今日は社会問題のお話です。ここ最近、人気アイドルや人気声優などへのネット上での殺害予告が世間をにぎわせています。直近で起こった殺害予告は2件。


アイドルグループ「仮面女子」の桜雪さん。
人気声優の水瀬いのりさん。


文字にすると事実だけが単純ですが、実際問題、険呑です。手を打たなければ大惨事を招くことにもなりかねません。

しかしこのような殺害予告が起こったとき、警察や所属事務所はタレントを守るためにどのように対応してくれるのでしょうか? また一方でこういった犯罪予告をしてしまう人間の心理状況とはいったいどのようなものなのでしょうか?

リアルとネットの堺がなくなってしまった昨今。
これは現代社会の大きな問題といえることなのかもしれません……

CASE:1/「仮面女子」桜雪さんへの殺害予告

2016年11月25日、アイドルグループ「仮面女子」の桜雪さんが、男性からの殺害予告を受けていたことがわかりました。

桜雪さんは東大出身のアイドルという肩書を持ち人気を博しています。
そんな彼女への殺害予告は彼女自身のTwitterに送られていたそうです。

もっともまったく知らない人から、とつぜん殺害予告が届いたわけではありません。
あるひとりの男性からの嫌がらせによる書きこみ被害は2016年の春ころから起こっていて、それが徐々にエスカレートしていった形になります。

男性はもともと桜雪さんのファンだったそうです。そんな彼が半年以上も嫌がらせをし続けて、とうとう「コロスゾ」という投稿を2016年11月26日に彼女に対して行いました。

CASE:2/水瀬いのりさんへの殺害予告

また同時期、水瀬いのりさんにもネット上で殺害予告があったそうです。
彼女は人気声優であり、NHK連続テレビ小説「あまちゃん」に出演(アイドル・グループ「アメ横女学院」成田りな役)&同ドラマ挿入歌「暦の上ではディセンバー」を歌っていた歌手で、多方面で人気のある女性です。

この殺害予告は2016年11月25日に「イベント出演キャンセル」「ライブ中止」という形で公式HPで発表され発覚しました。

彼女への殺害予告は台湾からの投稿とみられるそうです。
こちらはネット掲示板への書き込みが行われていたようす。

これらの殺害予告を受けて、警察や事務所はどのような対応をしたのでしょうか……

殺害予告に対する警察や事務所の対応は?

こういった殺害予告に関する問題では、本人を守るため警察や事務所が対応をすることになります。しかし、こういった場合の対応は、明確なマニュアルがあるわけではありません。そのため、事務所やケースによってまちまちです。たとえば……

→ CASE:1/桜雪さんの場合

殺害予告を受け、事務所側が警戒

2016年11月25日、犯人の男がライブ会場にあらわれる

スタッフが対応

スタッフ負傷

事務所が男を取り押さえ、警視庁万世橋署に引きわたす

その後、傷害容疑で被害届を提出、署が詳しい動機などを捜査 

→ CASE:2/水瀬いのりさんの場合

事務所はシングルCD「Starry Wish」の発売イベント出演をキャンセル、台湾で12月に行われる予定だったライブ開催中止を公式サイトで発表(2016年11月25日のことです)。

今のところ日本の警察が動いた形跡はありません。
しかし、一方で台湾で犯人が逮捕されたという情報もネットで飛び交っています。

※ただし現在、リンク先のページ(中国語ページ)は閉鎖してしまっているため、真偽のほどはさだかではありません。

この水瀬いのりさんのケースでは、犯人の殺害予告に対し「警察に相談したうえで、本人とお客様の安全を最優先」することにしたといいます。その結果が、イベントのキャンセルやライブの中止という結果なのでしょう。

水瀬いのりさんは、この騒動について「とても悲しく残念な気持ちです」とコメントをされています。

たしかに、このような形でイベント出演がキャンセルになってしまったり、予定していたライブが中止になってしまうということは本人にとっては不本意であり悔しい結果ということになってしまうでしょう。
しかし、水瀬いのりさん本人や関係者や来場したファンの方々全員を守るためにはそうするよりほかないということも事実です。

桜雪さんの場合、水瀬いのりさんの場合を見てわかるように、いずれにしてもまずは警察が動くということはないようです。そのため最初は警察に通報だけして「まずは事務所がなんとかしよう」というのが基本的なスタンスであるようです。しかし……

過去に刺傷させられてしまったアイドルも……

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①冨田真由さん刺傷事件~概要

一方で、実際に被害にあって怪我をしてしまったアイドルもいます。
たとえば2016年5月、冨田真由さん刺傷事件は記憶に新しいのではないでしょうか?

