現代では、和洋中、フレンチにイタリアン、インド料理やタイ料理など、世界各国の料理を食べている日本人。しかしやっぱり、食べ続けて飽きが来ないのは和食だから不思議だ。

何代も前から食べ続けてきたものは、やはり基本としてDNAに刻み込まれているものなのだろうか。いくら豪華な食事を好む人でも、日本人ならたまには味噌汁や白いご飯が恋しくなるはずだ。

しかし、調味料も食材も、今ほど充実していなかったであろう江戸時代頃の食生活、調理法は、実際どのようなものだったのか。それを漫画で楽しく知ることができるのが、『お江戸まかない帖 深川めし』(酒川郁子/ぶんか社)。

魚河岸の大店・大野屋でまかないをしている明るい江戸っ子娘・奈津を中心に描かれる本作品には、江戸時代に親しまれていた料理が作り方まで細かく描かれている。

丁寧に作られる彼女の料理は、見ているだけで食欲をそそる。ぜひとも実際に味わってみたいと思い、本書の中から実際に作ってみた。

第1話:「アサリの炊き込みご飯」と「大根汁」

まずは、1話に出てくる「アサリの炊き込みご飯」と「大根汁」。元々はアサリのぶっかけ飯を出していたのだが、たまには別なものを食べたい!という魚河岸の男たちからのリクエストに応えるため、同じ食材で作れる別メニューとして奈津が考えたもの。

アサリご飯は、砂抜きしたアサリを茹で、茹で汁、生姜、醤油で炊いたご飯にアサリの身とネギを混ぜる。あとは、大根と人参、油揚げに出汁、味噌を加えて大根汁を作れば完成。

アサリの出汁と生姜の香りがご飯にしっかりと行き渡り、身もふわふわ。

ぶっかけ飯はぶっかけ飯で美味しそうだが、ご飯と汁物の2品あることで、ただ空腹を満たすのではなく、食事の時間としてしっかりと味わうようになった男たち。そこにも奈津の工夫と優しさが感じられる。

第3話:「鯛のてんぷらの煮込み田楽」

もう1つは、3話の「鯛のてんぷらの煮込み田楽」。奈津の住んでいる長屋の向かいに住む板前・惣介。奈津は惣介のことを密かに慕っているのだが、ある日惣介は、喧嘩をして仕事を辞めてしまった。

そして天秤棒を担いで売り歩く振り売りを始めたが、うまくいかない。そんな時、奈津がたまたま安く鯛を仕入れられたことがきっかけで、惣介が作ったもの。

鯛をすり身にして油で揚げ、鯛のあらと醤油で作っただし汁に浸け込めば完成。田楽というよりおでんでは?と疑問を感じたが、実は田楽はおでんの元祖。江戸っ子は焼くのを待っていられず、味噌も「ミソがつく」と嫌っていたため、この形になったそう。

鯛と醤油だけというシンプルな味付けだが、だからこそ鯛本来の旨みを強く感じることができる、贅沢な一品。天ぷらは低温でじっくり揚げるのがコツ。

実際に作ってみると、どちらも素材が持つ旨みをとても大事にしており、無駄な調味料は一切使っていない。

普段ならついつい手を加えてしまいそうだが、シンプルでも丁寧に作ればしっかりとした味になる。本書のレシピは、食材で味を育てるという料理の楽しみを改めて感じさせてくれた。

この『お江戸まかない帖 深川めし』には、「特製玉子焼き」や「みぞれ煮」、「シラウオの卵とじ」など、まだまだ奈津の愛情や優しさが詰まったレシピが多数掲載されている。

この漫画を読んで、ぜひとも江戸の食生活を知り、楽しく普段の食事に取り入れてみてほしい。

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