激動の昭和の時代を振り返るとともに、現代に残したい当時の学びを探るコーナー「昭和土産ばなし」

今では、どこにでもある自動販売機ですが、全国に広まっていったのは昭和40年代。当時は今のようにコンビニがすぐ近くになかった時代だったため、自動販売機はとても重宝しました。

今回は昭和の時代から愛され、今もなお活躍する昭和のユニークな自動販売機をご紹介します。

昭和の香りを感じる「そば・うどん」の自動販売機

高速道路が開通した頃、関東でいうと東京の郊外にあたる群馬や埼玉の国道や県道といった幹線道路沿いには、長距離ドライバー向けに、「ドライブイン」「オートパーラー」といった名前で、自動販売機を置いた無人の休憩スポットが多くありました。

出典Spotlight編集部

今回訪れたのは、埼玉県久喜市にある「オートパーラーまんぷく」。24時間営業の店内には、コインランドリーやシャワールーム、飲料やカップヌードルの自動販売機、ゲーム機などもありました。ドライバーが休憩に立ち寄って、缶コーヒーを飲みながらタバコを吸ったり、食事をすることができる憩いの場です。

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店内を奥に進むと、さっそく昭和の香りを感じる自動販売機を発見!今は非常にめずらしい「そば・うどん」の自動販売機です。

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メニューは「天ぷらそば」と「天ぷらうどん」の2種類。値段はなんと200円!立ち食いの店でも、天ぷらそば・うどんは200円では食べられませんよね。

一体どのようにして、うどんやそばが出てくるのか?さっそく購入してみました。お金を入れると、ボタンのランプが点灯。そして、「天ぷらうどん」のボタンを押すと、「できあがりまで25秒」と表示されました。

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たった25秒でうどんができるのか…?不安に思っていると、あっという間に残りあと10秒!

5、4、3…

カウントダウンの表示が、期待感を煽ります。

「チーン!」

甲高いベルの音。よく響く、懐かしい感じのする心地の良い音でした。取り出し口を開けると、中にでき上がった「天ぷらうどん」が…!

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どこか懐かしいプラスチックの器は、独特の“味”があります。

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まずは麺を食べて見ると、思ったよりも太くて、かなりコシがあります。かき揚げはエビや玉ねぎ、にんじんなどが入ったシンプルで素朴な味わい。

麺やかき揚げにしっかりとつゆが絡んでいて一口目から美味しかったのですが、200円という値段設定のためか、量は少なめで成人男性がお腹いっぱいになるには足らず…。そこで、天ぷらそばも注文してみました。

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そばもうどんと同様、麺にコシがります。小腹を満たすなら1杯、しっかり食べたいなら2杯食べるのがオススメ。2杯食べても400円ですから安いものです。

懐かしさを感じる素朴なかき揚げと麺の舌触り。味のベースとなっているつゆをすすってみると、かなり濃いくち。とても美味しくクセになる味です。

「つゆの濃さは、私が絶妙に調節してるからねぇ。こだわっているんです」

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!!!誰っ!?

おもむろに“つゆ”について語ってくれたこの方こそ、「オートパーラーまんぷく」の店主・小林利夫さん。昔からあるこちらの自動販売機について話を伺いました。

−−設置したのはいつ頃ですか?

小林さん(以下、小林):最初に自動販売機を置いたのは昭和42年頃でした。もともとここは食堂だったんですが、当時は東京と東北のほうを行ったり来たりする車が多かったので、外にテントを作って、“そば・うどん”の自動販売機をはじめ、カップヌードル、ハンバーガー、トーストの自販機なども置いていました。今うちにある“そば・うどん”の自動販売機は、1台は昭和54年に置いたもの。もう1台は平成元年に設置したものなんです。

−−昭和の時代からこちらに残っている自動販売機は「そば・うどん」のみですか?

小林:「やはり結構電気代がかかるのと、高速道路やコンビニができて、こうした立ち寄りのドライブインには昔より人が来なくなってね。昔からあるのは、この“そば・うどん”だけです。うちの“看板商品”なんですが、もう30年動きっぱなしですからね。愛着も湧いているし、夜中に“大丈夫かな?ちゃんと動いているかな”ってたまに覗きに来ますよ(笑)。

−−そうなんですね!売れ行きは昔と比べていかがですか?

