ネットやテレビで話題のニュースに関して、編集部が独自の切り口で取材調査をする「ソコ行く!?ソレ聞く!?取材班」のコーナー。今回も興味深いお話を伺ってきました!

出典Spotlight編集部撮影

今年9月、私立認可保育園「高輪夢保育園」(東京都港区)をはじめとする15の保育園や老人ホームなどを運営する社会福祉法人「夢工房」が、1.4億円を不正流用していたという事実が明らかになりました。

ネット上では、「私立認可保育園の多くでは同族経営がなされており、経営陣はぜいたく三昧な暮らしを送っている」「補助金は日常的に不正流用されている」といった噂が散見されます。

これらの噂の真偽を確かめるため、「病児保育」などの保育に関する社会問題の解決を目指す「認定NPO法人フローレンス」の代表理事を務める駒崎弘樹さんを直撃!保育園経営の裏側に潜むとされる「利権問題」についてお話を伺いました。

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認定NPO法人フローレンス代表理事の駒崎 弘樹さん

利権が絡む事実は“一部”存在する

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——保育園経営の現場では、補助金の不正流用をはじめとした「利権」が絡む事実は、実際にあるのでしょうか?

駒崎さん:結論から言うと、利権が絡む事実は“一部の”私立認可保育園であります。たとえば、私立認可保育園の母体となる社会福祉法人がファミリービジネスとして運営されている場合などがそうです。

ファミリービジネス化している社会福祉法人では、父親が理事長、母親が園長、娘が副園長を務めるという具合に、役員が親族のみになっていることが多くあります。そのような公益法人が、法人として購入した高級車を家族だけで使用している、といったケースは見受けられます。

利権問題はごくまれに存在するが、全体の1%にも満たない

駒崎さん:「夢工房」のような行き過ぎたケースは、相当“まれ”だと思います。統計データはないので、確たることは言えませんが、不正を働く社会福祉法人は全体の1%にも満たないのではと考えています。

そもそも、「夢工房」のように介護施設なども運営している社会福祉法人と違い、保育園のみを運営している社会福祉法人に投下される補助金の額は、それほど大きくはありません。保育園のみを運営する社会福祉法人が私腹を肥やすことは、難しいことだと思います

ファミリービジネス化によって、経営は不透明になりやすい

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——「夢工房」の不正が発生した背景には制度上の“抜け穴”があったのでしょうか?

駒崎さん:「夢工房」のようなファミリービジネス化している社会福祉法人に対しては、ガバナンス(統治)が効きづらいという一面があります。

つまり、上場企業のように株主総会や取締役会が開かれているわけではなく、役員が親族のみで構成されているため、どのような経営が行われているか外からは見えづらいんです。こういった構造が事件の根本にあると思います。

事件をきっかけに、自らの経営を見直した法人も多いはず

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——では、利権問題を防ぐにはどうすればいいのでしょうか?

駒崎さん:「夢工房」のような不正を防ぐために、一般的な社会福祉法人は、厚生労働省に「現況報告書」などの書類を提出しています。ただ、行政機関が書類を通じて「問題なし」と判断した場合、行政機関が深く言及するとは考えづらいです。

また、仮に一般の会社のように監査を入れ、すべての事業主に監査資料を提出させるというのはあまり現実的ではありません。事業主が監査資料を作るにあたっては膨大な手間がかかります。実際には1%にも満たないと思われる不正を発見するために、資料作成に手間をかけさせたら、子どもたちに割ける時間が少なくなってしまい本末転倒です。

「夢工房」の不正を指摘した上で制裁を加えた港区のように、不正が見つかった時点で、行政機関がきちんと取り締まる姿勢を崩さないことが、事件の再発を防ぐ現実的な手段と言えるでしょう。「夢工房」の事件をきっかけにして、自らの経営の仕方に問題がないか、自己チェックした法人も多いはずです。

保護者はどうすれば不正に気がつけるのか

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ーーそもそも数は少ないという前提で、保護者はどうすれば保育園の不正を見つけられるのでしょう?

駒崎さん:保護者が不正に気がつくのは、ほぼ不可能といえるでしょう。ファミリービジネス化している社会福祉法人について、外から内情をうかがい知ることは難しいという話を先ほどしました。それはつまり、余った補助金を何に使っているか分からないということになります。

保育園を経営していると、額は決して大きくありませんが剰余金は出るものです。剰余金は教材の購入費などに充てられることがほとんどですが、たとえば、良からぬ考えを持つ社会福祉法人が、その剰余金を使ってアダルトDVDを買ったとします。でも、そのアダルトDVDを保護者が見つけることはないですよね?

つまり、保護者が明らかな不正を発見することはかなり難しいんです

運営状況の悪化から不正を疑うことはできる

駒崎さん:ただ、運営状況の悪化から不正を疑うことはできるかもしれません。

たとえば保育士がテレビを子どもに見せっぱなしにするという行為。保育園は子どもと保育士のコミュニケーションを通じて、子どもの考える力やコミュニケーションの力を養う場所ですので、テレビの見せっぱなしは許されません。

なにかしらの利権によってマネジメントが破綻し、必要以上に人件費の削減され、人手が足りていないのであれば、起こり得ることでしょう。あるいは他の園に比べてスタッフがすぐに辞めている場合は、不当な原因で労働環境が悪くなっている可能性も考えられます。

実際は、多くの保育園が厳しい経営を強いられている

――利権問題が話題になる一方で、他の保育園はどんな状況に置かれているのでしょうか。

駒崎さん:「夢工房」の利権問題がメディアで大きく取り上げられましたが、ほとんどの保育園は、かなり厳しい経営状況の下、なんとかやりくりしながら施設を運営をしています。余った補助金も人員の採用費用に回すなどして、不正に流用することはほぼありません。

不正を働く一部の社会福祉法人がきっかけで、保育園業界に対する悪いイメージが広がってしまうのはとても残念なことです。利権問題も由々しき問題ですが、日本の保育の現場が抱えている保育士不足問題にこそ、注目してほしいです。

【取材協力】認定NPO法人フローレンス
http://florence.or.jp/

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