“ミレニアル世代“によるNEO TOKYO MAGAZINE「SILLY」が、社会に埋もれた声を代弁するコーナー「アノニマスリポート」。今回は、「猫付きマンション・シェアハウス」という物件を取り扱っている「しっぽ不動産」にお願いした取材記事の後編。
<前編はこちら>

運営元はNPO法人東京キャットガーディアンという猫の保護団体。日本で初めて「猫付きマンション・シェアハウス」を企画し、各地で猫に関する講演を行い、『猫を助ける仕事』などの著書をもつ代表の山本葉子さん。

彼女が考える、猫と人間の向かうべき方向とは。

出典SILLY編集部

動物は好き。でも行動を起こす人が少ない日本人

2008年から保護団体として活動され、これまで5,353頭の猫を譲渡してきた東京キャットガーディアン。殺処分や外猫の繁殖問題などを間近で見てこられた山本さんは、日本の人と動物愛護問題に関して「日本全体を見れば皆は優しいのに、行動する人が少ない」と苦言を呈する。

―動物愛護に関するニュース記事をインターネットで見ていたのですが、海外と日本の動物愛護問題に関して比較された記事を良く見かけました。特にヨーロッパは動物愛護に関して先進国、日本は後進国だと言われているように感じますが、そのことに関してどう思われますか?

「それを今『うん、そうですね』と言ってしまうとそのまま記事になってしまうので(笑)。あえて否定させていただきます。

海外事例として、生体の展示販売移動販売も存在しますし、サーカスなどももちろんあります。虐待事例に至っては日本の比ではないように思います。ヨーロッパを先進と定義するのは大雑把すぎるわけです。バカンスの直前に犬猫の遺棄が急増することなどはあまり報道されていません。結局、動物にとっていい状態の場所や国とそうでないところがあるだけです。

ドイツのドキュメンタリー制作チームが取材に来てくださった際に、いろいろとこちらもお聞きしました。途中経過はともかく現在のドイツには野良猫が大変少ないとのことです。そうであれば、個人も保護団体運営のシェルターも受け入れが可能ですし、殺処分などする必要に迫られることも少ないでしょう。単純に『ドイツの(ヨーロッパの)動物愛護意識が高い、それに比べて日本は』ということではないんです。

効率のいい広報として、ネット上で動物愛護を訴えるのは有効だと思いますが、『ブリーダーを無くしてほしい!』と誰かをけしかけたところで、ペット産業の実情は変わりません。それよりも人と話をする、議論する。販売店の販売方法にクレームがあるのなら、店側に生体の健康管理メンタルケアの問題を直接指摘した方が、効果があります。どんな商売でもお客さんが育てるもの(あるいは衰退させるもの)だからです。

ペット産業が『産業』である以上、利益優先になるのは自明です。なにをしていけば弱いものへの扱いが良くなるのか? 実情を効率よく変えていく方法……自戒を込めて考え続けたいです」

出典SILLY編集部

猫ブームは メディアが作ったもの

単純に「可愛いから」だけで動物を飼うべきではない。そうと分かっていてもやはり猫との生活には憧れるもの。長年猫とともに生きてこられた山本さんに、生活のなかに猫がいることで、どのような幸せがあるとお考えなのかを聞いたところ、思いもしない返答が来た。

「『猫がいることによるメリットや楽しいことがあるのか』という問いは、猫は人の役に立つ“使役動物”なんでしょ? とお考えということですね。

可愛いも癒されるも人間の側からの視点ですが、たまたま飼うことになった猫が、自分にとって望んだ通りでなかったり少しでも困ることがあったらどうするのでしょう? 想像しづらければ猫の側になってみたら……と思います。

今からあなたは猫です(笑)。飼い主に気に入ってもらえなければ、居場所をなくされる恐怖。親代わりの飼い主には、ありのままを受け入れてくれる人を切望するのではないでしょうか? 気に入った動物とだけ暮らしたいと考える人にとっては、気に入ってもらえなかった動物は不都合でしょうね。別な里親を捜してくれるならまだしもですが、その労力をかけて頂けるのでしょうか?

猫ブームと言われるものは、猫が好きな人がいきなり増えたのではなく、メディアさんが作ってしまった現象だと思います。

TVや映像の制作費が下がるとキャストに費用をかけられない、台本や舞台制作費も同様です。かといって視聴率やCM効果を下げるわけにはいかないとなると、『出ている間はチャンネルを変えられない』といわれる動物を使うのが費用対効果がとてもいいわけです。ちなみにこの発言はCM制作会社の担当さんからのものです。PC雑誌の表紙にも消費者ローンの吊り広告にも猫。とにかく見てしまうからです。安価で告知効果を出したいときに、猫は鉄板コンテンツなんです。

そうやって極端に露出の多くなった猫は、さらにブームと言われるのですが、飼育する方の数がブームと言われるほど増えたとは思いません。過剰に繁殖させてしまったであろうブリーダーさんの猫たちの行く先が、大変心配です」

「猫ブームは私たちメディア側が作り上げた」と、そんな風に意識したことがなかった私は虚をつかれたような気がした。猫にとっての不幸の一端を担っているのではという思いに駆られ、動揺している自分がいた。

「購入や里親を検討している場合は、『一生添い遂げられるか?』を真剣に考えていただきたいと思います。検討する時間的な余裕があるわけですから。でも、子猫や負傷猫などに出会ってしまった場合はこの限りではありません。手を貸さなければ生きていられないような状況を見かねて保護する人を、またそういう人が多いこの国の人たちを誇りに思っています。

それでもポジティブな話をするのであれば、一緒に暮らす伴侶としては、猫は非常に好ましい動物です。ただ個体によって性格も違えば個性もあるので、子どもと一緒に生活するという大変なことや手間がかかることを認識していないなら、猫は飼うべきではないと思います。

当たり前の話ですが、アクセサリーのように飼えるものではないです。排便もしますし、結局自分より早く逝くということは、末期老人を看取ることと同じです。そういったことを理解したうえで、猫がいる生活というものを楽しんでいただけたらと思います。そして猫を飼う能力のある飼い主さんが増えることを願いながら今後もさまざまな活動に取り組んでいきたいと思っています」

出典SILLY編集部

私自身も猫が好きで、毎日猫の動画や写真を見ながら「猫飼いたいな~」と口にしていたのだが、今回の取材で改めて「猫を飼う」ということの重みを考えさせられた

もし猫が人間の言葉を話せたら、一度でいいから人間のことをどう思っているのか、その本音に触れてみたいものだ。たられば論を垂れたところで、何かが変わるわけではないんだけれど。

今なんとなく『猫が飼いたい』と考えているのであれば、改めてその子に愛情を注げるか、よく胸に手を当てて考えてみてほしい。


Text : 岡田直子 / Naoko Okada

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