“ビールの里”と聞いて、ビール大国のドイツやベルギーの街や村を想像しませんか?実は日本の国産ホップの一大産地、岩手県遠野市のことなんです。

遠野市は半世紀以上にわたりホップを栽培し続けており、“ホップの里”として知られてきました。今年に入ってからは、首都圏から多くの若者が遠野に移住し、“ホップの里からビールの里へ”加速化するムーブメントがあるのです。

今回は、日本のビアカルチャー発信地として注目されている遠野市の今にスポットライトを当ててみます。

可憐なのに男らしい“ビールの魂”

冒頭で、遠野市は「日本の国産ホップの一大産地」とさらりと紹介しました。しかし、もしかするとビールに必要なホップは外国産だけと思っていた人がいるかもしれません。ともすれば、ホップはビールにどう使われているんだっけ?という人も。

一言でいうと、ホップはビールに香りと苦味を与えるのに欠かせない原料です。香りと苦味…ビールの魂ですね。

これがホップとしてよく目にするもの。一見して実のようですが「毬花(まりばな)」と呼ばれる“花”なんです。ビールではホップの毬花、しかも雄株の毬花だけを使うのだとか。手毬のように可憐な姿なのに、ホップに“ビールの魂という力強さや男らしさも感じられるのはそのせいかもしれません。

ビールづくりには欠かせないホップですが、産地や品種によってビールにもたらす香りや苦みが異なるのもおもしろいところです。

中でも遠野産のホップは、華やかな香りが特徴。その年に収穫したての新鮮なホップを使用できるのも国産ならではで、毎年新物のホップを使ったフレッシュで爽やかな香りと苦味の“ヌーボー”なビールを楽しみにしている人も多いようです。

“ホップの里からビールの里へ”動き始めたプロジェクト

遠野市は10年前から、ホップ契約栽培で53年間の歴史があるキリンとタッグを組んで、遠野産ホップのPRや地域活性の取り組みをスタート。

2016年からは、都会の人材と地方の資源をつなぐNext Commons Labという強力なパートナーも加わり、50年先の遠野市を“ビールの里”として活性化させる協働プロジェクトが始動しています。

出典 YouTube

“ビールの里”に新たに根付き、つながり合う若い力

遠野市が“ホップの里”から“ビールの里”への躍進を遂げるためには、昔から地域に根付いた風土や住民の知恵のほかに不可欠な要素がありました。それは“若い力”です。

Next Commons Labが立ち上げた『醸造する町 Brewing Tono』には、そのコンセプトはもちろん、遠野市そのものやビールづくりに魅了された多くの若手が賛同。中心となってプロジェクトを引っ張っています。

「50年先は後身を育成」ホップ生産の系譜を絶やさない決意で就農

長野県出身で外資系企業勤務時には横浜に住んでいましたが、プロジェクトをきっかけにホップ生産者への道を選んだ鮎澤さん。現在は、遠野移住の先輩でホップ生産の師匠・遠野アサヒ農園の吉田さんのもとで修行中です。

遠野を日本のビール好きが集まる“ビールの聖地”にしようという構想に共鳴し、プロジェクトへの参加を決めたといいます。また、昼夜の寒暖差が大きく、美味しい農作物の生産に適した土地、そして人々の温かさに魅力を感じながら遠野の暮らしとホップづくりを楽しんでいるようです。

まだ修行中で新人の鮎澤さんですが、50年先はホップ農家として後身の育成にあたっていると思う」と、大きなビジョンを持つ姿も頼もしいですね。

遠野産の原材料を使って”そこでしか飲めない”ビールづくりを

将来的には遠野市での醸造家を夢見て、現在は都内のブルワリーで修行中の袴田さんは、世界的アパレル企業で若手ながら店長として新店舗の立ち上げや100人の部下のマネジメントを任された経歴の持ち主です。遠野市で醸造家を目指すことには、迷いや不安以上に“新たなビール文化を自らの手でつくっていくというワクワク感や期待感”の方が大きかったのだとか。

