日本だけでなく、世界中に存在する「ことわざ」。ことわざには、その国その国の文化が詰まっている。それゆえに、他国のことわざは、日本人には考えつきもしないような組み合わせのものが多数存在する。

誰も知らない世界のことわざ』(エラ・フランシス・サンダース:著、前田まゆみ:訳/創元社)は、そんな世界のことわざを集めた一冊。今回、本書の編集を担当した内貴麻美さんに話を聞くことができた。

――この本の著者、エラ・フランシス・サンダースさんはとてもお若い方ですが、こういった語学に関する本を若い方が書かれているのは珍しいと感じました。エラさんのことは、どこで知ったのですか?

内貴麻美さん(以下、内貴):1作目のLOST IN TRANSLATION(邦訳『翻訳できない世界のことば』)という本が2014年9月にアメリカで発行されたのですが、その1年ほど前に、エラさんが「翻訳できない世界の11の言葉」という記事をネット上に公開されていました。

それが瞬く間に世界中に拡散して、日本のニュースサイトにも転載されていたんです。私もそれを見て、面白いな、イラストが素敵だなと思い、日本で本にできないかな、と考えていました。

そうしたら1年後にアメリカで本になって。ニューヨークタイムズでベストセラーとして紹介されて、アマゾンのレビューも評価が高かった。ぜひ日本語版を出したいと思ったのがきっかけです。

――素敵なイラストですよね。イラストにはことわざが日本語で描かれていますが、元々はどういった形だったのですか?

内貴:現地の言葉の手描き文字はエラさんが描いたものですが、訳した文字は、訳者の前田まゆみさんに描いてもらいました。英語を日本語に置き換える時におしゃれ感が残るか不安でしたが、前田さんがすごく上手に書いてくださいました。

原書は文字のデザインが全部違っていて、向こうの出版社から、そのイメージを壊さないように似せてほしいという要望がありました。なので、前田さんに各3パターンくらい出してもらって、その中から選びました。

英語を消さずに文字を追加する、という案もあったんですが、ページのデザインを壊さないようにと考えた結果こうなりました。

――翻訳を絵本作家の前田さんが担当されているとのことですが、なぜ絵本作家に依頼しようと思ったのですか?

内貴:手書き文字があるので絵が描ける人を、というのと、絵本を描かれている前田さんなら柔らかい文章をいていただけるのでは、と思い、お願いしました。原書の説明文がなかなかに独特で…。

――独特とは?

内貴:エラさんの特徴として、風刺が効いていたり、はっきりと全部を言わないところがあって。日本語にした時に、意味が曖昧になってしまうので、エラさんが効かせたひねりをちょっと戻しました(笑)。

それから、現地に根付いている文化とか、ことわざなので由来があったりして、調べていく中で明らかになっていくことも多くて大変でした。

ことわざ本は原書が10月初旬、日本語版が10月17日と原書とほぼ同時刊行だったので、現物がない中、急ピッチで制作を進めたので大変でした。

――特に印象的だったことわざや、気に入ってることわざはありますか?

内貴:たくさんありますが、1つはポルトガル語の『ロバにスポンジケーキ』です。

キャッチーですし、可愛いなって。大喜利みたいにいろいろと単語を言い換えて遊んでもらいたいです。他にも、深いなと思ったのが、ヒンディー語の『ジャングルの中でおどるクジャクのダンス、誰が見た?』です。

目撃者がいなくても価値があると言えるのか、という意味なんですが、哲学的だなぁと。

ガーナの言葉、ガー語の『水を持ってきてくれる人は、そのいれものをこわす人でもある』も、何かをしようと行動を起こした人を責めるべきではないという意味で、その国ならではの背景もあったりして、印象に残っています。

――左のページの解説文も大変そうですね。

内貴:説明的すぎても興ざめしてしまうので、肩の力を抜いて読んでもらえる本を目指しました。

でも言葉に興味がある人が読むなら、補足情報も面白がってくれるんじゃないかと思って、それも難しくなりすぎない程度に加えてみました。そこも含めて楽しんでもらえると嬉しいです。

――読者の方の反響はどうですか?

内貴:笑いながら読んだという声をたくさん聞けました。1作目は女性ファンが多くて、2作目は男性ファンが多い印象です。2作目の方が意味がはっきりと書かれているので、男性には好ましいのかもしれません。

あと、皆さんTwitter等で実際に使って下さっているようで、身近な現象に当てはめたりしているのを見かけました。皆さんでオリジナルの言葉を生み出したりしてもらえると、とても嬉しいです!

――国にしても個人にしても、それぞれの特徴がすごく現れそうですね!

内貴:そうなんです。読んでいくと、国ごとの特徴もかなり分かります。例えば、日本では青と緑は似た色という印象ですが、チベット語の『青の問いに、緑の答えを与える』は、全く関係ない答えを与えるという意味です。

1作目と2作目を合わせて読むと、国の共通点がより立体的に見える面白さもあります。ちなみに、日本語版では、調べた結果あまり相応しくないな、と感じて掲載しなかったことわざもあるんです。

内貴さんのお話によると、世界中の現地に根付いた言葉だからこその苦労がたくさんあったようだ。

しかしその分、この本一冊で世界中を旅しているような、そんな気分になることができる。ちなみに筆者のお気に入りは、「エビサンドに乗ってすべっていく」と「ガレージにいるタコのような気分」。

どちらも、「えっ!?どういう意味!?」と思わず引き込まれてしまった。

この『誰も知らない世界のことわざ』も、1作目の『翻訳できない世界のことば』も、ぜひ友人や家族と一緒に見て、お気に入りを探したり、仲間内で流行らせて楽しんでほしい。

ふと気がつくと、それが根付いて、1つのことばとして浸透していることだろう。

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