記事提供:LITALICO 発達ナビ

子どもに障害がある場合、まわりの健常児とわが子を比べたり、同じ障害のある子どもを見て「あの自閉症の子ができていることを、同じ自閉症のわが子はできていない」などと比べてしまうことってありませんか?

私もこのやっかいな“比べる病”からなかなか卒業できないでいます。

「障害児と健常児を比べるのはナンセンス」そう言っていた私自身が…

こんにちは。『子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方』著者の立石美津子です。

私の息子は知的障害を伴う自閉症です。2歳で診断を受けてから月日はあっという間に経ち、もう16歳になりました。

診断された直後の私は、「息子が自閉症である」という事実を受け止めきれず、必死に治療法や教育法を探したり、周りと比べて落ち込んだり焦ったりしていましたが、その後は障害を受け容れ、「息子は息子のペースで育っていくのだ」と考えられるようになりました。

そんな私は、障害のある子どもを持って悩む保護者たちに向けて、「障害のあるわが子と他の子と比べるのは、百害あって一利なし」などと、子育て本やコラムで「比べる病」に対する警鐘を鳴らすようになりました。

けれども、そうやって偉そうに書いている私自身の「比べる病」が未だに完治していなかった…そんな事実を痛感させられた出来事がありました。

子連れのハロウィンパーティー、ちびっ子たちに混ざって16歳のわが子が

先日、地域のハロウィンパーティーに出かけた日のことです。

パーティーは「子連れOK」だと聞いていたので、息子を連れて行きました。でも、16歳なんて年齢の大きい子は我が家だけ。周りはみーんな未就学のちびっこ達でした。

そりゃそうです。健常の高校生なら、部活をやったり、恋人がいたり、友達同士で集まって遊んだりする年齢です。“親と一緒にハロウィンパーティーに行く”なんてことはないでしょう。

でも、うちの子の精神年齢は、実年齢とは大きくかけ離れていて、巷の高校生と同じように青春を謳歌することができません。親しい友達もいません。だから、今でもこういう場に連れていくようにしていました。

当日早めに会場に着いたので、待ち時間の間、私のスマホを渡して遊ばせたところ(※息子は携帯を持っていません)いつものように大好きな“トイレの動画”を見始めました。

自閉症の子は限定された物事に対して強い執着を示すことが多いですが、息子の場合は、そのこだわりが「トイレ」に対して出ています。

水を流す音を聞いただけでトイレのメーカーや種類が分かるほどですが、一度動画を見出すとのめり込んで止められなくなります。

ハロウィンパーティーがスタートしましたが、相変わらず息子はトイレの動画を見続けていました。

「このままスマホを見ることを許してしまうと、場の雰囲気を壊してしまう」

そう考えた私は息子からスマホを取り上げました。

しかし!ここでスイッチが入ってしまったのです。

息子は涙を流してパニックを起こし、それがどんどん酷くなっていきました。

「みんなが楽しんでいるのにまずいぞ」と思った私は、外の空気を吸いに連れ出したり、説得したりしましたが、息子のパニックは一向に収まりませんでした。

完治したと思っていたのに…「比べる病」が再発

ハロウィンパーティーに参加している3~5歳の子ども達は、席に座って楽しそうに食事を食べ、食べ終わると初対面の子ども同士で仲良く交流しています。

それに比べて息子は…泣いて怒って、しまいには「死んでやる!」「電車に飛びこむ!」なんて叫びだす始末。

息子は不安定になったとき、自分の身体を傷つける自傷行為も出るのですが、それだけでなく、「学校辞めてやる」「放課後ディを退会する」「ご飯をもう二度と食べない」「癌になる」「入院する」などと自分に向けて暴言を吐き、言葉でも自傷に走ってしまいます。

息子をなだめながら、叫び声が周りに聞こえやしないかとヒヤヒヤしていた私の中に、黒い気持ちが広がってゆきました。

「周りの小さい子でもお行儀よく座っていられるのに、どうしてうちの子は…」

「比べる病」の再発です。

16歳の自閉症の息子と、うんと歳の離れた小さい子を比べるなんて、ナンセンスだと頭ではわかってはいるのですが、凄く情けなく、悲しい気持ちになりました。

この病はいつまで続く?息子を「情けない子だ」と思った私の心

思い返せば私の「比べる病」が最も重症だったのは、息子が2歳で自閉症だと診断された直後の時期。健常児の姿を見ることが、私の最大のストレスでした。

息子を保育園に迎えに行くと、他の親は保育士から「今日も一日楽しく過ごしていました」と言われているのに、私は担任から「今日も一日、保育室に入れず朝からずっと玄関にいます」と報告を受けます。

「私が仕事であちらこちら訪問し、昼にはランチし、変化のある充実した時間を過ごしているのに、息子は朝からずっとこの状態なんだ」と思うと胸が締め付けられました。

いつしか健常児とその家族に対する「羨ましい」という気持ちは、「妬ましい」→「憎らしい」と加速していき、異常な心理状態に陥っていきました。ついに私は鬱になり、外出するのも嫌になって家に引きこもるように。

でも、そんな私もだんだんとわが子の特性を受け入れ、周りと比較することはなくなっていきました。

だから「卒業できた」と思っていたのです。

それなのに、息子が16歳になってもなお、“比べる病”は消えてはいませんでした

息子と周りの子を比べることは、ミスユニバースに選ばれる人と自分の体型を比べるようなもの。大富豪と自分の生活を比べるようなもの。バカげたことなのに、そんなことわかっているのですが…。

いつもは偉そうに子育てコラムなど書いている私ですが、この日は自己嫌悪に陥り、悲しい気持ちでいっぱいになりました。

最後に主催者の方が息子に「今日は来てくれて本当にありがとう」と言ってくださいました。これに少し救われて帰路につきました。息子はすっかり疲れてしまいその夜はすぐに寝てしまいました。

ハロウィンパーティーで、あなたのことを「情けない子だ」と思ったお母さんを、どうか許してほしいです。

でも、でも…。

一体、いつ治るのかな?この病…。

皆さんの比べる病は完治していますか?

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