついに『コッペパンの本』(木村衣有子/産業編集センター)が出版された。

文筆家である著者は、1975年栃木県生まれ。立命館大学産業社会学部卒で東京在住。著書に『京都カフェ案内』(平凡社)『コーヒーゼリーの時間』(産業編集センター)などがある。

本書では、著者が「輪郭ははっきりしていない」「大衆的な存在」という、コッペパンの不思議さを解き明かすために、日々コッペパンに向き合う店や人に会いに行き、その謎を紐解いていく。

ほっこり感を味わえる文章と自ら撮影した写真は、まるで一緒に旅しているかのような気分だ。

まずは本書の中から、耳よりなコッペパンうんちく3つをご紹介したい。

(1)東日本は、腹割りで具を挟むのが主流。西日本では、背割りで細身、中身を見せる!?

(2)セブン‐イレブンのつぶあん&マーガリンは、一部の地域ではこしあんに!?

(3)地域・店によってはコッペパン=ロールパン!?

詳しくは本書でチェックを。続いて、掲載されているパン屋を紹介しよう。

福田パン(岩手・盛岡)1948年~「コッペパンの王道」

岩手県民のソウルフードと言われ、実は、宮沢賢治と縁が深い。店では、注文を受けた店員が、切れ目の入ったコッペパンに、あんこやクリームを竹べらを使って塗る。その動作はとてもスピード感があるそうだ。

味わいは、まず塩気があり、しっかりとした皮と、もにゅーとした柔らかく白い中身を一緒に齧(かじ)ると、口触りはむぎゅっ、という感覚だという著者。三代目社長の福田潔さんに展望について訊ねると、「現状維持、ですね」と語っている。

吉田パン(東京・亀有)2013年~「美しいコッペパンの開き」

「すごいソウルフードを食べさすからねー」と、盛岡出身の義理の弟からあんバターを食べさせられ、驚いた店主・吉田知史さんは東京出身。

福田パンをそのままやりたいと福田さんに本店で話し、著者はそのいきさつを福田さんにも訊ねると、「ここだけでじゅうぶん。パン屋をやるなら、自分たちで気に入った生地を作って、好きなものを挟めばいい」と。

その上で吉田夫妻に、福田パンの工場で生地の基本を教えたそうだ。

「ぽってり、むちむち。もちろん、おいしかったが、列を成すお客さんは、おいしさだけを求めて来ているのか」と考えを巡らす著者。

吉田さんは、「スタートしたときから、吉田さんの味を追求していってと言われて。食べておいしい、見ておいしい。やっぱり、作るものを美しく見せたい」と日々情熱を注ぐ。

ゆうきぱん(大阪・高槻)2015年~「めおとパン」

「ほんとにこつこつと頑張っていて、堅実なんで。ご近所の人に楽しんでもらえて、食っていけたら、という考えで」と福田さんが褒めた店。福田パンのスタイルを受け継ぎ、澤和(たくわ)正志さんの地元で開店した。

夫妻は吉田パンを通じて福田パンを知るまでは、パンに関わる仕事をしたことはなかったが、勉強させてほしいと福田さんにお願いしたという。

「一緒に作りましょうかと、一から、ほんとに手取り足取り。もう全部、レシピも教えていただいて。東北に初めて行きましたけど、社長も含めて、優しいですね、人が」と正志さん。

開業してからも、福田さんは半年に一度は訪れ、売上に波があることの不安を伝えると「大丈夫ですよ、そんなもんですから」と、からっと励まし、「いいパンですよ」と言ってくれるそうだ。人気はあんマーガリン。

こしあんは福田パンから分けてもらい、竹べらも同じものを使っている。

iacoupe(イアコッペ)※eの上に́アクサンテギュ(東京・上野)2014年~「上野の新しいお土産」

イアコッペは、西日暮里のパン屋BOULANGERIE ianak!(ブーランジェリーイアナック)の2号店。5坪と小さく、コッペパンは西日暮里で焼く。ビーフカツは全粒粉。

あんバタとポテサラといちごカスターは、イアナックでずっと焼いてきたヴィエノアから派生したプレーン。みかんはブリオッシュ。

基本的には腹割りで挟むが、開店後、プレーンにカカオを加えた生地、ブラックカカオコッペが登場し、これだけは背割りで見た目のインパクトを。種類が増える中、やっぱり人気はポテサラとあんバタだという。

店を取り仕切る金井直子さんは、イメージは「フォーシーズンズより帝国ホテル」「自分たちがおいしいと思うものを作っていきたい。なるたけ、しっとり、もっちりで」と語っていた。

coppee+(コッペプリュス)※+は最後のeの右側上に(兵庫・神戸)2015年~「きらっと光るコッペ」

垂水(たるみ)でコッペパンを60年近く焼き続けてきた、小学校の給食用のパンを主に手がけるヒシヤ食品が須磨(すま)に出店。使われる材料とその配合は、給食用のパンとは全く別物だ。第一印象はふわっとやわらかなコッペパン。

注文を受けてから、ガラス戸を開け、きれいに並べてあるコッペパンをひとつひとつ取り出し、具を挟む。

「このライブ感が楽しいんだと思います」と店主・小川恵美子さん。「うちはおじいちゃんの代からコッペパンを引き継いでいて、それを守らなければならないという気持ちが従兄弟と私にはあって」と想いを語る。

5つのコッペパン専門店を取り上げた1章。「2章 パン屋さんのコッペパン」では、ときわ堂食彩館(東京)、Le petit mec OMAKE(ル プチ メック オマケ)(京都)、藤乃木製パン店(東京)、オギロパン(広島)。

「3章 袋入りコッペパン」では、岡山木村屋(岡山)、つるやパン(滋賀)、山崎製パン(東京)、フジパン(愛知)を紹介。

「コッペパンのよもやま話」の章では、店のマップ&データのほか、パンの研究所「パンラボ」主宰でパンライターの池田浩明さんとの対談、林舞さんによるイラストエッセイ「ぱんとたまねぎの九州コッペ探し」などが収録され、読み応えのある一冊になっている。

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