これは2016年5月21日の17:05ころ、東京都小金井市で起こった事件です。
アイドル活動をしていた冨田真由さんが元ファンの男性に刺されてしまいます。そして彼女は一時、意識不明の重体になってしまいました。

彼女の被害は甚大でした。
首や胸などを中心に20カ所以上をナイフで刺されたのです。そのなかでも首付近の傷がとくに深く、彼女は事件から約2週間ものあいだ意識不明の重体に陥ってしまいました。
もっとも、さいわいなことに心臓など内臓への損傷がなかったため、彼女は一命をとりとめることができました。

これに関しては前兆があった時点で彼女は警察に相談をしていたそうです。そのときの対応というものは……

②冨田真由さん刺傷事件~事件当日のようす

この事件が発覚したのは被害者である冨田さん本人による警察への通報でした。そのときの通信記録に以下の会話が残っていたといいます。


「はいれませんよ――」


これは「ライブ会場にはいることができない」といった意味だったそうです。それからすぐに彼女の叫び声が続きます……


「きゃああああ! 助けて!」


なんと彼女は殺害予告をしていた犯人と接触してしまっていたのです。その結果は、ニュースにもなったあの大きな刺傷事件です。

犯人である20代の男性はその後すぐに殺人未遂容疑などで送検されました。そして専門家による精神鑑定を実施。事件当時に刑事責任能力があったのか? ということを調べています。

この事件では、彼が犯行に及ぶ以前から、そのきざしがあったそうです。それは……

③冨田真由さん刺傷事件~犯人が犯行に及ぶまでの心理状態

男性はこの事件が起こる約4ヶ月まえから冨田さんのTwitterに何度も書きこみを続けていたそうです。彼のいいぶんは、こうです。


「冨田さんが好きだった。結婚したかった」


最初は愛情からの書きこみだったようすです。そして彼は冨田さんに腕時計などをプレゼントしたそうです。

しかしこのプレゼントは彼女には届きませんでした。
事務所の方針なのか、彼女の意思なのかはさだかではありませんが、彼が送ったプレゼントは愛する相手に届くことなくふたたび自分の手に送り返されてしまったのです。

彼はこの事実に激怒します。


「恥をかかされた」


そう感じ、今回の犯行に及んだということです。

④冨田真由さん刺傷事件~警察の事前の対応は?

もっとも犯人側が事前にこれだけアクションを起こしているのに、被害者側がなにも対策をしていなかったというわけではありませんでした。

冨田さんはTwitterへの書きこみなどがあった時点で以前から警察に被害を受けている旨を相談していたそうです。その際には自分にしつこくしている男性(犯人)についての名前をあげていました。
相談は一度だけではありません。何度も相談をし、事件2日まえにも「あさって(2016年5月21日)に小金井市でライブを行う」という旨まで警察に伝えていたそうです。

しかし警察側は、これをストーカー被害として扱ってくれなかったといいます。さらに過去の類似相談事例のなども警察内で共有されることもありませんでした。

ライブの報告についても「なにかあったら110番通報するので対応してください」というに彼女の言葉に「110番通報があったら対応します」ということを伝えるにとどまっていたそうです。

そして当日のライブは警察による警備が配置されるようなことはありませんでした。

このような警察の対応は残念ながら多々あります。
事件が起きないと動いてくれない――そういった対応の悪さ(といわざるを得ません)にも今回の事件の原因はあったのかもしれません。さらに……

AKB48握手会での惨劇

こちらは殺害予告ではありませんが、アイドル刺傷事件として有名なものが2014年のAKB48のあの事件です。
これはAKB48の握手会イベントに「ノコギリ男」が乱入し、メンバーに次々切りかかったということで記憶に残っているのではないでしょうか?

