ネットやテレビで話題のニュースに関して、編集部が独自の切り口で取材調査をする「ソコ行く!?ソレ聞く!?取材班」のコーナー。今回も興味深いお話を伺ってきました。

ニュースを見ていると、よく目に付く「ブラック企業」の話題。長時間労働によって疲弊した社員や、自殺という最悪のケースに至ってしまった女性など、毎日のように労働関連の報道があります。

「ブラック」なのは、企業だけではない

しかしながら、「ブラック」な就労環境にあるのは、一般企業だけではありません。Twitterでは、とある中学校の先生が悲痛な声をあげていました。

1日16時間という長時間労働と、保護者からの理不尽ともいえるクレーム、これはまさにブラックな労働環境と言えそうです。

土日も部活指導。学校の先生はいつ休んでいるの?

中学生のころを思い出すと、部活動の顧問の先生は放課後も生徒の指導に時間を割き、土日も大会などに奔走していた記憶があります。今になってみると「先生は、いつ休んでいるの?」「あれって、手当はついているの?」など疑問が浮かんできます。

そこで、教師の就労環境の改善のために、ブログやサイトで情報発信を行っている中部地方在住の中学校教員、藤野悠介先生(30代)にインタビューを敢行。

藤野先生は「部活問題対策プロジェクト」というサイトを通して、「教師の部活顧問拒否権」を得るための署名活動を行っています。今回伺ったお話から「部活顧問」制度の問題点と、教員がおかれている過酷な労働環境が浮き彫りになってきました。

「強制労働」状態になる部活顧問制度

出典Spotlight編集部撮影

ーー藤野先生は「部活問題」についての署名運動を行っていますが、その問題とはどのようなものなのでしょうか?

「私たち教師にとっての部活問題とは、部活動の顧問制度によって引き起こされる、無賃の長時間労働の強制、プライベートの剥奪、そして本来の仕事への支障のことです」

ーーたしかに部活動の顧問を引き受けると時間外労働が増えそうですが、私は顧問をやりません、という選択もできるのですか?

「いいえ、教師には事実上、部活動の顧問の拒否権はありません。ほとんど『強制労働』をさせられている状態です。自分も毎年『来年はお断りしたい』と言ってはいるのですが、結局ほぼ強制的にやらされています。

昔に比べて子どもは少なくなり、それに伴って教師の数も減っているにもかかわらず、部活動の数だけは減っていません。そのため、今はほぼ全員が顧問を務めなければならない状況です。時には、自分が未経験のスポーツを担当させられることもあります」

藤野先生曰く、顧問になると平日の勤務時間後の2時間は、部活動の指導に時間を割かなければならないとのこと。また、休日にも部活をやらないと保護者の方からクレームが入ってしまうので、やらざるを得ない状況になっているそうです。

残業代が出るのは1日あたり20分だけ

出典Spotlight編集部撮影

ーー勤務後の部活動の指導など、時間外手当はもらえるのでしょうか?

「土日祝日などはもらえます。私の自治体の場合は4時間で3,600円です。ただし、それが1日あたりの上限金額です。5時間働こうと、10時間働こうと、3,600円しかもらえません。ほとんどボランティアのような状態ですね

また、平日分の時間外手当は実質もらえていないような状態です。教師は残業時間の長短にかかわらず、給与の4%が『調整額』として支給されます。いわゆる『みなし残業代』です。

これを平日1日あたりに換算すると、20分間だけ残業代がもらえていることになるんです。部活動の指導は2時間はやっているんですけどね…。教師が拘束される時間や責任を考慮すると、あまりにも少なすぎる額といえます。

『調整額』は何十年か前に教師の勤務実態を調査して決めたものなので、現在の教師の多忙な状況とはズレてしまっているんです

「これで県大会行けるんですか!?」と保護者が乗り込んできたことも

ーー部活動の数を減らすことはできないんでしょうか?

「さまざまな理由があり、部活動の数を減らすのは難しい状態です。まず、1・2年生が部活を始めている以上は、途中で廃部にできないので、最低でも3年間は部を存続させなければなりません。

また、廃部にしようとすると、小学校のスポーツ少年団や部活に所属している子の保護者やPTAから、『中学でもがんばりたいのに、なぜ廃部にするんですか』と責められてしまいます。

経験した例では、3~4人の保護者の方がアポなしで学校にいらっしゃって、『何でこんなに部活の回数が少ないんですか!?』『これで県大会行けるんですか!?』と声を荒げた方もいました」

勤務後に100人以上のテストを自宅で採点

部活動の顧問以外にも、教師の就労環境における問題点があると、藤野先生は話します。

「ニーズが多様化してきているために、教師の仕事が増えてしまっているのも問題点です。たとえば、発達障がいの生徒に対しては、個々にカルテを作らなければなりませんし、『1か月のうち、一定日数以上休んだら報告書を出す』という決まりがあるので、その対応に追われることもあります。

あとは、定期テストの採点も負担になっています。本来であれば、部活動のないテスト1日目(藤野先生の学校では、定期テストは2日間にまたがって行われている)の放課後に採点したいところですが、その時間には職員会議や部会といった会議が入ってしまって、採点ができません。

テスト2日目の放課後には部活動が再開してしまうので、仕方なく教師は100~120人分の採点作業を自宅で行っています

このままだと悪影響を被るのは子どもたち

ここまで藤野先生にお話をいただいたように、多くの教師の労働環境は健全とはいえない状況にあります。

部活動指導の強制・雑務によって休むこともできない教師は、疲弊しきった状態で生徒に授業をしなければなりません。この状況が続いたとして、もっとも悪影響を被るのは、他ならぬ「子どもたち」だと、藤野先生は指摘します。

「今の若手の先生方は、部活動の指導や雑務に時間を取られてしまって、肝心の授業や、生徒指導の研究ができていないのが実情です。このままだと何も身につかないままベテランになってしまいます。それはご家庭や子どもたちにとっても大きな損失ではないでしょうか」

【取材協力】藤野悠介先生

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