跳び箱を飛んだことがありますか?

たいていのおとなでしたら小学校のころに授業で飛んだことが一度はあるかと思います。

では、そのときの感想はどうでしたか?

得意な人にとっては楽しい授業だったでしょうし、苦手な人にとっては苦痛の1時間になっていたかもしれません。いずれにしても割りとのんきな感想を持っている人が多いのではないでしょうか?

しかし近年、この「跳び箱」についてあまりのんきではない、まったくべつの感想が世間で騒がれています。


跳び箱は危険だ――


小学校の授業で行う単純な器械体操であるはずの「跳び箱」が危険であるといわれている――実はこれには大きな理由があります。

なぜなら近年、この体育の授業での跳び箱事故が多発しているというのです。本日はこれに対しての世間の反応などを見ていきましょう……

跳び箱による事故の件数は、なんと……

日本スポーツ振興センターの調べによると、2015年度に跳び箱による事故は小学校だけで1万4887件も起きているといいます。

跳び箱といえば体育の授業で行うことがほとんどです。こんなふうに体育の授業中に起こってしまう事故といえば少しまえに「組体操」による事故や危険性が騒がれたことは、誰の記憶にも新しいことだと思います。

しかし、そんな組体操の事故とくらべても、跳び箱による事故は圧倒的に件数が多いということをご存じですか? 具体的な数字をあげると以下の形になります。


・組体操による事故(2015年)……5629件
・跳び箱による事故(2015年)……1万4887件


なんとその数は約2倍以上というから驚きです。ちなみに……

体育の授業においての組体操の現在の状況は?

事故が多く危険だといわれている体育の授業の組体操は、2016年の頭に話題になった事故を受け、現在では実施していない小学校が多数あります。
また体育の授業で組体操を行う場合も難易度が高く、危険だと思われる技(「ピラミッド」や「タワー」など)は行わないのが通常になってきています。

では、これとおなじように跳び箱も行わないようにするか、行う場合も簡単で危険性の少ないものだけを行うべきかといいますと、一概にそうはいえません。その理由は……

体育の授業においての「組体操」と「跳び箱」の違いは?

実は体育の授業というくくりで考えたとき「組体操」「跳び箱」には圧倒的な違いがあります。

もともと小学校の学習指導要領では、体育の授業で跳び箱をふくむ「器械体操」を行うことが義務づけられています。つまり跳び箱は小学校で実施しなければいけない必須科目だということです。

しかし、それに対し組体操には実施の義務がありません。各学校や教育委員会の判断で実施の有無を決定しているにすぎないのです。

そのため、事故が起こった場合は「事故が多く危険だから」という理由で学校側が独自に判断し、今後の授業で取り扱わないという方針をとることができるのです。

ですが、これとおなじ理由では跳び箱を中止することは容易ではありません。なぜなら「実施する義務」があるのですきあら。こがこの2つの違いということでしょう。

ただし一方で、「跳び箱」が義務づけられ「必須科目」として設定されているからには充分な安全性は確保されているはずです(もちろんどんなスポーツにも危険はつきものですが)。

しかし、この安全であるはずの跳び箱で実際に年間約1万5000件近くの事故が起こってしまっているのです。そこにはどんな原因があるのでしょうか?

小学校で跳び箱による事故が多い原因は?

跳び箱や組体操において事故が起こってしまう原因は、体操競技や器械運動を専門的に勉強していた教師が小学校にはいないということが第一に考えられています。

通常、部活などではサッカーならばサッカーの専門のコーチ、野球ならば野球の専門のコーチがその競技を教えるという形をとっています。そうすることにより、コーチ側はその競技中に起こり得る事故の予想を立てることが容易にできます。

しかし小学校の先生の場合は、そういった専門のコーチというわけにはいきません。すべての種目ないし科目をオールマイティに教えるという形をとっています。

そうなると、とうぜん専門でないため教師側は「跳び箱とはこういうものだ」というざっくりとしたことは理解していても「跳び箱という競技においての危険なポイント」をすべては把握して授業にのぞむことは不可能です。

また同時に体育の授業はクラス単位で行われます。そのため、どうしてもひとりの先生だけでは手や目がたりなくなってしまいます。その結果、どうしても目がいき届かない部分がでてきてしまうのです。