小林:昭和50年代、一番売れていた頃で1日40〜50杯くらいです。不思議と、そばもうどんも同じくらい売れるんですよ。でもね、おかげさまで今もテレビや雑誌で、たまに取材に来てくれると、懐かしんだりめずらしがったりしてお客さんが来てくれるので、今も多いときは1日20杯くらい売れます。」

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ここで、気になる「そば・うどん」の作り方をご紹介!自動販売機の中ではどのような作業が行われているのでしょうか。特別に中を開けて見せていただきました。

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まずお金が投入されると、左のレールが回転して、麺とかき揚げが入ったプラスチックの容器が右の調理室に移動します。

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「上のタンクからお湯が注がれ、湯切りする」という作業が2回繰り返されます。そしてつゆが注がれ、取り出し口に押し出され、お客さんの手に渡る…という仕組みになっています。

最後に小林さんに、一番気になる質問をぶつけました。

ーーいつまでこの自動販売機の営業を続けてくれますか?


小林:「修理屋さんにはいつも言っているんです。『修理代はいくらかかってもいいですから、ずーっと面倒みてくださいね』って。長年使っているものほど愛おしいし、ふと懐かしい気持ちにさせてくれるのがいい。だから、やめられないですねぇ。」

昨今の便利な自動販売機にはない、風情や懐かしさがある昭和の「そば・うどん自動販売機」。関東だと群馬や埼玉に数えるほどしかありませんが、もし出会ったらぜひその味を楽しんでみてはいかが?

44年間も愛され続けるお弁当の自動販売機

最後にもう一つ、めずらしい自動販売機を紹介します。茨城県の潮来(いたこ)ICから国道51号に入って北利根橋を渡ったところにある「あらいやオート」では、昭和47年にお弁当やカップヌードルなど、さまざまな種類の自動販売機を設置しました。

立ち寄りスポットとしてドライバーから利用されていましたが、とくにホカホカのお弁当の自動販売機は、地元の住民たちから長年愛され続けています。

自動販売機でお弁当を販売しはじめて、今年で44年目になりますね。学生時代から食べ続けてくれて、今60歳を過ぎている方や、小さい頃に食べていて、結婚して子供を連れて親子二代でファンになってくださった方などもいらっしゃって、ありがたい限りです」と話すのは、店主の鈴木さん。

44年目ということで年季が感じられますが、もちろん自動販売機の中に入っているお弁当は、毎日ホカホカのできたてが補充されます。44年間、鈴木さんが丹精込めて手作りしているお弁当のメニューは「焼肉弁当」「鶏の唐揚げ弁当「ひれかつ弁当」の3種類。

鈴木さん(以下、鈴木):「素材はすべてこだわっています。特に焼肉弁当は、国産ブランド豚のロース肉に、創業当時からずっと継ぎ足して使っている特製のタレを絡めて焼き上げた焼肉が、おかげさまで好評いただいています。」

値段は3種類とも300円というから驚き!実は、コンビニが続々と増え始めた25〜30年前ほどに、一度だけ自動販売機の撤退を考えたそうなのですが、そんなとき、お客さんからの「やめないで」という声がお弁当の販売を続ける原動力になったそう。

鈴木:「自動販売機がある無人の小屋には、昔からお客さんに感想などを書いてもらうためのノートが置いてあります。そこには“美味しかった”“いつまでも続けて”なんて嬉しい言葉がたくさん書いてあって。中には、“富山県から来ました”“どうしても食べたくて兵庫県から来ました”なんて方も…。だからずっと頑張らなくちゃ!って思えるんです。」

長距離ドライバーや地元のファン以外に、近年ではメディアの情報を頼りに、遠方から“自販機弁当”を目当てに来る新たなファンも獲得し、売れ行きは相変わらず好調だそうです。そんな“自販機弁当”にも、ちょっぴり心配なことが…。

鈴木:「自販機の中は、お弁当を上下させて出すエレベーターが5列あるんです。たまに修理の方に来てもらうんですけど、5列のうち、もうすでに1列はどうしても動かないんですね。もし全部のエレベーターが壊れてしまったら、やめざるを得ないかなと思っています。私も自動販売機も、もうかなりの歳ですが、どちらも体力が持つうちは続けたいですね。

昭和の自動販売機について取材をして気づいたのは、「自動販売機なのに、その先にいる人の温もりが感じられる」ということ。最近の自動販売機といえば、タッチパネルの最新式のものをはじめ、飲料系のものが中心ですが、中にはお菓子やパンを販売しているものなども増えてきています。しかし「便利だな」と思っても、人の温もりを感じることはそうありません。

便利さを超えたあたたかさが感じられる昭和の自動販売機。それも一つの味となって、これからも人々を楽しませ続けてくれることでしょう。

取材協力:
オートパーラーまんぷく
埼玉県久喜市栗橋東4-19-11
TEL 0480-52-2175

あらいやオートコーナー
茨城県稲敷市境島529
TEL 0299-78-2526

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