記事提供:日刊大衆

矢沢永吉。ロックバンド「キャロル」のリーダー、そしてソロ歌手として同時代の満たされぬ男たちの心を熱く切なく歌い上げ、日本の音楽界に“E.YAZAWA”の文字を刻んだ男。

長渕剛。ギター一本を抱えて痩せた狼のように音楽シーンに現れて以来、常にギラギラと何かに飢えた目をしながら己を革新し続け、その過剰とも言える情熱でファンを鼓舞し続ける男。

来歴もスタイルも違うものの、ともに熱狂的なファンを持ち、それぞれに「男の中の男」と呼ばれる両者。

彼らの何が、そこまでファンを惹きつけるのか?その答えを求めて、本誌では2人の長年のファンを招いて、その魅力を存分に語り合ってもらった。

漢の対談、いざ開幕!

YAZAWAファン(以下、Y)こんばんは、阿部良太(仮名)と申します。

長渕ファン(以下、N)下別府勇次(仮名)です。剛との出会いは、9歳の頃。当時、彼が出ていたドラマ『親子ゲーム』(86年)を見て、その主題歌(「SUPER STAR」)があまりに素晴らしく、一発でファンになりました。

Y どういうところを好きになったんですか?

N 僕は長野の田舎育ちで、東京に対する憧れやコンプレックスが強かったんです。剛も、鹿児島から最初は博多に出て悪戦苦闘し、さらに上京して這い上がっていく…という人生を歩んできた。

「とんぼ」でも歌ったような、彼の東京とか都会に対する反骨精神に惹かれたんですね。

Y 僕のファン歴は、まだ20年くらいなんです。それまでにも曲は聴いていたんですが、永ちゃんの50歳記念ライブ(99年、「TONIGHT THE NIGHT!ありがとうが爆発する夜」)を初めて見に行ったら、もうスゴすぎて。

「なぜ今まで、これを見なかったんだ!」と思って、その場でファンクラブに入会しました(笑)。

N 何にそこまで、衝撃を受けたんですか?

Y 圧倒的な存在感ですね。長渕さんと違って、永ちゃんはほとんど自分で歌詞を書かないし、その主張に共感するという感じではないんですが、ただただ存在としてのかっこよさやスター性に、強烈にやられて。

N 僕も永ちゃんのライブ映像は見たことがありますが、体をビシッと鍛えてて、トレードマークの白スーツが本当に似合うんですよね。とても70歳近い人とは思えない。

Y ライブに来るファンにも、白の上下でビシッと決めて来る人が多いですよ。

N ただ服を真似してるだけじゃなく、食生活とか運動も様々に節制して「永ちゃんに近づきたい」という気持ちなんでしょうね。

ファンもライブについていくために体調を整え、筋トレをしたり…

Y でも、体といえば、やっぱり長渕さんでしょ。

N 剛はデビュー時はガリガリで、病気でツアーが中止になるくらい体が弱かったんですが、演技で殺陣を学んだのをきっかけに筋肉をつけていくんです。そして今や、「腹が出てる奴はオレのバンドにはいらない」と言うほど、精神的にもムキムキに。

「強くなりたい」という強烈な意志を感じますよね。

N 永ちゃんとは違う形ですが、その姿に、我々ファンも啓発されるんです。僕は、剛のライブのことを“稽古”だと思っていて。

Y えっ?

N ライブ中、拳を1000回も2000回も天に突き上げるんです。最近は普通の会場でも3時間のステージは当たり前だし、それこそ桜島で夜通し(※1)とか、富士山麓(※2)のような過酷な環境の中でも、ずっと拳を突き上げ続ける。

そうなると、ファンもライブについていくために体調を整えて、筋トレをしたりして臨むじゃないですか。

Y じゃないですかって、知りませんよ(笑)。

(真剣)結果として、ライブを乗り越えた僕らは「俺、ここまでやれるんだ!」という強烈な達成感を得るんです。だから、その後の生活でどんなに辛いことがあっても耐えられる。

Y なるほど!肉体の苦痛を経て、結果的にファンは勇気をもらうんですね。

N 剛自身が、ライブ中に心拍数200に達したりするほど激しいパフォーマンスをしますからね。

Y 永ちゃんはそこまでハードではないけど、ひとつ特徴があって。ライブのお客さんに、中小企業の社長っぽい方がたくさんいるんです。

ヤンチャな頃に『成りあがり』(※3)を読んで「永ちゃんも頑張ってるんだから、オレもやんなきゃ」と思って一国一城の主を志したような人たち。

N へぇ~!

