記事提供:しらべぇ

ホームレスの方へ仕事を提供し、自立を応援するための事業として生まれた雑誌『ビッグイシュー日本版』。

駅周辺で販売されているのを見かけることはあるが、買ったことが無い人にはどんな人が売っているのか、どんな内容なのか、知る機会がほとんど無い。

■ビッグイシューは本当に自立の助けになっている?

だが、一度ビッグイシューを買った人は口を揃えて「350円とは思えないぐらい内容が充実していて面白い」という。

面白い雑誌を買ってホームレスの方を支援できるのならぜひ買ってみたいが、本当に自立の助けになっているのだろうか?

そこで東急線溝の口駅前でビッグイシューを販売している男性・上野誠さんへインタビューを行い、仕事の内容や収入などについて、詳しく伺ってみることにした。

Q.1日の収入はどれぐらいですか?

「1冊売れるごとに350円の売り上げのなかから、180円が販売者の収入になるんです。

今日(2016年10月27日)は、朝8時20分から14時過ぎまでで22冊の売り上げ、私の収入としては3,960円ですね」

出典しらべぇ

Q.ずっと立ち仕事ですがつらくは無いですか?

「日雇いの仕事と比べると体力的にも精神的にもはるかに楽です。

僕は実は精神的な病気があり、それまでの仕事もそのせいでうまくいかなくなることがあったのですが、手帳や年金などについては知識が無かったのですが、ビッグイシュー基金のサポートで障がい者年金ももらえることになりました。

販売の仕事も収入は不安定ですが、体調に合わせて自分で仕事をする日を決められるので、明日は仕事がないかも、という心配に悩むことがなくなりました。

販売する場所にもよりますが溝の口駅前は屋根があるので雨が降っても大丈夫ですし、仕事の時間も自分で決められるので…」

出典しらべぇ

Q.路上生活からは抜け出せたのでしょうか?

「雑誌販売を始めてから、ネットカフェに宿泊するお金がかせげるようになりました」

出典しらべぇ

Q.販売者になったきっかけは何ですか?

「3年前は日雇いの仕事をしていましたがうまくいかず、一度は生活保護を受けたものの担当者と意見が合わなくて、保護を切って路上生活をするようになりました。

そんなときに行った炊き出しでもらった『路上脱出ガイド』で、ビッグイシューの情報を知り土曜日に開催される販売者登録会へ行きました」

出典しらべぇ

Q.それでも生活保護を受けていたほうが楽だったのでは?

「確かに楽だったかもしれないですが、やはり『人のお金で暮らしている』という気持ちがどこかに生まれ、コンビニで買物するときくらいしか人と言葉を交わすこともなく、孤独でとてもつらい毎日でした。

それに比べるとビッグイシューを販売してからは自分で得たお金でご飯を食べる喜びを感じられるようになり、購入してくれるお客さんとの会話も生まれ、毎日がとても楽しくなりましたよ」

出典しらべぇ

■自分で得たお金でご飯を食べる喜び

上野さんのお話を聞く限り、ビッグイシューの販売によって路上で寝る生活から、暖かいネットカフェに泊まれるほどの収入を得て路上生活を脱出することはできたようだ。

さらにNPO法人ビッグイシュー基金のサポートにより障がい者年金も受給できるようになったことで、安定したアパート暮らしも考えられるようになったらしい。

また「自分で得たお金でご飯を食べる喜びを感じられるようになった」というコメントには非常に心打たれるものがあった。

路上生活を余儀なくされていた人を金銭や食事の提供だけでなく、しっかりと自立できるよう支援しているビッグイシュー、もっと詳しく知ってみたい…。

■ホームレスになるにはさまざまな背景が

そこで、有限会社ビッグイシュー日本東京事務所の販売サポート・広報担当の長崎さんにもお話を聞いてみると、ホームレスになってしまう背景にはさまざまな理由があるのだという。

