文化、アート、ファッション、個性

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タトゥーが社会的に厳しい国日本とは異なり、「アート」「ファッション」「文化」「個性」とタトゥーをリスペクトする人が多い欧米。国によっては、昔ながらの部族の象徴としてタトゥーを入れている民族も存在することから、タトゥーは欧米ではそこそこ社会に受け入れられてきました。

イギリスに暮らす筆者の周りにも、タトゥーを入れている人は多いのですが、目立つ部分に入れている人とそうでない人がいるために、長袖やパンツを履いていれば誰がどこにタトゥーを入れているのかいないのかは判断つきかねます。

筆者は、イギリスに来たばかりの頃はタトゥーだらけの人を見ると圧迫感を感じ、恐怖を感じてしまったのですが、今では体全身にタトゥーを入れている人を見ても「凄いな」と驚きはしますが「怖い」という恐怖感はなくなりました。

筆者は日本とイギリスのタトゥーに関する受け入れ方の違いを知っているだけに、イギリスのあちこちにタトゥーショップがあり、ファッション感覚でタトゥーを入れている人がどれだけ多くても第3者的に見ているだけですが、このほど、タトゥーを入れているということで実はイギリス社会でも「差別」を受けている人がいるという事実がわかり、ちょっと衝撃を受けています。

内定取り消しになった理由は「タトゥーがあるから」

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イギリスでもタトゥーに対する社会的偏見があったのだと思い知らされるようなニュースが英紙『Metro』で報じられています。ドンカスター在住の3児の母親ケリー・アンドリューさん(33歳)は、地元の老舗ホテル「Earl of Doncaster Hotel」へ仕事の面接に出向きました。

他にも面接の予定があった2社を蹴って、老舗ホテルの面接へ出向いたケリーさんは、その後採用の連絡をメールでもらいました。そしてその数日後、ホテル側から再度面接があったために、ケリーさんはまだ幼い2歳の子供を保育所に預けて、意気揚々としてホテルへ向かいました。

「採用って言われたから当然、この面接にも自信があったんです。でも、その後ホテルからとてもショックなメールを受け取りました。」

てっきり詳細の打ち合わせかと思いきや、ホテル側はその後ケリーさんに「内定取り消し」の連絡をしてきたのです。理由は「タトゥーが問題」ということでした。実は、ケリーさんの体には22以上のタトゥーがあります。

腕に8つ、そして胸元や手など見える所にもタトゥーが彫られてあるのですが、勤務時には長袖シャツにパンツスタイルという制服を着るために、ほとんど隠れてしまいます。しかしホテル側は「あなたのタトゥーは残念ながらフォーマルな職場には不向き」と断りを入れて来たのです。

ショックを受けたケリーさん「差別以上の対応だわ!」

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「せっかく内定をもらっていたのに、タトゥーが原因で取り消されたと知ってとてもショックで不快になりました。そんなの差別じゃないですか。私のタトゥーは、別に他人から怒りを買うものでもないし、ただのアートです。胸元のタトゥーなんて300ポンド(約38,000)も費用がかかったんですよ。」

「しかもホテルに2度出向いた時も、直接は何も言われなかったわ。なのに後からメールでタトゥーが原因で不採用と断って来るなんて!」と怒りを露わにしています。

ホテル側は、ケリーさんに「このほど、上司やホテルオーナーと相談した結果、タトゥーを入れた人を今後一切採用しないという新しいホテルの従業員採用方針が決定しました。あなたがかなり失望されているだろうことを察し、大変申し訳なく思っています。この度は当ホテルのためにお時間を頂き有難うございました」というメールを送って来たそうです。

このニュースに対し、世間の反応は?

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タトゥーが原因で仕事が不採用になったり、昇進のチャンスを見送られたり、また最悪のケース解雇になってしまうという人がケリーさん以外にも意外といることがわかりました。

世間の反応を見てみると「意外と社会はタトゥーに批判的なところもある」ということを理解して受け入れている人と「差別だ」とあくまでもタトゥーを反社会的とみなす人たちに反感を買う人の両方がいる様子。

「個人的にはタトゥーは全然気にならないけど、でも一般的には顔や手に派手なタトゥーのある人が接客業をすることは避けるべきだと思う」

「私はホテル勤務だけど、最近タトゥーに関する規則が緩和されたわ。それでも、ルールはあるわ。それにサヴォイやリッツなどの高級ホテルでは、誰も見えるところにタトゥーをしている人はいないわ。」