これらが学校の体育の授業における跳び箱事故の原因だと考えられています。

しかし事故の原因はそれだけではありません。
こういった事故が起こってしまう原因は教える側だにあるわけではないのです。

たとえば小学生の跳び箱事故において「授業を受ける小学生の側にも問題がある」と、ある書籍では訴えています。その書籍とは……

『跳び箱に手をつき骨折する子ども: 子どもの「運動機能の低下」の実態』

ポプラ社から出版されている柴田輝明氏による著書です。
この書籍には、驚くべきことが書かれています。

それは「子どもの老化現象」についての記述です。

著書によると、最近の子どもは運動機能が低下しているだけでなく、老化現象がすでに始まっているかもしれないというのです。たとえば、こんなチェックシートがあります。

□ 挨拶ができない
□ 片脚立ちができない
□ くにゃくにゃして立っている
□ 腕がまっすぐ上がらない
□ しゃがめない
□体育座りができない
□ イスにきちんと座れない
□ うつむいて歩いている
□ 歩き方がロボット歩き・不自然
□ 危険を避けることができない(転んだときによけられずケガをする、受け身がとれないなど)

出典 http://ddnavi.com

これらは「子どものロコモ」と呼ばれる状態だそうです。では……

ロコモってなに?

ロコモ――耳慣れない単語ですが、これはロコモティブシンドローム(locomotive syndrome)の略のことで、日本語にすれば「運動器症候群」つまり「運動機能が低下している状態」をさしています。

運動器の障害――これはつまり以下のようなケースがあげられます。
しかしこのロコモという状態は単純に運動機能が低下した状態というだけにとどまりません。この「ロコモ」という状態は、厳密には「運動器の障害により要介護になるリスクが高い状態」になっていることをさしています。運動器の障害の具体例は以下のもの。


・加齢による筋力の低下
・関節などの病気
・骨粗しょう症による骨のおとろえ


そして、要介護が必要な状態――これらは通常、高齢者に対して使用される言葉です。加齢、関節の病気、骨粗しょう症などといった言葉は、普通に考えて小学生に使用されるワードではありません。

しかし近年、こういった「ロコモ」の状態にある子どもが増えていることがこの著書には書かれています。つまり現代の子どもは老化現象が進んでしまっているということです。

また著書によると全体の3割~4割の子どもがこのロコモの状態にあるといわれています。たしかにそういった目で、あらためてチェックシートを見ると「老化現象の症状」に近い項目をいくつか発見することができるだろうと思います。

こういった事実も踏まえて体育の授業を行わなければ今後もさまざまな競技で事故が起こってしまうでしょう。

跳び箱事故に対してのTwitterでの反応は?

たとえば、こんな意見があります。

めんどくせぇ――言葉は雑ですが核心をついたひとことだなと感じます。

親御さん目線の意見はわかりますが、それに対してやいのやいのと文句だけをならべるだけというのも、どこか違う気がするからです。

ただし、こういった意見があることも事実です。そして、跳び箱に危険性があるというのもれっきとした事実なのです。ですので……

安全に配慮したうえで行い、これくらいに単純な笑い話にできるくらいがちょうどいいのかもしれません。

まとめ

授業で起こる事故や怪我については、親御さんは絶対にあってはならないと考えているはずです。安心して預けているはずの学校で事故が起こりとり返しのつかないことになってしまう――それならば「事故が起こらないように危険な授業を行わなければいい」と考える気持ちも充分にわかります。

しかし、果たしてそれで良いのでしょうか?

以前、実施された「ゆとり教育」という制度が失敗に終わってしまったことは周知の事実です。ここでまた「危険だから行わない」という制度をつくってしまえば、それこそ「運動におけるゆとり教育」が行われてしまうことになってしまうような気がします。

そしてその結果は、まさに「おなじ轍を踏む」というものになり、運動能力がいちじるしく低下し子どもたちが将来的にできあがってしまいます。現状でさえ「ロコモ」の子どもたちが増えているというのに……

まずは基本として「跳び箱は義務である」ということを親御さんが認識すること。そして教師側は「ロコモの子どもが増えている」ということと「跳び箱による事故が増えている」という事実をしっかりと認識すること。これらの両方を双方が認識することが、今後事故を減らしていくうえでもっとも大切なのではないでしょうか?

「危ないから頭ごなしに中止する」のではなく「危ないから安全に配慮して万全の態勢で行う」ことを考えて、子どもの安全を守っていけるようになってほしいと個人的には考えます。

以前の組体操は事故による関心が高かったのですが、今回の跳び箱に関してはあまり関心を持たれていないため、しっかりとした対策や安全に行うための基準のようなものができていないというのもひとつの問題なのかもしれません。

今後は、親、子ども、教師――ひとりひとりのすべての人が「どんなものでも運動には危険がつきものだ」というごくあたりまえの事実を持てますように。そして、そんな安全な授業が行われますように。

うのたろうでした。

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