劇場や美術館に幼児・子供連れで来る親

静かにゆっくりとその空間を楽しみたいという場所に、子供や幼児を連れて来る親はどこの国にも存在します。そんな時、あからさまに注意を受けたり嫌な顔をされたらあなたはどう思いますか?もしあなたが親という立場なら、小さい子供や幼児は騒ぐものとわかっているだけに受け止め方は微妙なところではないでしょうか。

歌舞伎座や博物館、劇場や美術館に子供を連れて来る親に反感を持つ人は、子供連れを許可する施設側にも責任があるという人もいれば、やはり子供にとって不適切な場所に連れて来る親の意識の問題であり、そのような行動は親としての責任感に欠けると言う人もいます。

レストランやカフェにしても、うるさくしている子供に何の注意もしない親もいますがそういうのは別として、子供が障がい者だったり自閉症だったりした場合、騒いでしまうというのはある程度は仕方のないことではないでしょうか。

また、子供をどうしても連れて来なければならない事情がある時というのもあるでしょう。家庭によって色々な事情の子供がいるわけですから、一概に周りは「あの子供はうるさい。親がなってない」と決めつけるのもまた問題になってくるわけです。

障がいを持つ息子を落ち着かせるように注意された母親

Pinned from metro.co.uk

このほど、英ニューカッスルのある劇場に7歳の息子を連れて行った母が、劇場側から思わず声を出してしまった子供を落ち着かせるようにと注意されたことが英紙『Metro』で報じられました。

ジェマ・ミドルマスさんの息子ジョセフ君は、脳に障がいがあるために立つことも歩くこともできず、車椅子生活を送っています。今回、息子のジョセフ君を「メアリー・ポピンズ」の鑑賞にロイヤル劇場へ連れて行った時のこと。

ジョセフ君は、劇の最中、嬉しそうに笑ったり音を立てたりしていました。ジェマさんは「劇を見ていて楽しかったんだと思います。普通に話すレベルの声で、ジョセフは声をあげたんです。楽しんでいるあの子の笑い声を聞くことは、親の私にとってはとても嬉しいことでした」と話しました。

ところが、30分後…

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息子が心から楽しんでいる姿を見て喜んでいたのも束の間、上演から30分ほど経った時に、スタッフがジェマさん親子に歩み寄り「他の客から苦情が出ているので、息子さんを落ち着かせるようにしてもらえないか」と言ってきたのです。

スタッフは再三「出ていく必要はないが、あなた方が他の客に与えたダメージは大きい」と注意。それはまるでジェマさんがジョセフ君を連れて自主的に劇場から出て行くのを待っているかのような発言でした。

ジェマさんは出て行けと指示をしないけれどもそのように仕向ける劇場スタッフに不快感を感じたそう。「夜の部ならともかく、昼の部に連れて行ったんですよ。しかも、子供向けの劇だったし」というジェマさん。

スタッフは「泣いている赤ちゃんにも同じことを注意させて頂きます。一旦外に連れ出すようにしてもらって、落ち着かせたらまた戻ってきてもらって結構なので」とジェマさんに言いました。

でも「ジョセフは頭に障がいを持っているだけに、コントロールも難しいし赤ちゃんのように泣いてすぐ泣き止むというようにはいかないんです」と心の中でジェマさんは思ったそう。

何より、心から息子が楽しんでいるようだったので途中で観劇を辞めさせたくなかったと言います。この件に関して、劇場側は「全ての観客に満足してもらうことが非常に難しい時がある」とスタッフはベストを尽くしていることをコメントしています。

「障がいを持つ子供の母親はいつもこんな状況と闘わなければならない」

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ジェマさんは、「ジョセフは音楽やダンスがあり、いろんな衣装で演じる劇を見ることが好きなんです。でも、いつもこうした問題と闘わなければなりません。スタッフの対応によっては不快な思いをしなければならない時もあるんです」と、これまでの自らの経験を語りました。