「仕事をきちんとしているのならタトゥーがあったって関係ないだろ。あからさまに奇抜なものや卑猥なものでなければいいんじゃないの」

「タトゥーはその人の人格を判断する材料にはならないわ。どんなにひどいタトゥーをしていてもその人の性格とは関係ないと思う」

「それは理解できるけど、でも世間はそうだとは思わないんじゃない?ファストフードやチェーンのホテルならいいかも知れないけど、高級老舗ホテルとかってイメージもあるし、囚人レベルのタトゥーはやっぱりマズいんじゃないの」

「タトゥーで不採用って、人権問題なんじゃないの?」

「従業員がタトゥーをするのがダメなら、じゃあタトゥーをしている客は断るのか?今やファッションなんだからそのうちみんなどこかに一つはタトゥーがあるって人が増えていくだろう。タトゥーがあるからっていう理由は時代錯誤だ」

出典 http://metro.co.uk

タトゥーが原因で仕事を失った人たち

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イギリス国営放送局『BBC』は、ケリーさんのようにタトゥーが原因で仕事に影響を及ぼした人たちから話を聞きました。

「子供たちに悪影響」

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目立つ場所にタトゥーがある女性の一人は、学校のアシスタント業務の仕事に採用されたそう。ところが冬の間にはわからなかったタトゥーが夏にはあからさまになり、学校側に「子供たちにとって悪影響だ」と言われました。

その女性は「子供たちに狭い偏見の心を持ってほしくない」ということで「タトゥー反対に反論するキャンペーン」を行っていたそうですが、結局は職場を辞めたということです。

オーストラリアのある女性も「私の上司は宗教的な思想の強いひとだったから、私のタトゥーがとても不快だったみたい。子供たちと関わる仕事をしていたから、こっちも気を使ってタトゥーを隠すようにはしていたけど、結局クライアントのイメージにも悪いし、子供たちが怖がってもいけないからって仕事の時間を大幅にカットされたわ」と話しています。

「隠すことを条件とする」

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また、イギリスのある男性はこう話しました。「前の職場では両腕にあったタトゥーを絶対に隠すように言われたよ。でも俺は納得できなかった。他の従業員はピアスとかしていても何も言われなくてタトゥーのある俺だけがそういう扱いを受けるのは不公平だと思ったよ。今の会社はそうした差別が一切なくて気が楽だね。」

「あんたはその程度の人間なんだよ!」

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20歳の女性は、体中にカラフルなタトゥーを彫っています。デザインもいろいろで、まさに「アート」キャンパスのよう。しかし、このタトゥーのせいで採用してもらえなかったことが何度もあるのだとか。

「携帯ショップに採用してもらえて働いてた時があったんだけど、ある客にすごく文句を言われたの。電話のことで返金しろと言われて…。でもウチのショップで買ったものじゃないから返金できないって断ったら、逆切れして」

「あんた、タトゥーをしてるからこんな仕事しかできないんだよ!ろくに仕事もしていないくせに‼」

「すごく悲しかった。客が出て行ったあとで店の奥で泣いたわ」というこの女性は訴えます。「タトゥーがあっても、私は一生懸命仕事をしているし、チャリティー活動だってしている。それにドラッグも一切してないし犯罪を犯したこともないわ。たくさんのタトゥーがあるだけで、その人を悪い嫌な愚かな奴だとどうか思わないで。」

2016年になってもまだ…

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表だってはいないだけで、イギリスでも、アメリカやオーストラリアなどの国でもタトゥーに対する批判や偏見がまだまだ残っているのだと実感させられた筆者。

世間体を気にし過ぎだと言われる日本ですが、やはり海外でもその世間体によって店や会社のイメージブランドが確立され、客からの評価にも繋がっていくとなるとどうしてもタトゥーは忌み嫌われてしまうものなのでしょうか。

「タトゥーに偏見を持つ人は差別をしている」と主張する人と「やはり世間体は大切」とタトゥーに反感を持つ人。今や、ファッションやアートとさえ言われるタトゥーは現代でもこうした問題を呼んでいるのですね。

日本だけでなく海外でも同じような問題が起こっていることを知ることで、私たちは改めて「タトゥーをする意味・価値」について考えさせられるのではないでしょうか。

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公式プラチナライター。イギリス在住22年目。いつも読んで下さる皆さんに感謝。Twitterアカウントは@mayonesque18です。よろしくお願いします。

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