Y そういう地元の自営業者的な方々が、年に一度のライブのために残り364日を汗水流して働いて、当日はバリッと白スーツで決めてくる。

例えるなら浅草の三社祭のような、大事な年中行事という感じですね。僕も、1年しんどくても秋口になると「もうすぐ12月で永ちゃんのライブだから、あと少し頑張ろう」と希望が湧くんですよ(笑)。

N いい話だ…。僕が聴き始めた頃の剛は、ファンの9割が男性でした。でも、最近は特に若い女性のファンが増えて、今では男女比は半々くらいですかね。

Y そうなんですか!?

「長渕=いかつくて取っつきにくい」というイメージが強いですが、実はライブのMCなどはすごく饒舌だし、冗談もうまくてチャーミングなんです。最近は少しテレビに出るようにもなって、そういう部分が浸透したんじゃないかな。

永ちゃんのライブは“検問”つき

Y さっきも体の話をしましたけど、長渕さんはイメージが変わり続けていますよね。デビュー時の線の細い感じから、どんどんいかつくなり、今度は女性ファンも増えて。

N 声からして変わってますからね。昔は裏声を使ったりして儚げな雰囲気でしたけど、本人はそれが嫌で、ある時期、自分の声帯を痛めつけていたんです。

強烈な酒を飲んでそれを吐く、海岸に行ってきつい潮風を浴び続ける、血を吐くまで歌う…ということを繰り返して、どんどん声を潰していったんですね。

Y すごい。

「変わり続けていたい」「安住することなく、常に今の自分を歌っていたい」という意識があるんだと思います。昔のCDを聴き返すと、数年おきに声が全然違ったりしますからね(笑)。

Y 永ちゃんには、そういう激しさはないですね。ずっとイメージも変わらないし、ライブの曲目もわりと、毎度お決まりだったりする。

キャロル関連の伝説(※4)や一部のファンによる破天荒な逸話も多いけど、本人はライブの前は半年、酒も控えて節制するくらい真面目な人なんですよ。

「オレはいいけどYAZAWAがなんて言うかな」っていう名言がありますけど、それだけ寸分の狂いもない「YAZAWA」を見せたいんでしょうね。

Y そういえば、永ちゃんのライブは禁酒なんです。

N どういうことですか?

Y 普通、ライブ会場ではビールを売ったりしますが、永ちゃんのライブでは、お酒は絶対にNG。そればかりか事前に飲んでいても入場不可で、会場の入り口に“検問”があるんです。

N えええ!!!

Y しかも、呼気を機械じゃなくて、人間に吹きかけるの(笑)。屈強なSPみたいな人に。

N かけるほうも、かけられるほうも嫌ですね…。

Y 昔はライブ中に暴れるような凶暴な客も一部いて、「矢沢には貸さない」という会場もあったんです。その結果として酒の規制も生まれたし、今でもライブの広告に「特攻服を着ての入場はお断りします」という文言が入ってるんですよ。

N なるほど。

暗黙の連帯感や忠誠心

Y 不良の音楽と忌み嫌われていたロックをメジャーにすることにこだわってきた人だから、徹底的に「YAZAWA=トラブルメーカー」というイメージから脱却しようとしてるんです。

N 長渕ファンもいかつい格好をしてる人が多いから、ライブ会場に大勢集まったりすると、異様な集団に見えることもあるでしょうね。開演前や終演後に会場の前で勝手に弾き語りをしたり、それを囲んで拳を振り上げてる熱狂的ファンもいるし。

