記事提供:AbemaTIMES

11月25日から12月1日までの期間が『犯罪被害者週間』であることを御存じだろうか。

事件の被害者、そして被害者遺族が置かれている状況や、事件後の被害者らが穏やかに生活を送るための配慮などについて国民の理解を深めることを目的に、全国で様々な啓発イベントや講演会が開催される。

出典 YouTube

■「なくしたものの大きさを、訴え続けたい」

「友花里は今もきっと、何かを訴えたい、伝えたいんだと思います」

2009年に大学4年生だった長女の荻野友花里さんが殺害された事件について、母親の美奈子さんは講演会でこう訴えかけた。

事件は当時52歳の男が千葉県松戸市のマンションで友花里さんを脅し、現金などを奪ったうえ、殺害して放火。判決は無期懲役だった。

「こんな悲惨な目に遭う人がもうこれ以上出てほしくないと、きっとそう思っているあなた。母もあなたの命を、被害者の命の意味を、なくしたものの大きさを、訴え続けたいと思います」

犯罪被害者には、事件による直接的な被害のほか、事件後の精神的ショックや体調不良など、様々な問題を抱えている人も多い。

「あなたの命を奪われた、そのことを母は今でも受け入れることが出来ないのです。あなたと話がしたい。一緒に大きな声で笑いたい。どう生きていくか分からなくなってしまったあの日から7年が過ぎました。今もあなたが生きていた日常には、到底戻ることが出来ません」

美奈子さんはそう言って講演を締めくくった。

■「息子の命のために、自分が何をできるのか考えた」

今から20年前の1996年、東京のJR池袋駅のホームで当時21歳の大学生、小林悟さんが殺害された事件。

「息子の命のために、自分が何をできるのか考えた結果だ」

悟さんの父親である邦三郎さんは、自ら犯罪被害者家族の会を立ち上げた理由についてそう話す。

銀行員だった邦三郎さんは、すべてを投げ打って被害者の会を設立した。

その原動力の中には、加害者に対する復讐心も大きかったのかと聞いたところ「当時は復讐の気持ちもあったが、恨みを捨てないと法を語れないと気づいた。法を学ぶにつれて、犯罪者の更生を考え、犯罪防止のためにどういったことが出来るのかを考えていくようになった」と振り返る。

被害者たちは苦しみからどう立ち直っていくのか。

邦三郎さんは「まず思いっきり泣いた。そして命について多くの時間を割いて考えた。それからは笑うことが重要。1年間程笑うことができなくなったが、やはり命は返ってこないので、被害者が強くなるしかない。逃げてはならない。自分が頑張らないと息子の命が無駄になると思った」と語る。

ジャーナリストの堀潤氏は「顔を出して、名前を出して、声を発信していくことがどれだけ怖いか想像もつかない。小林さんの行動は尊敬に値する」とコメント。

「震災等でもそうだが、『被災者』という一言でくくられるのは間違っていると思う。被害者だったり遺族だったりというワードで語られることで、社会から見えにくくなってしまってはいけないと感じる。どうやって一人一人を見て向き合っていくのかを考えることが重要」と訴えた。

PTSDなどの研究を専門としている精神科医で、全国被害者支援ネットワーク理事を務める飛鳥井望医師は、犯罪被害者遺族がおかれている実態について「それまでの生活が一変する。それによる精神的な衝撃、そして法律や裁判等のよくわからない世界に放り込まれる。周りに同じ被害にあった人がいる自然災害の被害者に比べて、犯罪被害者は精神的に孤立しやすい。噂話等によって引っ越しを余儀なくされるなど、二次的三次的な被害が起こりやすいのが犯罪被害者の特徴である」と説明する。

邦三郎さんが立ち上げた被害者の会については「小林さんの事件は20年前で、その時は被害者支援などない状態だった。小林さんが初めて一人で立ち上がって声を発信しだしたことでその輪が広がって、被害者の会が設立したり、専門家が増えたり等、被害者をどう支援していくのかということが少しずつ考えられるようになってきた」とした。

■「いまだに助けを求める人に完璧に救いの手を差し出せる環境がない」

その後、邦三郎さんら被害者の発信がきっかけとなって、ひとつの法律ができた。

冒頭で述べた『犯罪被害者週間』のきっかけにもなった法律、犯罪被害者等基本法が2004年に制定されたのである。

これにより、国から犯罪被害者に民間の支援センターが住居や仕事のサポート、カウンセリングなどを行うことができるようになった。

また、それまで事件の当事者である被害者は裁判に出席できなかったが、この法律により被害者が裁判に直接参加し、生の声を裁判官や裁判員に伝えられるようになった。

邦三郎さんも「これが出来たおかげで、被害者について考えなければいけない、という基盤ができた」という。

飛鳥井医師は「小林さんの事件から20年間が経ち、日本は少しずつ成長し、今では色々な政策が展開されるようになった。ただ、一つお願いしたいのは、相談できる場所が必ずあるので、被害を受けた方は一本電話をしてみて欲しい。被害者一人一人にどういった支援ができるのか、日々我々は考えている」とコメント。

邦三郎さんに今後の目標を聞くと「いまだに日本では助けを求める人に完璧に救いの手を差し出せる環境がない。少しでもいい環境をつくれるように、一つでも法律を正しい方向へ向けていけたなら、私の命の意味が出てくると思う」と語った。

(C)AbemaTV

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