まず挙げられるのが「年齢や健康上などの理由から、仕事につけないこと」。親の介護やリーマンショック、病気がけがなどで職を失い、再就職をしようとしてもできず収入源を失うことはホームレス状態に至る大きな理由の一つだ。

また「頼れる身寄りがないこと」もあげられる。DVなどで家庭内に居場所がない、仕事で借金を負った、などさまざまな理由で、頼れる身寄りがない人も多いという。

中には、相続などをきっかけに親族から失踪宣告の手続きがすすめられたために知らないうちに戸籍上はこの世に存在しない状態になってしまっていた人もいたそうだ。

これだけでも驚きだが、さらに驚いたのは「障害を抱えているにもかかわらず、本人も周囲も気づかず、必要なサポートを得られないまま大人になり、生計をたてられずホームレス状態に至る人」もいること。

困窮家庭で育って親族に余裕がなかった、障害者福祉に対する周囲の理解が不十分であったなど、なんらかの事情で親族や周囲の人から、障害者福祉につながるための必要なサポートを得られずに育った人も少なくないという。

上野さんもそうだったが、自分に「障害」があると気づかずに仕事をしてきて、うまくいかないことが度重なるうちに、ホームレス状態になってしまうこともあるのだとか。

■その他の支援

そういったさまざまな理由でホームレスになった人がビッグイシューの販売者となり、自立への道を歩んでいくそうだが、ビッグイシューではそれ以外の支援活動も行っていると長崎さんは話す。

その他の活動としてはビッグイシュー日本設立から4年後に設立された認定NPO法人『ビッグイシュー基金』では、市民からの寄付を元に、ホームレスの方が自立するための仕事以外のさまざまなサポートをしている。

寄付の方法はさまざまあるが、寄付されたお金はそのまま被支援者に渡るのではなく、自立するための活動に使われる。

たとえば販売者の上野さんがビッグイシューを知るきっかけになった小冊子『路上脱出ガイド』の製作配布費や、ホームレスの方の健康診断をはじめとした自立支援活動費、他支援団体とのネットワークづくりや政策提案等の活動費など。

また、ホームレスの方が集まってフットサルや野球などのスポーツを行い、人間関係を作り自立への心の準備を促す自主的なクラブ活動の応援のためにも使われる。

面白いところではリオ五輪にあわせて開かれた貧困問題のアートでの解決を目指す世界各国の団体の交流会にも招待されたというダンスチーム『ソケリッサ!』の活動もある。

記者が取材に訪れた当日は、一般社団法人アオキカクにてソケリッサ!を主催するアオキ裕キさんも事務所に訪れていた。

■ビッグイシューの優しさ

このように金銭以外の部分でもホームレスの方へさまざまな自立支援を行っているビッグイシュー日本の「優しさ」は、事業以外の部分でも多く見受けられた。

たとえば、新宿にある東京事務所は夕方になると仕事が終わった販売者たちの集いの場所となり、軽食として無料で食べられる『おにぎり』が置いてある。

これは寄付で送られてくる米や食材を使ってボランティアや事務所の人が握ったもので、販売者や事務所へ相談に来た方たちのお腹を満たすためにあるのだという。

■本当の自立のために

本当の自立を目指すためには、このように、心身の健康、人間関係の再構築、お金の使いかたや貯蓄の方法など、さまざまな面からのサポートが重要なのだそうだ。

確かにお金を手に入れても使い道や貯蓄の方法が分からないと、生活全体の立て直しができず、ホームレス状態から脱出するのは難しいかもしれない。

ホームレスの自立支援のための活動を精力的に行っているビッグイシュー日本と、自立のために頑張ってビッグイシューを売っている販売者のためにも、見かけたらぜひ1冊買ってみて欲しい。

内容もいま話題のセレブへのインタビューや、ちょっと笑える小ネタのコラムまで本当に盛りだくさん。きっと支援する喜びも、面白い雑誌を読む楽しさも味わえることだろう。

権利侵害申告はこちら

Spotlightのライターなら1記事最大3000円もらえる!日本最大級メディアでライターデビューのチャンス