記事提供:messy

こんにちは。ファイナンシャルおねえさんこと、ファイナンシャルプランナーで社会保険労務士の川部紀子です。

今年も残りわずかとなりました。年末といえば冬、冬といえば雪、雪といえば北海道や東北・北陸ですが、今年は11月なのに東京でも雪が降りました。11月に積雪が観測されるのは観測史上初とのことです。

幸い大きな事故は起きなかったようですが、凍結した路面や濡れた床で滑って転んでしまった方もいたのではないでしょうか。中には打撲や骨折などのケガをした方もいるかもしれません。

私たちは病院に行くと、考えることなしに受付で健康保険証を出してしまいがちです。でも、ちょっと待って。そのケガ、仕事の行きか帰りにしたものじゃありませんか?だとしたら健康保険ではなく「労災保険」の対象になるかもしれません。

ということで、今回は意外に知らない労災保険のポイントについて、超カンタンに解説していきます(ちなみに労災保険とは、労働者災害補償保険の略。長過ぎます!)。

保険証は「健康保険」のためのもの!「労災保険」用ではありません

「病院に行ったらとりあえず保険証を出す!」という流れが定着していますが、よく考えると、これは健康保険証ですから、「健康保険」を使うべきタイミングで出すべきものです。風邪など個人的な病気やケガで診てもらうときに使うものなんですね。

では仕事に関連している場合はどうでしょう。実は、出勤途中や帰り道で転んだ際のケガ、仕事中に負った傷などを病院で診てもらった場合は、労災保険の対象となる可能性があります。

この場合、病院に提出するのは健康保険証ではありません。「もしかしたら、通勤や仕事と関連あるかも?」と思ったら、受付、診察の際にその旨をしっかり伝えましょう。

労災保険には細かいルールがあり、すべてをいちいち挙げるとキリがないので、まずは2つの労災があることと、重要ポイントを合わせて覚えておきましょう。

業務災害:仕事時間中に発生、かつ、仕事が理由のケガや病気であること。
通勤災害:職場の往復中のケガ。でも、思いっきり寄り道をした時点で以降NG(詳細は後述)。

業務災害と認められれば、基本的に自分で治療費を払う必要がなくなります。通勤災害の場合は、少し本人のミスもあるでしょうから、原則200円だけ払うことになります。

また、どちらも、働くことができないほどのケガを負った場合は、ちょい安お給料のような給付もらえます。

また、障害が残った場合の給付、最悪死んでしまった場合の給付もあります。

意外と知らない労災保険の威力

労災という言葉は広く知られていますが、中身について意外に知られていないことがあります。3つピックアップしてみました。

・労災保険料タダ!

給料明細を見ると、保険料や税金が天引きされていますが、絶対に「労災保険料」という項目はありません。労災保険料は全額お勤め先で払ってくれているので、自分は一銭の負担もなく仕事に関する病気やケガの保険に入っているということになります。

自営業、フリーランスには業務災害も通勤災害もないので、お勤めすることのメリットとも言えるのではないでしょうか。小さな会社や個人事業主も人を雇った時点で必ず労災保険に加入するルールがあるので、職場の規模も関係ありません。

・アルバイト、パート、派遣でもOK!


国の保険となると、正社員だけかと思いきや、アルバイト、パート、派遣社員、契約社員など、名称は問わずお勤めしているみんなが対象です。しかも、長期短期は問われないので、1日だけのアルバイトでもOKです。もちろん学生も可。

レストランでのアルバイト中、包丁で指を負傷した方が健康保険で診察・治療を受けて自分で支払った話を聞いたのですが、これはどう考えても業務災害に認定されるでしょうね。

・仕事の帰り道に飲みに行ったらNGだけど、髪を切りに行くのはOK!

職場に届け出しているいつも通りの経路を使って真っ直ぐ家に帰っている途中で負ったケガはもちろん労災の対象になりますが、飲みに行くなど、完全に仕事と関係のないことが始まった場合は、その時点で以降の帰り道はNGとなります。

でも、仕事と関係のない寄り道が、日常生活を送る上で必要な行為と認められれば、元の帰路に戻った後の経路は対象になります。

例えば、「誰でも髪は切るよね」ということで、帰り道に美容室に寄るのはOK。他にも、お惣菜を買う、クリーニング店に寄るなども認められます。

もしものときは、助けてもらおう労災保険

軽いケガから、最悪亡くなった場合まで、本当に手厚い労災保険。しかも、保険料もかからないので、もしもの時はかなり頼もしい保険です。

でも、ビックリする発言をしばしば耳にします。それは、「会社に悪いので言えない」というもの。よく聞いてみると、会社はお金がないので、あらゆるところで経費を削っている。労災を申請するなんてできないというのです。

そんな心配はいりません。会社は、保険料を納めているだけで、あなたの治療費などの給付はしていません。つまりあなたが労災保険を使っても会社の懐は痛まないのです。

また、「面倒くさい」という話も聞いたことがあります。確かに健康保険証より少しの面倒はありますが、それで医療費の3割を自分で負担しなくてはいけないのは大き過ぎます。

当然の権利ですし、何のための労災保険かわかりませんから、軽傷であっても助けてもらいましょう。もしも、最初に健康保険証を出して支払いをしてしまった後でも、労災に切り替えるような手続きもありますので、ご安心ください。

そして、最近よく聞くのが、「これってパワハラじゃないですか!」「ブラック企業だ!」という主張。パワハラや長時間労働が原因でうつ病になったと認められれば、今年大変話題になった電通の女性社員の例もあるように、業務災害になり得ます。

でも、パワハラが原因でお酒を飲み過ぎて病気になったとか、長時間労働のせいで階段から転げ落ちたなど、ちょっと判定が難しそうなケースも少なくありません。

病気やケガという大変な事態になる前に、人間関係や働く環境はどうにかならなかったのか…と感じるケースが以前よりも増えています。

心身ともに健全な状態で勤務していることが前提で、もしものときは労災保険に助けてもらいましょう。そこに遠慮はいりません。

これからどんどん寒くなって、雪が降る日も増えていくでしょう。思いがけないケガを負うこともあると思います。そんなときこの記事を思い出して「このケガは労災保険の対象かな?」と考えてみてくださいね。

川部紀子

1973年北海道生まれ。ファイナンシャルプランナー(CFP(R)1級FP技能士)・社会保険労務士。大手生命保険会社のセールスレディとして8年間勤務。

その間、父ががんに罹り障害者の母を残し他界。親友3人といとこも他界。自身もがんの疑いで入院。母の介護認定を機に27歳にしてバリアフリーマンションを購入。

生死とお金に翻弄される20代を過ごし、生きるためのお金と知識の必要性を痛感する。保険以外の知識も広めるべくFPとして30歳で起業。

後に社労士資格も取得し、現在「FP・社労士事務所川部商店」代表。お金に関するキャリアは20年を超えた。セミナーに力を入れており講師依頼は年間約200回。受講者も3万人超。テレビ、ラジオ、新聞等メディア出演も多数。

twitter:@kawabenoriko
サイト:FP・社労士事務所 川部商店 川部紀子】

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