『醸造する町 Brewing Tono』への参加をきっかけに、「世界と遠野をビールでつなぐ」ことを自分のミッションとして修行に励む袴田さん。遠野産の原材料を使った”そこでしか飲めない”ビールをつくり、世界中から遠野に人を呼び込み、ビールを通じて人と人をつないで遠野の魅力を常に発信していきたいと熱く語ります。

“遠野の人間”として次世代を見守りながら仲間と一杯

Next Commons Labの一員として遠野市に移住してきた田村さん。大手企業勤務のころから経験やスキルを社会に還元したいと考えていたそうで、地域に根ざして新たな産業や文化を地域の人々と共につくっていくプロジェクトに強烈な魅力を感じたといいます。

プロジェクトのゴール、“ビールの里”が実現したあかつきには、ひとりの地域の人間として、つまり「“遠野の人間”として次世代プレイヤーの活動を見守りながら、共に歩んできた仲間と美味しいビールを楽しみたい」のだそう。地域の人々、後輩たち、仲間たちと酌み交わす一杯は最高以外のなにものでもないでしょうね。

泥臭く、人間臭い遠野での経験をテクノロジーで“クリエイティブに”発信

東京のデジタルエージェンシーで、最新の映像技術やソーシャルメディアを活用したプロモーションを手がけてきた富川さん『醸造する町 Brewing Tono』では“情報発信のプロ”として、プロジェクトのコンセプトや進行状況を広める役割を担っています。

東京での実績に遠野での泥臭く、人間臭い経験を積み重ねていきたいと語る富川さん。ホップだけでなく馬の文化、里山の暮らし、民話や伝承など古くから受け継がれてきたアナログな遠野の魅力を、若手ならではの柔軟な発想とテクノロジーでいかにクリエイティブに、いかに多くの人々へ発信していけるのか、自分自身へのチャレンジだと静かな闘志を燃やしています。

遠野には“確実な夢”を持つ地域のプレーヤーがいる

『醸造する町 Brewing Tono』の一角・キリンの代表として“ビールの里”構想を引っ張る浅井さんは、これまでも『復興応援キリン絆プロジェクト』の推進役を担ってきました。その中で、長期的に農業の復興に力を入れることが真の意味で地域の再生・発展につながるとし、多くの取り組みを実現してきました。

目下の『醸造する町 Brewing Tono』で目指す“ビールの里”は、「市民が主役。遠野には未来の地域のリーダーがいて、確実な夢を持つ地域のプレーヤーがいる」と語ります。地域と並走する企業人として、“確実な夢”を抱いて遠野に移住してきた若い力や地域の人々への期待と信頼が表れた言葉ですね。

“ビールの里”を味わうには

今回紹介した若い力を中心に、順調に形作られつつある“ビールの里”。そこに集う夢あふれる人々や遠野市の魅力に、記事を読んでいるだけではなく実際に触れてみたくなりますね。

“ビールの里”に向けた取り組みに欠かせない遠野産ホップIBUKI(いぶき)は、花のような上品な香りが特徴です。日本の風土の中でしか育まれない奥ゆかしさがあり、国産ホップとして注目を得ています。

出典 http://lo.ameba.jp

そのIBUKI(いぶき)をふんだんに使っているのが『一番搾り とれたてホップ生ビール』。その年に収穫したての新鮮なホップを乾燥させず、水分を含んだまま凍結・粉砕して醸造したとってもフレッシュなビールで、みずみずしさと華やかな香りは格別だと絶賛するファンもいるほどです。

今年の夏、“ビールの里”でとれたてのホップの味と香りが楽しめるのは今だけ。近くのスーパーやコンビニで見かけたら、ぜひ“ビールの里”の今を味わってみてください。

※『一番搾り とれたてホップ生ビール』は、販売が終了している店舗がございます。

新たに地域に根付いた若い力で、“ホップの里からビールの里へ”と生まれ変わろうとしている岩手県遠野市。そんな“ビールの里”産のフレッシュなビールを味わいながら、日本のビアカルチャーの発信地としての遠野市の未来に期待したいですね。

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