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『東京No Vacancy』(犬上すくね/白泉社)

男にとって、最も不可解で分析不可能なもの。それが女心である。

なんとなくいい雰囲気になった女性に手を出そうとしたら、「そんなつもりじゃない(怒)」と幻滅され、かと思いきや、大事にしすぎたあまり「わたしのこと好きじゃないの(泣)」と悲しまれる。

据え膳食わぬは男の恥、なんて言うものの、いざというときの立ち居振る舞いは難しいものだ。そんな男と女の微妙な駆け引きを描いたマンガがある。それが『東京No Vacancy』(犬上すくね/白泉社)だ。

本作の主人公は、九州に住み、月イチで東京に出張でやって来るサラリーマン。彼の目下の悩みは、出張手当が少ないこと。

会社から宿泊費として支給されるのは、1万円まで。それなのに空前のホテル不足の煽りで、かろうじて空いているホテルは予算オーバーなところばかり。そんな彼に手を差し伸べるのは行きずりの女性たち。

バーで隣に座った女性や、街中でぶつかった女性…。時に積極的に、時に流されゆくままに、彼は宿泊先を確保していく。

本作がおもしろいのは、彼の目線だけでなく、宿泊先の住人である女性側の目線でも事の顛末が描かれているところ。そして、女性側のエピソードを読むと、「そんな風に考える女性もいるのか!」と目からウロコなのである。

たとえば、第1話で主人公が泊めてもらうことになった女性。成り行きで彼女の家に泊まることになった主人公は、彼女がお風呂に入っている間にあろうことかそのまま寝入ってしまう。

もちろん、やる気満々だった彼女からすると、とんだ肩透かし。挙句の果てに、寝ぼけた主人公が抱きついてくるもんだから、まさに生殺し状態だ。パンツおろして、勝手に使ってやろうかしら――。彼女がそう思うのも仕方がないだろう。

女性にも性欲はある。本作を読むと、そんな当たり前のことを思い知らされる。女性だって、いい男がいれば自ら声をかけるし、一夜限りの関係を求めることもあるのだ。

しかし、男性のそれとは異なり、女性の性欲というものは非常にわかりづらい。それは、女性のその部分を明らかにすることがはしたない、とされてきた時代背景も関係しているだろう。

本作は、そんな時代を経て、現代を生きる女性の性を明るくコメディタッチに描いているのである。

ただし、カラダの関係を持つならば、あくまでも双方の合意の上で行うこと!必ずしも、お泊まり=セックスOKということではない。

だからこそ、相手の表情や雰囲気の微妙な変化を読み取り、心の中を読み解くことが求められるのである。…そう考えると、なんだかますます女心が複雑なもののように思えてくる。

あぁ、いっそのこと、現実世界も本作のように、双方の視点で見られたら楽なのになー。

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