似たような話はどこにでもあります。去年の9月に、アメリカのブロードウェイミュージカル「王様と私」に出演していた舞台俳優が、自身のFacebookに「僕は今とても悲しく怒っている」と綴ったことが当時話題になりました。

俳優のケルヴィン・ムーン・ローさんは、自分が舞台に立っている最中に1人の自閉症の子供の叫び声を観客席から聞きました。ちょうど舞台で鞭打ちシーンが行われており、それにショックを受けた子供が声を発したのだと思われました。

すると周りの客たちは…

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子供の叫び声を聞いた周りの客は口々に「なんで子供を劇場に連れて来るのよ!」「そんなうるさい子供、追い出してしまえ!」と罵り始めたんだそう。そして母親はというと叫んでいる子供を外へ連れ出そうと必死になっていました。

この光景を舞台の上から見たケルヴィンさんは思わず「みんな、落ち着けよ!このお母さんは頑張っているじゃないか。必死にこの場を収めようとしているじゃないか。みんな、わからないのか!?」と怒鳴りたい気持ちになったそうです。

ケルヴィンさんのFacebookには、その時の心情が長々と綴られています。舞台が終わった時には、その親子の座っていた席は空だったそう。「なんで子供を劇場に連れて来るのか」という質問は間違っている、とケルヴィンさんは言います。

「僕は、子供をここへ連れて来たお母さんを誇りに思う。だってとても勇気のいることだったと思うから。

批判した人たちは、彼女の日常や人生についてこれっぽっちも知らない。もしかしたら今回のようなことは稀なことだったのかも知れない。普段は大人しくしている子なのかも知れない。とにかく僕たちはあの親子のことを何も知らないんだ。

でも、あの母親は恐怖に包まれた人生を過ごすことに終止符を打ちたかったんじゃないかな。息子さんにいろんな経験をさせたくて勇気を出して劇場に連れて来たんだと思う。

とても人気の劇なのに親子が座っていたのは通路の端っこだった。きっと万が一のことを考えていたんだろう。でも彼女たちはチケット代にみんなと同じ料金を払ったんだ。そしてみんなと同じように楽しい時間を過ごそうと思っていたんだろう。それなのに彼女にとっては最悪の日になってしまった…。

劇場は、障がい者や健常者関係なく全ての人のためのものだ。そして僕は、いろんな家族に楽しんでもらえるような舞台に立っていることを、ここを借りてもう一度伝えたい」

出典 https://www.facebook.com

「劇場は、みんなのためにあるもの」

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ケルヴィンさんは、俳優という立場でありながらも自身の気持ちを強く伝えました。「劇場はみんなのためにあるもので、どうか周りの人も理解と思いやりを持ってほしい」と米メディアでも述べています。

社会の「子供連れ」に対する目は厳しく「子供連れは子供連れの適切な場所があるだろう」という人もたくさんいます。子供がいるというだけで嫌な目を向ける人も少なくありません。それが現実なのでしょう。

ただ、ニューカッスルのジェマさんも言うように「批判や偏見と闘うことがとても大変で時に心が折れそうになる」という気持ちを、自閉症や障がいを持つ子供の親が日々実感しなければならないというのは悲しいことではないでしょうか。

感動も分かち合いたいけれど、その前に…

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差別や偏見は社会のどこにでもあるものです。お金を払って来ている他の客の立場からすれば「うるさい。静かにさせて!」と注意したい気持ちになるのも理解できます。子供の声の限度や騒ぎ続ける時間も問題となるでしょう。

それでも、「障がい者や自閉症なら来ないで」と思う前に、またそんな雰囲気にしてしまう前に、理解してみようという気持ちを持つことが差別や偏見をなくす第一歩になるのではないでしょうか。感動や喜びを共有することももちろん大切ですが理解の気持ちを忘れないことも大切だと筆者は思います。

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公式プラチナライター。イギリス在住22年目。いつも読んで下さる皆さんに感謝。Twitterアカウントは@mayonesque18です。よろしくお願いします。

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