記事提供:サイゾーウーマン

昨年のクリスマスに自殺した「東大卒で電通勤務」という鉄板のエリート女性社員について、この9月末に東京・三田労働基準監督署が「自殺の原因は長時間労働による精神障害」として労災認定したことが波紋を呼んでいる。

女性は当時24歳、過労でうつ病を発症しており、パワハラやセクハラの被害を受けていた可能性も指摘されている。

■今でも「セクハラは泣き寝入り」がほとんど

自殺するほどではなくとも、セクハラ、パワハラの横行は日本では珍しくない。筆者の知り合いの20代の女性編集者も、今年だけで3人が退職した。

それぞれ都内や近県の中堅出版社に正社員として勤務していたが、深刻なセクハラやパワハラに悩み、耐えてきた挙げ句の決断だった。

いずれも在職中は社外の親友くらいにしか悩みを打ち明けられなかったといい、筆者も彼女たちの退職後にプライベートで会い、初めて聞かされた。

事例としては損害賠償請求も可能と考えられるが、「時間もお金もかかる上に、プライベートのことを弁護士裁判官など第三者に知られるのはつらい」「思い出すのも悲しい」「私がそんな目に遭っていたなんて、親に知られたくない」などの理由で、提訴をするつもりはないという。

もうセクハラのことは一日も早く忘れたい――筆者も彼女たちの立場だったら、間違いなくそう考えるだろう。

■採用面接を担当していた総務課長から目を付けられたエミさん

そのうちの1人、エミさんは、入社直後から採用面接を担当していた総務課長から、たびたび食事に誘われ、「面接の時からカワイイと思っていた」と言われるなど、「採用してやったオレに感謝しろ」と言わんばかりの態度が「キモすぎ」だったという。

何かと理由をつけて2人だけの食事には応じないようにしていたら、「気に障った」ようで、急にパワハラを受けるようになった。

あいさつしても無視され、仕事上の些細なミスなどで怒鳴られたり、エミさんの上司にまで文句を言われたりするようになった。しかし、上司も「課長はああいう人だから…」と自分に累が及ぶのを避けているのか、かばってはくれなかった。

また、社内メールもチェックされているようで、総務課長はわざわざエミさんにだけ「著者へのメールは夕方までに送るように」と言ってきた。

もちろん会社のメールアドレスなので管理職は読めるのだが、よほどの問題がない限り、個別の通信をチェックすることはないのではないか。

その課長は他の若い女性社員にも同じようなことをしてきたのに、なぜかとがめられていない。

それどころか、同僚の男性編集者たちは、辞めていくエミさんについて「この忙しい時に辞めるなんて…」「新人はこらえ性がない」などと言いたい放題だったという。

現在は実家に戻り、求職活動をしながら、親に勧められて婚活をしている。

「セクハラのトラウマで、まだ男性を信じられないところもあって、結婚はしばらくムリなんですけど、実家にいるのでお見合いくらいはしょうがないですかね」とエミさんは苦笑していた。

■エレベーターで部長にキスされそうになったミカさん

同様に、入社時から、やたらと「ミカちゃん、カワイイ!」と連発するなれなれしい部長がいたが、「女子社員には、みんなに言うのだろう」「気のせい」と思うようにしていたミカさん。

ある日、残業後に食事に誘われ、断り切れずに同行すると、ビールを飲みながら「次の本が売れたら、セックスしようか?」と直球で言われてドン引き。

聞かなかったことにしてスルーしたら、帰りのエレベーターで2人きりになった時にキスされそうになった。

「酔っていたし、何かの間違いかも」と自分に言い聞かせたが、その時のイヤな気持ちが忘れられず、エレベーターに乗るのが苦痛になった。会社に行くのもつらくて常に気持ちが不安定になり、気がつくと勤務中にお菓子に手が伸びるようになった。

「別におなかはすいていないのに、食べずにはいられなかったんです」

その結果、体重が10キロ以上も増えてしまい、仕事も手につかなくなった。このままではダメだと思い、退職して実家に戻った。

両親が経営する商店の手伝いをしているうちに気持ちはだいぶ落ち着き、体重も戻ったと聞いたが、後日、筆者が「ミカさんも辞めちゃって、寂しくなりましたね」と同僚の男性編集者に言うと、「あの子はのべつまくなし食べていてキモかった。顔はカワイイのに残念」とイヤな顔をしていた。

■酒席でのセクハラの後にパワハラも受けたユリさん

メディア業界には珍しく控えめな印象のユリさんは、幹部クラスにも人気があり、直属の上司である編集長とともに、よく酒席に誘われていた。しかし、酒席はセクハラがひどく、酔った幹部から胸などを触られることもあった。

「わりと名の通った会社に正社員で採用されて、親も喜んでいるので、辞めるなんてとんでもないことでした。でも、お酒の席だからガマンしようと思っても、イヤな気分になりますよね。それで酒席のお誘いを断るようにしたら、今度はパワハラで…」

やはり些細なミスで叱責されたり、無視されたりするようになったという。朝起きると手が震え、なかなか起きられない。

出勤が苦痛でたまらなくなり、心療内科へ。女性医師の対応がよかったために心が落ち着き、退職を決意した。現在も求職中だが、夫に支えられて平穏な日々を送っている。

3人とも悩んだ挙げ句の決断だったが、形としては「自己都合退職」なので雇用保険の失業給付を受けられるまでに時間がかかり、給付制限もある。

「理不尽ですが、まあ授業料ですかね」

3人とも、今ではそんなふうに笑う余裕も出てきているが、釈然としないものがある。彼女たちは家族や医師の支えもあって別の道を選ぶことができたが、そうはできない例も多いのではないか。

■相談窓口や弁護士に相談を

女性の権利問題などに詳しい太田啓子弁護士は、「セクハラを受けた場合には、泣き寝入りしないで会社のセクハラ相談窓口や自治体の相談窓口(東京なら、東京都労働相談情報センターなど)に、すぐに相談することをお勧めします」と話す。

「弁護士への法律相談もためらわないでほしいです。月1回ですが、日本労働弁護団の『女性弁護士による働く女性のためのホットライン』という電話相談もあります。

上司から2人きりの酒の席への誘いを受けた時など、本当は断りたいのに『上司だから』と不本意ながら行くことはありますよね。

でも、誘ったほうは『合意』と解釈して、さらに親密な関係に持ち込もうとするんです。このような『感覚のギャップ』の存在を男性側がわかっていないことが、セクハラの問題の本質だと思います。

『イヤよイヤよもいいのうち』なんて幻想ですからね。女性が本当に嫌がっているケースがほとんどです」(太田弁護士)

セクハラを受けた場合、前述の3人のように、人に知られたり、被害を思い出すだけでもつらいと感じるのは想像に難くない。しかし、勇気を出して相談をする第一歩が、加害者の意識、ひいては社会の意識を変えることにもつながるのではないだろうか。

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