握手会に乱入した犯人は、川栄李奈さん、入山杏奈さん、そしてその2人を守ろうとした男性スタッフを切りつけたのです。最終的に犯人は、周囲のスタッフに取り押さえられ、殺人未遂の容疑で現行犯逮捕されることになりました。

この犯人も精神鑑定が行われ責任能力が問えると判断され、その結果、傷害罪および銃刀法違反罪で起訴さることになりました。

さいわい、こちらも命に別状はなく、傷を縫合し翌日には3人はぶじ退院することができました。

しかし、この事件で恐ろしいのはここから先です。
このときの犯人は、なんとAKB48についてあまり詳しくなかったそうです。

冨田さんの事件のように、犯人はこの2人のファンではありませんでした。それどころか2人に恨みがあったわけではなく、むしろ「誰それ?」という状態だったのです。

彼が川栄さん、入山さんを選んだ理由は「ただ単にそのレーンは参加者の列が短かったから」ということです。つまり「誰でもよかった」ということなのでしょう。非常に恐ろしい事件です。これらの事件を見てわかるように……

犯人の動機や殺害予告に及んでしまう心理状況とは?

上記のさまざまなケースを見てわかるように、犯行の動機はひとつではありません。人によって、ケースによってさまざまです。

たとえば冨田真由さんのケースでは「一方的な愛情がからまわった結果、強行手段に及んでしまった」ということ。
水瀬いのりさんのケースでは「ファンが集まる掲示板で書きこみをしたけど反応がもらえなかったため、みんなからの注目を浴びたかった」ことが犯行に及んだ理由になっていました。

さらにAKB48刺傷事件では、理由なく「有名人だから」ということで無差別に襲われてしまうケースもあります。これらを見ると犯人の心理状況を平均すると「そのタレントに対して目立った行動をとりたい」ということになるのではないでしょうか。

どんな形であれ自分の存在をタレントや世間に知らせたいという承認欲求のようなものといえるのかもしれません。

そして、このように殺害予告などをする犯人に対してファンの声は……

このような殺害予告に、ファンは憤りを隠せないようすです。そして……

犯行予告に対してできる対策はあるのか?

こういった事件を見てもわかるように、このような事件はなにもアイドルや人気声優だけに起こる問題ではありません。有名人なら誰でもいい――そんなふうに考える犯人もなかにはいるということです。

事件はアイドルとファンとのあいだに起こったトラブルではなく、有名人だからこそ起こってしまったいわば不慮の事故ということになります。

そうなってくると本人たちには対策のしようがありません
有名人に対して事務所側がセキュリティ管理をしっかりとしなければいけないのかもしれません。

実際AKB48の場合、事件以降、警察からの指導のもとイベントやコンサートでは警備強化や金属探知機などを使用した安全対策を行っています。そしてAKB48劇場での公演や握手会も厳戒態勢のもとで行われているのは周知の事実です。

また、このような殺害予告をする犯人の心理状態や逮捕に関して、ネットでの声が多数きこえてきます。たとえば……

このように、まるで自分のことのように謝罪してくださる素晴らしいファンの方もいます。そして……

犯人逮捕のニュースを受けて、ネットパトロールに称賛の声をあげる人もいます。このように、やはりネットでの殺害予告に対しては、みんな思うところがあるようです。

まとめ

お手本となるような解決策は、はっきりいって今の段階でありません。犯行に及ぶまえに犯人をけん制するといったような積極的な対策も残念ながらありません。できることといえば、どれもが「なにかあった場合に守る」という消極的なものばかりです。

しかし、事前に行える準備や対策も多少なりともあるはずです。
まずは事務所がきちんと所属するタレントを守る体制をつくること。もちろん、現時点でもそれはすでに充分に行っているのでしょうが、よりこの体制を強化しなければまたどこかで誰かが被害にあってしまいます。そうならないために、用心しすぎることに越したことはありません。

もっともこの「どこかで誰かが」という対象の曖昧さが非常にやっかいで、このふわっとした状況のなかで、襲われる予定のない誰かを守るというのは至難の業です。
しかし、せめて以前から相談がある場合やトラブルの火種になりそうな場合は、事務所がタレントを、警察が一国民をしっかりと守ってあげるようにしなければいけないのではないでしょうか?

事件になるまえに事件をふせぐ――難しい問題ですが、そうするよりほかに解決策は見つかりそうにありません。

もう二度と、こんな事件が起こらないように……

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