でも、そのほとんどは穏やかな、いい人ですよ。どれだけ盛り上がっても、終わったら、ちゃんとゴミ拾いをしたりして。

Y 永ちゃんファンも、ライブ後に「お疲れっした!」と見ず知らずの人が握手を求めてきたり、強面でも、いい人が多いです。

N お互い、「永ちゃん/剛に迷惑をかけないように」という暗黙の連帯感や忠誠心はスゴいですよね。

Y 永ちゃんファンにせよ、長渕ファンにせよ、偏見を持たれがちだけど、みんな、すごくピュアですね。

前にお寿司屋さんで永ちゃんの話をしてたら、板さんが「オレも好きなんですよ!」って食いついてきたんです。

その人、包丁の名前を刻む部分に「共犯者」とか「逃亡者」とか、永ちゃんの曲名を入れてて(笑)。

N いいですねえ。ライブ会場の近くの居酒屋とかも、終演後は最高ですよね。店が同じようないでたちのファンで埋め尽くされてて、日頃は友達や同僚にできない話が、ここでは誰にでも通じるという快感がある。

Y ファンがライブでやるお決まりのことはありますか?

「勇次」という曲の中に「撃鉄が落とされ…」という歌詞があるんですが、そこになったら、みんな、クラッカーを出して「パーン!」と鳴らします。

Y 多くのホールでは許されないはずですけど、長渕さんのときはいいんですね。

N みんな、ちゃんとゴミを片づけますから(笑)。初参加でクラッカーを持ってない人がいると、隣の人が分けてあげたりもします。

死ぬまで戦い続けるのが長渕剛

Y 永ちゃんの場合は、「止まらないHa‐Ha」「トラベリン・バス」で必ずタオルを上に放り投げます。

あ、もちろん“E.YAZAWA”タオルですよ。イントロが始まった瞬間に、肩にかけてるタオルをすぐ投げられるよう持ち替える動きが、会場中でゴソゴソと始まるんです。

N かわいいですね(笑)。

Y で、MCで「帰りにうまいビール飲んでってください!ヨロシク!」とか言うと、ライブ中に酒を飲めなかった人が近場のコンビニに殺到して、永ちゃんがCMをやってる「プレミアムモルツ」が完売するという。

N すごい!完成されたシステムだ。

Y 歌詞を書かない永ちゃんは、自分の情念というより「YAZAWAというスタイル」を見せ続けることで人を魅了してきたから、同じことをずっと安定的にやり続けられるし、ファンも安心して、それに従える。

死ぬまで戦い続け、予測不能に変わり続ける長渕さんとは対極ですね。

N 剛は、喜怒哀楽で言うと「怒」と「哀」を徹底的に描く人ですからね。

詩画もやるんですが、5メートル四方くらいの巨大な紙に、墨を含むと20キロ以上になりそうな大きな筆で即興の詩を書きながら「畜生!」「ぶっ殺してやる!」とつぶやいてるのを見ると、彼の叫びは永遠に止まらないんだろうなと思わされます。

Y 対極的な2人ではありますが、ファンが「永ちゃん/剛が現役である限り俺たちも頑張って現役でいよう」と思える存在なのは、どちらも同じですね。

N ただ、剛はファンへの要求も厳しいんです。過酷だった富士山麓ライブの後でも「環境を整えすぎた」とボヤいてたし(笑)。

Y ここでも、予想の上を行きますね(笑)。

N 剛についていくのは本当に大変。でも、その分、倒れかけた人が強烈にパワーをもらえるカンフル剤のような存在なんです。

Y「倒れそうなら剛を聴け!」と(笑)。それで言うと、永ちゃんは「OK、お互い、このまま行こうぜ」と肯定してくれる存在かな。

N 2人ともレジェンドである一方で、ちゃんと新作を出し続けている現役の音楽家。「過去の名曲を愛でるのもいいけど、今の自分を見てくれ」という意識があるはずだから、興味がある人は、ぜひ一度ライブに足を運んでほしいです。

Y 2人とも“本物”ですからね。一度、競演を見てみたいな。一緒にタオルを投げ上げたいですね(笑)。

※1 桜島オールナイトコンサート 2004年8月21日、鹿児島県の桜島で75000人を集め、徹夜で行われたコンサート。06年には会場跡地に記念碑も建った。

※2 富士山麓コンサート 2015年8月22日、富士山麓に10万人を集めて行った9時間半のオールナイトライブ。

※3『成りあがり』1978年に刊行された矢沢の自伝。100万部以上を売り上げる大ヒットとなった。ちなみにライターは糸井重里氏。

※4 キャロルの伝説 解散ライブ時に特殊効果用の火花がセットに引火してステージが炎上するなど、破天荒な伝説の数々がある。

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