出版不況といわれる今の時代に、創刊3年目で部数が倍増している女性誌をご存じだろうか?晋遊舎が発行している『LDK(エル・ディー・ケー)』は、コスメから家電まで暮らしで使うモノを徹底的にテストする実用マガジンだ。

スポンサーではなく読者の目線に立った誌面づくりが30~40代の女性から圧倒的な支持を得ている。スポンサー広告に一切頼ることなく自由かつ正直に、独自の路線で読者を増やし続けている雑誌の作り方とは?編集長の木村大介氏に話を伺った。

女性誌にはめずらしいクライアントではなく読者のための雑誌

――2013年に『LDK』を創刊した理由をまず教えてください。

木村大介編集長(以下、木村):当社は、マニア向けの『家電批評』や一般向けの『MONOQLO』などモノ雑誌を発行しているのですが、『MONOQLO』のほうは女性読者も多く読者アンケートでも女性の声が増えてきたんですね。

それで「女性版のモノ雑誌もありだよね」という話になり、最初、隔月で出していた『LDK』を月刊化したのが2013年です。

実用性の高い女性誌は『ESSE』や『Mart』など既存の強い雑誌もありますが、『LDK』は部数が順調に伸びていて創刊時7万部だったのが現在12万部前後まで増えてきています。

最新号の1月号は「mini版」もあるので合計17万部を超えています。

――雑誌の休刊が相次いでいるなか大健闘していますね。

木村:出版市場自体が縮小傾向にあるのに売れているので、不気味な会社と思われているかもしれません(笑)。『LDK』が他の女性誌と差別化できたのは、従来の雑誌のビジネスモデルを完全に無視しているからです。

クライアントのためではなく読者のための雑誌をつくりたかったので広告収入は一切あてにせず、ガチンコで比較検証して本当にいい商品だけを紹介しています。

商品は、しっかり評価するためにメーカーから借りずに購入することがほとんどなので、そのコストは相当なものです。ですから正直言って『LDK』は、業界の人が思うほど儲かっていないと思います(笑)。

書きたいことを書くためにタイアップ広告はあえて一切入れない

――厳しいテストの結果、ベスト1に選ばれた商品の広告も入っていないですね。

木村:それもないですね。たとえベスト1に選ばれた商品でも、メーカーが絡んだ途端に何かしらオーダーが入ります。例えば我々が検証したデータの結果よりも、メーカー側が宣伝したい商品の特徴が別にあったりするわけです。

そういうことも一切関係なくこちらで自由に商品の良し悪しを検証するためには、メーカーとはあまり関わらないことが大事なんですね。

タイアップ(記事広告)の話もたくさんいただきます。びっくりするほど高額なタイアップ広告の申し込みもありますけど、それを一回受けてしまうと雑誌として終わってしまう。そういう意味ではかなり硬派な雑誌ですね。一切の妥協を許しませんので。

でも収益は少ないので、『LDK』で反響が大きかった特集をムックに再編集して販売するなどして採算のバランスをとっています。『LDK』を出し続けるために、ムックを売ってナンボの世界でなんとかやっています(笑)。

クレームは今のところほとんどありません

――テストした商品のマイナスポイントも遠慮なく書いていますが、メーカーからクレームが入ったりしませんか?

木村:それはほとんどないですね。検証の仕方に明らかなミスがあった際に指摘されたことはありましたけど、クレームというのはまずないです。

私たちがやっていることは、こういう条件で、こういうテストをしたら、こういう結果が出ましたよという報告なので。

そういう意味ではちょっと報道に近いところもあると思います。ニュース性というか、ジャーナリスティックな視点がないとできない仕事ですね。あえて難点を言うと、メーカー側の考証とか一切ないので、テスト内容の確認作業は毎号とても緊張します。

読者の声を重視した読者のための雑誌

――読者の主な年齢層は?

木村:30代、40代が圧倒的に多いですね。9割以上が女性で読者の声もとても重視しています。読者はがきやWEBサイトのアンケートに回答してくださる方がものすごく多いんですよ。

「このテストの仕方が甘い」とか「私が気にしている商品が入ってなかった」とか「こういうテスト項目もわかるけど、こういうポイントも気にしている人が多いですよ」とか、いろいろ発見があって面白いです。

そういった読者からの要望や意見や感想はとても参考になりますし、なんとなくやった小特集がすごく引きがあったから改めて大特集で取り上げたり、臨機応変、読者の声を生かした雑誌づくりをしています。

商品テストに協力してくれるモニターは数百人

――実際に商品をテストしているのは編集者やモニターの方なのでしょうか。

木村:そうですね。読者層の年齢に近い編集部員が12人と主婦のモニターが数百人いますので、アンケートや検証テストに協力してもらっています。編集部員は独身が多いんですが、この雑誌をつくっていると相当なモノ好きになるんです。

僕自身は38歳で郊外に住んでいて子どもが2人いて、と読者層にかなり近いので、家の中にあるモノを見回しているとヒントが見つかることもあります。

休みの日は家族と一緒にスーパーに行って、店頭の品揃えや新しい商品をチェックするのも習慣になっています。そういう日常感覚はすごく意識していますね。

編集部員はみんなモノを見る目が厳しいです。すごくこだわりを持って買い物している人も多いですね。モノ好きが高じて散財している人も結構います(笑)。

――企画はどのように決めているのでしょうか?

木村:ネタ選びや企画立案は基本的に編集長の仕事だと思っています。やりたいことがある人はいつでもメールくださいと言ってありますけど、編集部員にはそういうことを考えるよりも面白い誌面づくりにパワーを使ってほしいんですね。

第一特集、第二特集、第三特集が柱で、ほかに小特集が2つぐらい。あとは同じジャンルの商品を徹底比較する並列テスト連載や読み物もありますが、特集はギリギリまで入れ替えしたりしています。

他のモノ雑誌の編集者に聞くと取材前にラフ(記事のレイアウト)を引いて、こういう話にしようと事前にストーリーを決めているみたいですけど、『LDK』の場合は商品の検証結果がわかってから誌面構成を考えています。

検証結果が面白ければページ数を増やします。

ですからどんなボリュームの特集にも対応できるように、検証中のカット写真はプロのカメラマンにしつこいほどたくさん撮ってもらっています。そのぶん制作費はすごくかけていますが、その細かさがこの雑誌の強みですから。

【後編】へつづく。

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